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【2026年版】中小監査法人の年収はいくら?大手との差を最新統計で検証

「中小監査法人は年収が低いのではないか」。就職先を絞り込む段階で、いちばん引っかかるのがここだと思います。ところが調べ始めると、記事によって数字がまるで違う。693万円と書いてあるページもあれば、大手と変わらないと書いてあるページもあります。

数字がばらつく理由ははっきりしています。「中小監査法人」という区分の統計が、そもそも存在しないからです。政府統計にあるのは職種「公認会計士,税理士」と企業規模の掛け合わせだけで、そこには税理士事務所も混ざっています。

この記事では、2026年3月に公表された令和7年賃金構造基本統計調査と、中小監査法人9法人の公式募集要項の両方を突き合わせました。統計だけでは見えないところ、公式募集要項だけでは見えないところを、お互いで埋めます。推測で埋めた数字は1つも使っていません。

この記事の要点

  • 令和7年賃金構造基本統計調査の企業規模10〜99人「公認会計士,税理士」は約808.7万円。ただし平均年齢46.4歳で、税理士事務所も含む区分です※1
  • 公式募集要項で確認した中小9法人の初任給は月35万円から44万円。統計の経験0年(月26万4,600円)とは合いません※5〜※13
  • 初年度の年収を公式情報だけで計算できるのは中小9法人のうち5法人(約500万〜598万円)。大手4法人は賞与の月数を公表していないため計算できません※5〜※17

中小監査法人の年収は、令和7年の統計で約809万円

令和7年賃金構造基本統計調査で企業規模10〜99人の「公認会計士,税理士」を見ると、年収の概算は約808.7万円です※1。ただしこの数字をそのまま就職後の自分に当てるのは危険です。理由は3つあります。

企業規模平均年齢きまって支給する現金給与額年間賞与その他特別給与額年収の概算労働者数
10〜99人46.4歳595,600円940,100円約808.7万円14,390人
100〜999人39.1歳569,200円1,452,900円約828.3万円5,640人
1,000人以上35.5歳519,900円1,762,200円約800.1万円6,610人
企業規模計(10人以上)42.2歳571,300円1,252,500円約810.8万円26,640人

危険な理由の1つ目。この統計に「中小監査法人」という区分はありません。あるのは職種「公認会計士,税理士」と企業規模の掛け合わせだけです。従業員10〜99人の事業所には、監査法人だけでなく税理士事務所も大量に含まれます。統計の「10〜99人」を「中小監査法人」と読み替えることはできません。

2つ目。平均年齢が46.4歳です※1。これから就職する人の年収ではなく、所長クラスまで含めた全体の平均です。実際、この区分の労働者14,390人のうち経験15年以上が6,690人と、46.5%を占めています※2。

3つ目。企業規模を変えても年収がほとんど動きません。1,000人以上が約800.1万円、100〜999人が約828.3万円、10〜99人が約808.7万円で、いちばん高い区分といちばん低い区分の差は約28万円です※1。「大手は高く中小は低い」という前提は、令和7年の数字の前ではほぼ成り立ちません。

参考までに、国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査によると、給与所得者全体の平均給与は478万円、正社員(正職員)は545万円です※3。職種としての公認会計士・税理士は、どの企業規模で見ても日本全体の平均より300万円以上高い水準にあります。

経験年数別に見ると、規模の差は年次とともに開く

経験0年では企業規模1,000人以上のほうが約104万円高く、経験15年以上では約200万円高くなります※2。年収の総額では差がないのに、経験年数で切ると差が現れます。

経験年数10〜99人の年収概算1,000人以上の年収概算10〜99人の労働者数
0年約328.5万円約432.8万円約104万円380人
1〜4年約547.1万円約530.1万円10〜99人が約17万円上2,990人
5〜9年約580.9万円約748.3万円約167万円2,510人
10〜14年約687.9万円約930.1万円約242万円1,820人
15年以上約991.7万円約1,192.0万円約200万円6,690人

年収の概算は所定内給与額×12+年間賞与で計算しているので、残業代は入っていません。中小監査法人の多くは固定残業代を採用していないため、実際の手取りはここに時間外手当が乗ります。

目を引くのは経験1〜4年だけ10〜99人のほうが約17万円高いところです※2。この年次は労働者数も2,990人と厚い区分なので、少数の異常値ではありません。ただし賞与の内訳を見ると、10〜99人が32.3万円に対して1,000人以上は102.4万円で、大企業側は月給を抑えて賞与で返す形になっています※2。受け取る合計が近くても、振れ方が違います。

