公認会計士試験論文式試験合格後の就職先選びで、中小監査法人が気になっている方も多いのではないでしょうか。
しかし、大手監査法人に関わる情報ばかりで、詳しい情報を掴めずお困りの方も多いと思います。
今回は中小監査法人に注目し、魅力やメリットだけでなく、デメリットや大手監査法人との違いについても詳しく解説していきます。
記事の内容は以下となります。
- 中小監査法人とは
- 中小監査法人の魅力やメリット
- 中小監査法人のデメリット
- 大手監査法人との違い
- 中小監査法人と相性が良い人とは
- 中小監査法人の選び方
- おすすめの監査法人
中小監査法人の魅力も理解しておくと、就職先選びの視野が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
【一覧表】中小監査法人とは?
中小監査法人一覧 |
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アーク有限責任監査法人 |
ひびき監査法人 |
監査法人A&Aパートナーズ |
RSM清和監査法人 |
監査法人アヴァンティア |
八重洲監査法人 |
UHY東京監査法人 |
監査法人アリア |
双研日栄監査法人 |
監査法人日本橋事務所 |
アスカ監査法人 |
監査法人東海会計社 |
清陽監査法人 |
海南監査法人 |
協立神明監査法人 |
中小監査法人とは、大手監査法人・準大手監査法人以外の監査法人です。
多くの中小監査法人は、大手監査法人や準大手監査法人で経験を積んだ後、公認会計士が独立し立ち上げています。
規模はさまざまで、数百人の公認会計士が所属している監査法人もあれば、数人の公認会計士で業務を行っている監査法人もあります。
監査業務を主としているのは大手監査法人等と変わりませんが、被監査会社の規模が異なり、中小企業の被監査会社を中心に抱えています。
監査法人自体の規模が小さいからといって、監査の質が低いということは決してないです。
組織が小さいからこそ、上司との距離が近いなど中小監査法人特有のメリットがあります。
描いているキャリアプランによっては、公認会計士試験論文式試験合格後の就職先としてマッチする方もいると思いますので、次項から魅力を解説していきます。
中小監査法人をおすすめする2つの理由
中小監査法人をおすすめする理由は、2つあります。
- 昇進を狙える・チャンスが多い
- ワークライフバランスが取りやすい
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
昇進を狙える・チャンスが多い
中小監査法人は、以下の職階に分かれている場合があります。
- スタッフ
- シニアスタッフ
- マネージャー
- シニアマネージャー
- パートナー
中小監査法人では、実力次第で早期の昇進が狙える点がメリットです。
大手監査法人では、所属している公認会計士の数も多いことからポジションに空きがないなど、実力だけでは昇進が狙いづらい状況も出ています。
一例ではありますが、中小監査法人では30代でパートナーまで昇進している事例も見かけますので、大手監査法人よりも昇進が狙いやすいでしょう。
関連記事はこちら▼
中小監査法人の年収はいくら?役職・年齢による年収の変化や大手監査法人との比較も解説
ワークライフバランスが取りやすい
中小監査法人は、組織全体でワークライフバランスを重要視している法人も多く、激務といわれるなかでも仕事とプライベートのバランスを取りやすい傾向があります。
- 繁忙期以外の残業をしない風土
準大手監査法人の福利厚生についてはこちら▼
家賃補助や通勤手当はある?準大手監査法人の福利厚生を徹底比較
中小監査法人のデメリットも確認
中小監査法人にも当然、デメリットは存在するため、入所先を決める前にここで理解をしておきましょう。
- 人間関係やコミュニケーションに悩みが生じる可能性がある
- 海外勤務のチャンスは少ない
監査法人の規模が小さいことは、チーム内で連携やコミュニケーションが取りやすく、先輩との関係性を構築しやすいメリットがあります。
