企業の選び方

【2026年版】準大手監査法人の年収|4法人の公表データで初任給と役職別を検証

論文式試験が終わって法人選びを始めると、準大手監査法人のところで手が止まります。検索すれば「600万〜900万円」といった年収の相場は出てきますが、どこから来た数字なのかが書かれていない。大手より低いのか、中小より高いのか、判断がつかないまま時間だけが過ぎます。

そこでこの記事では、準大手監査法人4法人(太陽・三優・東陽・仰星)が自分で公表している資料と、政府の統計だけを使って年収を組み立て直しました。使ったのは各法人の定期採用の募集要項、業務及び財産の状況に関する説明書類、令和7年賃金構造基本統計調査、そして金融庁の公認会計士・監査審査会が出しているモニタリングレポートです。

口コミサイトの推計値は1つも使っていません。そのぶん「公表されていないことは公表されていない」と正直に書きます。読み終わる頃には、準大手を第一志望にするかどうかを自分で判断できる材料がそろいます。

この記事の要点

  • 準大手4法人の初任給は月35万〜36万5千円。大手3法人の首都圏との差は月1万5千円です※1〜※4、※12〜※14
  • 役職ごとの年収レンジは4法人とも公表していません(母数4法人・説明書類を4本とも確認済み)※5〜※8
  • 令和7年賃金構造基本統計調査では、企業規模1,000人以上800.1万円・100〜999人828.3万円・10〜99人808.7万円で、規模による差は最大28万円※9

2027年7月1日に予定されている合併について

三優監査法人と仰星監査法人は、「監査法人BDO Japan」の創設に向けて合併することで基本合意しました。合併予定日は2027年7月1日です。

  • 両法人は対等の精神に基づいて合併します。法令上の手続としては、仰星監査法人を存続法人、三優監査法人を消滅法人とする合併方式が想定されています。
  • 合併後の規模は業務収入 約110億円(2026年6月期見込)・人員822人(非常勤を含む)・被監査上場会社192社と公表されています。いまのどちらの法人よりも大きな規模になります。
  • 2027年に入所する人は、2027年7月1日に所属する法人の名称が変わります。初任給や待遇の条件は、各法人がいま公表している募集要項が基準です。

この記事で準大手4法人(太陽・三優・東陽・仰星)として並べているのは、2027年6月30日までの区分です。

出典:三優監査法人「「監査法人BDO Japan」の創設に向けた検討について」(2026年7月27日公表・2026年8月31日確認)

準大手監査法人の年収は、公表資料でどこまで分かるのか

準大手監査法人4法人のうち、役職別の年収レンジを公表している法人は1つもありません。分かるのは初任給と、統計から読み取れる全体像の2つです。

まずここをはっきりさせておきます。太陽・三優・東陽・仰星の業務及び財産の状況に関する説明書類を4本とも開き、「年収」「給与」「賃金」「初任給」の語で本文を機械的に走査しました。母数4法人・確認済み4法人で、金額の記載はゼロ件です※5※6※7※8。書かれているのは社員の報酬をどう決めるかという手続きの説明だけで、金額もレンジも出てきません。

「準大手の年収は600万〜900万円」と書いている記事は、この4本を開いていないか、開いた上で別の何かから推測しています。

知りたいこと公表資料で分かるかどこに載っているか
初任給の月額分かる4法人とも定期採用の募集要項に金額の記載あり※1〜※4
賞与の回数分かる4法人とも募集要項に回数の記載あり。ただし月数は4法人とも記載なし※1〜※4
役職別の年収レンジ分からない募集要項にも説明書類にも記載なし(母数4法人・確認済み4法人)※5〜※8
法人の規模と業務収入分かる4法人とも説明書類に記載あり※5〜※8
法人の人件費1法人だけ分かる太陽のみ損益計算書を公表。他3法人は無限責任監査法人のため計算書類の添付義務がない※5〜※8
職種としての年収水準統計なら分かる令和7年賃金構造基本統計調査の職種「公認会計士,税理士」※9※10

この記事は、上の表で「分かる」となっている行だけを積み上げて書いています。分からない行を推測で埋めることはしません。

準大手4法人の初任給は月35万〜36万5千円。中身まで並べる

準大手4法人の初任給は月35万円から36万5千円の範囲に収まり、4法人とも固定残業代を含みません※1〜※4。時間外勤務をした分は別に支給されます。

額面だけを並べた表は、固定残業代が入っている法人と入っていない法人を同じ土俵に乗せてしまいます。各法人の公式募集要項から内訳ごと引き写しました。法人名をクリックすると、その法人1本だけを掘り下げた記事に飛べます。