ここから先が本題です。経験0年の328.5万円という数字は、中小監査法人の初任給とまったく合いません。次の章で公式募集要項と突き合わせます。

中小監査法人9法人の初任給を、公式募集要項で取り直す

中小監査法人9法人の公式募集要項を1本ずつ開いたところ、初任給は月35万円から44万円の範囲でした※5〜※13。統計の経験0年(所定内給与額 月26万4,600円)とは10万円以上ずれます。

法人初任給(月額)額面の中身賞与初年度年収の概算出典
史彩監査法人440,000円以上固定残業代なし。時間外勤務手当は別途支給決算賞与(2023年度より毎年支給実績あり)月数の公表がなく計算不可※5
RSM清和監査法人416,667円〜月40時間分のみなし時間外手当101,351円を含む(基本給315,316円)業績賞与あり月数の公表がなく計算不可※6
監査法人A&Aパートナーズ366,000円以上(全科目合格)時間外労働手当は別途支給年2回(夏季・冬季)+決算賞与月数の公表がなく計算不可※8
監査法人Growth360,000円以上固定残業代なし。残業手当は別途支給年2回(5月・11月、標準4か月)+決算賞与約576万円+決算賞与※7
ESネクスト有限責任監査法人360,000円固定残業代なし年2回(6月・12月、年間4ヶ月以上)+決算賞与約576万円以上+決算賞与※12
新創監査法人36万円以上(合格者1年目)時間外手当は全額支給年2回(各回0〜3ヶ月・標準2ヶ月)。2025年度実績4.6か月約598万円(実績ベース)※9
アーク有限責任監査法人350,000円(前年実績)首都圏手当10,000円を含む年2回(6月・12月、年間4ヶ月・前年実績)約560万円※10
監査法人コスモス年俸制500万円以上残業代は全額支給。年俸の16分の1を月々支給し、残りを賞与時に支給年2回(7月・12月、昨年度実績4ヶ月分)500万円以上(年俸で公表)※11
監査法人アヴァンティア金額の記載なし固定残業代なし。時間外手当は別途支給(前期実績:月平均13.7時間)定期賞与 年2回(前年度実績:各2か月分以上)+決算賞与月額の公表がなく計算不可※13

この表でいちばん大事なのは「初年度年収の概算」の列です。月給と賞与の月数が両方そろっている法人でしか計算できません。母数9法人のうち計算できたのは5法人(Growth・ESネクスト・新創・アーク・コスモス)で、約500万円から598万円でした※7※9※10※11※12。残る4法人は月数か月額のどちらかが公表されておらず、計算しませんでした。

額面の順番をそのまま実力の順番として読まないでください。RSM清和の416,667円は月40時間分のみなし時間外手当101,351円を含む額で、基本給は315,316円です※6。固定残業代を含まない史彩の440,000円とは、同じ「額面」でも中身がまるで違います。

統計の初任給と公式募集要項が合わない理由

統計の経験0年は所定内給与額が月26万4,600円※2、公式募集要項の初任給は月35万円から44万円※5〜※12。10万円近い開きがあります。

理由は区分の中身にあります。企業規模10〜99人という枠には監査法人だけでなく税理士事務所も入るため、経験0年の380人には監査法人に入所した公認会計士試験合格者以外も多く含まれます※2。就活生が見るべきなのは統計ではなく、志望する法人の募集要項です。

大手・準大手も含めた月額の並びを確かめたい人は、監査法人の初任給ランキングで横断的に整理しています。入所1年目の手取りや税金まで追いたい場合は公認会計士1年目の年収の実態をまとめた記事が参考になります。

大手監査法人との差はどこにあるのか

初任給の月額で見ると、大手4法人は36万5千円から42万300円で、中小の上位数法人と重なります※14〜※17。大手が一方的に高いという構図にはなっていません。

法人(正式名称)初任給(月額)額面の中身賞与初年度年収の概算出典
有限責任あずさ監査法人365,000円首都圏手当20,000円とワークサポート手当(東京)10,000円を含む。固定残業代なし年2回(月数の公表なし)計算不可※14
EY新日本有限責任監査法人首都圏365,000円/地区347,000円時間外手当は別途支給年2回(6月・12月。月数の公表なし)計算不可※15
有限責任監査法人トーマツ東京・横浜365,000円/その他345,000円時間外勤務手当は別途支給年2回(12月・9月。月数の公表なし)計算不可※16
PwC Japan有限責任監査法人420,300円月30時間分の時間外勤務手当を含む。応募要件は米国公認会計士試験の全科目合格者業績賞与 年1回(月数の公表なし)計算不可※17