法人(正式名称)初任給(月額)額面の中身賞与採用予定出典
太陽有限責任監査法人36万5千円固定残業代なし。時間外手当は別途支給年3回(6月・8月・12月)60人程度※1
三優監査法人350,000円(2026年実績)固定残業代 無。残業代は別途支給年2回(昇給年1回)常勤職員25名程度※2
東陽監査法人350,000円以上固定残業代なし。時間外勤務手当は別途支給年2回(原則6月・12月)+決算賞与の実績あり20名程度※3
仰星監査法人月額35万円(東京事務所)固定残業代なし年2回(6月・12月)常勤職員10名程度(東京事務所)※4

4法人とも、賞与の回数は書いていても月数は書いていません※1〜※4。だから月給と賞与を足した初年度年収を、公式情報だけで計算することはできません。中小監査法人には賞与の月数まで公表している法人があるので、この点は規模による違いが出ます。

大手4法人と並べると、差は月1万5千円

次に大手監査法人4法人の募集要項を、同じ形式で並べます。

法人(正式名称)初任給(月額)額面の中身賞与出典
有限責任あずさ監査法人365,000円首都圏手当20,000円とワークサポート手当(東京)10,000円を含む。固定残業代なし年2回※12
EY新日本有限責任監査法人首都圏365,000円/地区347,000円時間外手当は別途支給年2回(6月・12月)※13
有限責任監査法人トーマツ東京・横浜365,000円/その他345,000円時間外勤務手当は別途支給年2回(12月・9月)※14
PwC Japan有限責任監査法人420,300円月30時間分の時間外勤務手当を含む。超過分は別途支給。応募要件は米国公認会計士試験の全科目合格者業績賞与 年1回※15

並べて分かることが2つあります。1つ目、準大手の36万5千円は大手3法人の首都圏と同額です※1※12※13※14。太陽の月額は、あずさ・EY新日本・トーマツの首都圏と1円も違いません。2つ目、いちばん低い準大手(月35万円)と大手の首都圏(月36万5千円)の差は月1万5千円で、年に直しても18万円です。

PwC Japanの420,300円だけ数字が飛び抜けて見えます。ただしこれは月30時間分の時間外勤務手当を含んだ額で、しかも応募要件が米国公認会計士試験の全科目合格者です※15。固定残業代を含まない法人の365,000円と単純に比べると、実態を読み違えます。

法人ごとの初任給をもっと広く見比べたい人は、監査法人の初任給ランキングで大手・準大手・中小を横断して整理しています。

入所後の年収はどう上がるのか。役職5段階と統計で見る

監査法人の年収は役職で段が変わり、マネージャー以上は年俸制に切り替わって賞与という形の支給がなくなります。この構造は大手にも準大手にも共通です。

スタッフとシニアスタッフの時期は、月給と賞与の組み合わせです。法人の業績や評価で賞与の月数が動くため、同じ役職でも年によって年収が変わります。マネージャーに上がると年俸制になり、賞与という名目の支給がなくなります。年収の総額が下がるという意味ではなく、受け取り方が「月給+賞与」から「年俸の分割」へ変わるということです。

では、その段を上がると年収がいくらになるのか。準大手4法人は公表していないので、職種としての統計で近似します。令和7年賃金構造基本統計調査の職種「公認会計士,税理士」のうち、企業規模100〜999人の経験年数階級別を使います※10。準大手4法人のうち三優・東陽・仰星の総人員はこの規模に入ります。

経験年数所定内給与額(月額)年間賞与その他特別給与額年収の概算該当する労働者数
0年497,500円635,000円約660.5万円1,060人
1〜4年463,200円1,388,800円約694.7万円2,140人
5〜9年530,600円1,855,200円約822.2万円1,210人
10〜14年703,000円1,486,900円約992.3万円630人
15年以上628,000円2,262,200円約979.8万円610人

読むときの注意を3つ書きます。

  • 年収の概算は所定内給与額×12+年間賞与で計算しているので、残業代は入っていない
  • この統計に「準大手監査法人」という区分は存在しない。あるのは職種「公認会計士,税理士」と企業規模の掛け合わせだけで、税理士も、監査法人以外に勤める会計士も同じ枠に入る
  • 10〜14年が992.3万円、15年以上が979.8万円と逆転しているが、この2区分は労働者数が630人と610人と少なく、数十万円の上下を意味のある差として読めない