ここに規模による非対称があります。大手4法人は賞与の回数しか公表しておらず、月数を公表している法人は4法人中0法人です※14〜※17。だから公式情報だけでは初年度の年収を計算できません。中小には月数まで書く法人が5つあり、その意味では中小のほうが年収の見通しを立てやすいのです。

差が出るのはその先です。統計の経験年数別で見ると、5〜9年で約167万円、10〜14年で約242万円の開きがありました※2。入口の差ではなく、年次を重ねたときの伸びの差だと読めます。ただし前述のとおり、この統計の企業規模区分は監査法人の大手・中小と1対1では対応しません。

大手監査法人は4法人。PwCあらたという名称の法人は現存しません

大手監査法人はEY新日本有限責任監査法人・有限責任あずさ監査法人・有限責任監査法人トーマツ・PwC Japan有限責任監査法人の4法人です。

ここで1つ注意があります。「PwCあらた有限責任監査法人」という名称の法人は、現在ありません。PwCの公式サイトに載る業務及び財産の状況に関する説明書類の一覧を見ると、第18期までがPwCあらた有限責任監査法人、2023年12月1日付の書類および第19期以降がPwC Japan有限責任監査法人として掲載されています※18。古い記事や資料で旧名称を見かけたら、現在の法人はPwC Japan有限責任監査法人だと読み替えてください。

準大手監査法人(太陽・三優・東陽・仰星)の年収については、準大手監査法人の年収を4法人の公表データで検証した記事で、募集要項と業務及び財産の状況に関する説明書類を突き合わせて整理しています。3分類の違いそのものを確かめたい人は監査法人の比較ガイドから入るのが早い道です。

2027年7月1日に予定されている合併について

三優監査法人と仰星監査法人は、「監査法人BDO Japan」の創設に向けて合併することで基本合意しました。合併予定日は2027年7月1日です。

  • 両法人は対等の精神に基づいて合併します。法令上の手続としては、仰星監査法人を存続法人、三優監査法人を消滅法人とする合併方式が想定されています。
  • 合併後の規模は業務収入 約110億円(2026年6月期見込)・人員822人(非常勤を含む)・被監査上場会社192社と公表されています。いまのどちらの法人よりも大きな規模になります。
  • 2027年に入所する人は、2027年7月1日に所属する法人の名称が変わります。初任給や待遇の条件は、各法人がいま公表している募集要項が基準です。

この記事で準大手4法人(太陽・三優・東陽・仰星)として並べているのは、2027年6月30日までの区分です。

出典:三優監査法人「「監査法人BDO Japan」の創設に向けた検討について」(2026年7月27日公表・2026年8月31日確認)

中小監査法人に、上場企業の監査が流れている

上場国内会社の会計監査人シェアは、中小規模監査事務所が令和4年3月末の20.5%から令和8年3月末の27.5%へ7.0ポイント伸びました※4。同じ期間に大手は63.8%から56.6%へ7.2ポイント落としています。

公認会計士・監査審査会の令和8年版モニタリングレポートは、令和8年6月期について「大手監査法人から準大手監査法人又は中小規模監査事務所へ変更する傾向は継続」と書いています※4。落ちた分がどこへ行ったかは、上のグラフを見ればはっきりします。準大手は15.7%から15.9%でほぼ横ばいなので、大手が手放した上場企業の監査は、ほぼそのまま中小へ移っている形です。

規模の非対称も押さえておいてください。監査法人296法人のうち大手はわずか1.4%(4法人)ですが、監査業務収入4,303億円の77.9%、所属公認会計士14,625人の71.4%が大手に集まっています※4。残る98.6%の法人が、収入の22.1%と会計士の28.6%を分け合っている計算です。

この構図が、中小監査法人の給与水準を押し上げる方向に働きます。仕事が増える一方で人手は限られる。だから初任給で月44万円を提示する法人が出てきます※5。中小の一覧を法人ごとに見たい人は中小監査法人一覧の記事、働き方まで含めて確かめたい人は残業・有給・離職率で比較した記事を見てください。

中小監査法人で年収を上げるまでの道のり

監査法人の年収は役職で段が変わり、マネージャー以上は年俸制に切り替わって賞与という形の支給がなくなります。大手でも中小でもこの構造は共通です。

スタッフとシニアスタッフの時期は月給と賞与の組み合わせなので、賞与の月数が年収を左右します。中小監査法人には月数を公表している法人があるため、入所前に見通しを立てやすいのはこの層です。マネージャーに上がると年俸制になり、賞与の月数で振れる部分がなくなります。