それでも使う価値はあります。経験0年の660.5万円から5〜9年の822.2万円まで、10年かからずに160万円ほど上がるという角度は、公表資料からは決して見えないからです。役職・年齢ごとの相場をもっと詳しく追いたい人は、監査法人の年収を年齢・役職別に整理した記事と、パートナーの年収と到達難易度をまとめた記事が参考になります。

企業規模で年収は変わるのか。令和7年の統計では差は最大28万円

令和7年賃金構造基本統計調査で企業規模別に並べると、年収は800.1万円から828.3万円の範囲に収まります。差は最大28万円です※9。規模の大小が年収を決めるという前提は、この数字の前で崩れます。

企業規模平均年齢平均勤続年数きまって支給する現金給与額年間賞与その他特別給与額年収の概算労働者数
企業規模計(10人以上)42.2歳8.5年571,300円1,252,500円約810.8万円26,640人
1,000人以上35.5歳8.3年519,900円1,762,200円約800.1万円6,610人
100〜999人39.1歳5.4年569,200円1,452,900円約828.3万円5,640人
10〜99人46.4歳9.7年595,600円940,100円約808.7万円14,390人

年収の額はほぼ同じなのに、平均年齢は1,000人以上が35.5歳、10〜99人が46.4歳と11歳近く離れています※9。同じくらいの金額を、大企業側では10歳以上若い段階で受け取っている計算になります。年収の高さではなく、そこに届く速さが違う。統計から読み取れるのはここまでです。

もう1つ、賞与の形が規模で違います。1,000人以上は年間賞与が176.2万円で年収の22%を占めるのに対し、10〜99人は94.0万円で12%です※9。規模が大きいほど、年収に占める賞与の割合が高いという構造になっています。景気や法人の業績で振れる部分が大きいということでもあります。

くり返しますが、この統計の企業規模は監査法人の大手・準大手・中小と1対1では対応しません。10〜99人の区分には税理士事務所が多く含まれ、1,000人以上には監査法人以外の大企業に勤める会計士も入ります。「1,000人以上=大手監査法人」と読み替えることはできません。

準大手4法人の規模と業務収入を、説明書類でそろえる

4法人の説明書類は同じ期間(2024年7月1日から2025年6月30日)を対象にしており、業務収入・社員数・被監査会社数を同じ土俵で比べられます※5〜※8。年収そのものは載っていませんが、法人の体力は分かります。

法人業務収入(合計)うち監査証明業務社員(パートナー)公認会計士である使用人被監査会社等うち大会社等出典
太陽有限責任監査法人(第55期)181億2,800万円175億6,000万円100人(会計士95・特定社員5)375人1,113388※5
三優監査法人(第39期)51億9,282万円44億7,827万円44人(会計士38・特定社員6)130人22784※6
東陽監査法人(第55期)46億8,491万円46億2,324万円49人(特定社員制度なし)197人21288※7
仰星監査法人(第36期)52億5,580万円50億4,294万円57人(特定社員制度なし)122人277118※8

会計士1人あたりの業務収入は、太陽が約3,816万円でいちばん大きく、東陽が約1,904万円でいちばん小さくなりました。ただしこの2倍差を、そのまま給与の差として読むことはできません。分母に入れられるのが公認会計士だけだからです。公認会計士試験合格者、アシスタント、管理部門の人数は4法人とも説明書類に載っていません(母数4法人・確認済み4法人)。会計士1人を支えるスタッフが多い法人ほど、この数字は大きく出ます。

年収が公表されない理由は、法人の形にある

準大手4法人のうち、損益計算書を公表しているのは太陽だけです※5〜※8。太陽は有限責任監査法人なので計算書類の添付義務があり、人件費124億6,900万円という数字まで載っています※5。業務収入181億2,800万円に対する人件費の比率は68.8%です。

残る三優・東陽・仰星は無限責任監査法人で、説明書類にはっきり「無限責任監査法人であるため計算書類は添付していません」と書かれています※6※7※8。財務諸表そのものが世に出ていないので、人件費から年収を逆算する道も塞がれています。

「準大手の年収が調べても出てこない」のは、探し方が悪いからではありません。制度上そもそも出ていないのです。

準大手を選ぶかどうか、何で決めるか

初任給が大手とほぼ同じである以上、準大手を選ぶ理由は給与以外に置くことになります。関われる社数、大会社等の比率、任される速さ、勤務地。この4つで自分に当ててみてください。