募集要項に何が書かれているかで、法人の姿勢が見える

中小監査法人9法人の公式募集要項を、同じ語で機械的に走査しました。母数9法人・確認済み9法人の結果です※5〜※13。

募集要項に記載があるか該当法人数該当する法人
資格手当0法人 / 9法人なし
家賃補助0法人 / 9法人なし
住宅手当1法人 / 9法人新創(就業規則に基づく条件あり)
実務補習所の費用6法人 / 9法人史彩・Growth・A&Aパートナーズ・アーク・ESネクスト・アヴァンティア
決算賞与5法人 / 9法人史彩・Growth・A&Aパートナーズ・ESネクスト・アヴァンティア
入所時の支度金4法人 / 9法人史彩・RSM清和・A&Aパートナーズ・アヴァンティア
退職金制度3法人 / 9法人A&Aパートナーズ・新創・アヴァンティア

記載がないことと、制度がないことは違います。この表が示すのは「募集要項に書いてあるかどうか」だけです。書いていない法人にも制度がある場合はあるので、説明会や面接で確かめてください。

それでも実利は無視できません。実務補習所の費用と公認会計士協会の登録費・年会費は、放っておくと合格後に数十万円の自己負担になります。これを法人が持つかどうかは、初任給の1万円や2万円の差より1年目の手取りに効きます。9法人中6法人が募集要項に書いているのは、それだけ効く項目だという裏返しでもあります。

中小を選ぶ理由を給与以外の面から確かめたい人は、中小監査法人のメリットをまとめた記事で、大手との違いと選ぶ際のポイントを扱っています。

よくある質問

中小監査法人の年収はいくらですか?

令和7年賃金構造基本統計調査の企業規模10〜99人「公認会計士,税理士」で見ると、年収の概算は約808.7万円です※1。ただしこの区分には税理士事務所も含まれ、平均年齢は46.4歳です。就職直後の年収に近いのは公式募集要項のほうで、月数まで公表している中小5法人の初年度年収は約500万円から598万円でした※7※9※10※11※12。

中小監査法人の初任給はいくらですか?

公式募集要項で確認できた中小9法人では、月35万円から44万円の範囲でした※5〜※13。いちばん高いのが史彩監査法人の440,000円以上(固定残業代なし)、いちばん低いのがアーク有限責任監査法人の350,000円(首都圏手当10,000円を含む・前年実績)です。監査法人コスモスは年俸制500万円以上という形で公表しています※11。

中小監査法人の入所1年目で賞与はもらえますか?

賞与の制度そのものは9法人すべてが募集要項に書いています※5〜※13。月数まで公表しているのは4法人で、Growthが標準4か月、ESネクストが年間4ヶ月以上、アークが年間4ヶ月(前年実績)、新創が標準2ヶ月・2025年度実績4.6か月です。1年目に満額が出るかどうかは在籍期間の扱いによるため、募集要項だけでは分かりません。

中小監査法人と大手監査法人の年収差はどれくらいですか?

初任給の月額ではほとんど差がありません。大手4法人は36万5千円から42万300円※14〜※17、中小9法人は35万円から44万円です※5〜※13。差が出るのは年次を重ねてからで、統計の経験年数別では5〜9年で約167万円、10〜14年で約242万円の開きがありました※2。ただしこの統計の企業規模区分は、監査法人の大手・中小と1対1では対応しません。

中小監査法人に資格手当や家賃補助はありますか?

9法人の公式募集要項を機械的に走査したところ、資格手当は0法人、家賃補助も0法人でした(母数9法人・確認済み9法人)※5〜※13。住宅手当を書いているのは新創監査法人の1法人だけで、就業規則に基づく条件がつきます※9。代わりに実務補習所の費用を書いている法人が6つあります。記載がないことは制度がないことと同じではないので、確認は説明会で行ってください。

まとめ

中小監査法人の年収について、統計と公式募集要項の両方から確かめました。統計(企業規模10〜99人)は約808.7万円ですが、平均年齢46.4歳で税理士事務所も含む区分です※1。就職直後の実態に近いのは公式募集要項のほうで、初任給は月35万円から44万円※5〜※13、月数まで公表している5法人の初年度年収は約500万円から598万円でした。

要点を3行で。初任給では大手と中小の差はほとんどありません。差が出るのは年次を重ねてからで、統計の経験年数別では5〜9年から開き始めます。そして初年度の年収を公式情報だけで計算できるのは中小の一部だけで、大手4法人は賞与の月数を公表していません。

年収だけで決められる材料はそろいません。関われる会社の数、任される速さ、実務補習所の費用を法人が持つかどうか。募集要項に書いてある項目から順に、自分の優先順位に当ててみてください。中小を1法人、準大手を1法人、大手を1法人。3つ並べると、比べるための軸が自分の中にできます。

参考文献・出典