1つ補助線を引きます。公認会計士・監査審査会の令和8年版モニタリングレポートによると、上場国内会社の会計監査人シェアは大手56.6%・準大手15.9%・中小27.5%(令和8年3月末)です※11。5年前の令和4年3月末は大手63.8%・準大手15.7%・中小20.5%でした。

ここに読み取れることがあります。大手が7.2ポイント落とした分は、ほぼそのまま中小が拾っています(20.5%から27.5%へ7.0ポイント増)。準大手は15.7%から15.9%でほぼ横ばいです※11。同レポートは「大手監査法人から準大手監査法人又は中小規模監査事務所へ変更する傾向は継続」と書いています※11。準大手にも流れてはいるものの、シェアという意味では中小の伸びのほうが大きい。

数の面ではもっと極端です。監査法人296法人のうち大手は1.4%(4法人)にすぎませんが、監査業務収入4,303億円の77.9%、所属公認会計士14,625人の71.4%が大手に集まっています※11。準大手と中小を合わせた98.6%の法人が、残りを分け合っている構図です。

準大手そのものの成り立ちや、大手との違いを就活目線で確かめたい人は監査法人の準大手とは何かをまとめた記事を、中小の年収を知りたい人は中小監査法人の年収を政府統計と公式募集要項で検証した記事を見てください。3分類の違いを横断で確かめるなら監査法人の比較ガイドから入るのが早い道です。

よくある質問

準大手監査法人の年収はいくらですか?

準大手4法人(太陽・三優・東陽・仰星)は役職別の年収レンジを公表していません(母数4法人・説明書類を4本とも確認済み)※5〜※8。公表されているのは初任給で、月35万円から36万5千円の範囲です※1〜※4。職種としての水準なら、令和7年賃金構造基本統計調査の「公認会計士,税理士」で企業規模100〜999人が約828.3万円という数字があります※9。

「中堅監査法人」という呼び方は正式な分類ですか?

公認会計士・監査審査会が使う分類は大手・準大手・中小の3つで、「中堅」という区分は存在しません※11。準大手監査法人にあたるのは太陽有限責任監査法人・三優監査法人・東陽監査法人・仰星監査法人の4法人です。

準大手監査法人の初任給は大手より低いのですか?

太陽の36万5千円は、あずさ365,000円、EY新日本の首都圏365,000円、トーマツの東京・横浜365,000円と同額です※1※12※13※14。三優・東陽・仰星は月35万円台なので、いちばん差が開く組み合わせでも月1万5千円です。役職が上がったあとの差は、4法人とも公表していないため公開情報から比べられません。

準大手監査法人の賞与は何か月分ですか?

4法人とも賞与の回数は公表していますが、月数は公表していません※1〜※4。太陽が年3回(6月・8月・12月)、三優が年2回、東陽が年2回(原則6月・12月)と決算賞与の実績、仰星が年2回(6月・12月)です。中小監査法人には月数まで公表している法人があり、この点で規模による違いが出ます。

準大手監査法人と中小監査法人では、どちらが年収が高いですか?

公開情報だけでは比べられません。令和7年賃金構造基本統計調査で企業規模別に見ると、100〜999人が約828.3万円、10〜99人が約808.7万円で差は約20万円ですが※9、この企業規模の区分は監査法人の準大手・中小と1対1で対応しません。初任給で比べると、準大手は月35万〜36万5千円、中小は法人によって月35万円から44万円まで幅があります。

準大手監査法人の人件費や利益は調べられますか?

4法人中1法人だけ調べられます。太陽は有限責任監査法人のため損益計算書を公表しており、人件費124億6,900万円が載っています※5。三優・東陽・仰星は無限責任監査法人で、説明書類に計算書類を添付していません※6※7※8。

まとめ

準大手監査法人の年収について、公表資料から確かめられたのは初任給までです。月35万円から36万5千円、4法人とも固定残業代を含みません※1〜※4。大手3法人の首都圏との差は月1万5千円で、年に直して18万円です。

要点を3行で。給与では準大手と大手を選び分けられません。役職別の年収レンジは4法人とも公表しておらず、断定している記事は公表されていない領域を推測で埋めています。だから決め手は、関われる社数・大会社等の比率・任される速さ・勤務地という自分の優先順位に戻ってきます。

準大手を第一志望にするにしても、しないにしても、比べる相手を持ってから決めてください。準大手4法人を1法人ずつ、大手を1法人、中小を1法人。それだけで、面接で話す内容まで変わります。

参考文献・出典