しかし、距離感が近いからこそ、「相性が悪い」「トラブルになった」など関係性が悪化してしまうと修復がしづらく、精神的な負担を抱えるケースも少なくありません。
また、グローバルネットワークファームと提携していない中小監査法人も多く、海外で活躍する環境が法人内にない・少ないケースもあり、グローバルに活躍する公認会計士を目指す方にはマッチしません。
大手監査法人と何が違う?項目別に比較
公認会計士試験論文式試験合格後は、多くの方が「大手監査法人に進むべきか」で悩んでいるのではないでしょうか。
ここでは、項目別で大手監査法人と中小監査法人でどう違いがあるのか、具体的に比較していきます。
監査業務
監査業務自体は、中小監査法人だから違うといったことはなく、本質的な違いは一切ありません。
被監査会社
監査法人が請け負う被監査会社には、大きな違いがあります。
監査法人 | 被監査会社 |
---|---|
中小監査法人 | 中小企業 |
大手監査法人 | 大手企業 |
中小監査法人が請け負う被監査会社は、中小企業が中心になります。
一方大手監査法人では、大手企業の被監査会社が中心です。
「公認会計士をやるからには、知名度が高い企業を担当したい」といった想いを抱えている方であれば、必然的に大手監査法人を選ぶ必要があります。
監査法人へ入所後、どのような企業を担当したいのかによって、監査法人の選び方も変わってくる点は覚えておきましょう。
監査チーム
監査チーム体制も中小監査法人と大手監査法人では大きく異なります。
監査法人 | 監査チーム |
---|---|
中小監査法人 | 4人〜6人の少人数チーム |
大手監査法人 | 数十人以上の大人数チーム |
大手監査法人は規模の大きい企業の監査を行うため、1つの企業に対して何十人という人数が必要になります。
必然的に監査チームの人数が多く、業務も分担していく形です。
また、チーム内の人数が多いこともあり、入所してからの数年は簡単な突合作業が続くケースも多いでしょう。
そのため、大手監査法人へ入所してからのイメージが事前にできていないと、想像していた公認会計士の姿とのギャップに苦しむ可能性があります。
一方中小監査法人では、規模が小さい企業の監査が多いため、4人〜6人前後のチーム体制で監査に臨むことが多く、チーム内で業務を分担するものの1人が担当する業務範囲は広くなります。
したがって、早い段階から多くの科目を経験できる可能性があるでしょう。
経験
大手監査法人が請け負っている大手企業の監査は、1つの科目だけでも膨大な量の業務が発生します。
したがって「1年間同じ企業を担当した」など、短い期間で担当できる企業は少ないケースが多いでしょう。
そうなれば、担当した業界や1つの事象に対する対応には詳しくなるものの、さまざまな業界・業種に関する経験値など多様なスキルを磨くにはある程度の時間が必要になります。
また、IPO準備監査チーム等に配属されない限り、上場企業の監査業務以外の経験を積む機会は少ないといえます。
一方中小監査法人では、「年間で10社近い企業を経験した」「複数の企業を同時に担当した」といったケースはよくあるパターンであり、被監査会社の規模が小さいこともあり、短期間でさまざまな経験を積めるという特徴があります。
また、IPO準備監査等業務を1年目から経験できるという特徴を持った監査法人もあり、短期間に幅広い経験が積めるのも特徴的です。
業務量
業務量に関しては、大手監査法人も中小監査法人も担当する被監査会社の規模、担当する被監査会社数によって左右される面があるため、単純にどちらが多いかを比較するのは難しくなります。
しかし、大手監査法人のほうが被監査会社の規模が大きいこともあり、1つの企業から生じる業務量は多いといえるかもしれません。
昇進や年収
昇進に関しては記事前半で解説した通り、中小監査法人のほうが昇進するチャンスは多く、スピードも早い傾向にあります。
大手監査法人へ進んだ人からは「入所したのはいいものの、ポジションに空きがなく、一向に昇進できない」という声も聞こえてくる状況であり、実力を評価してもらう・出世を狙っていきたいのであれば、監査法人の規模はよく考えるべきでしょう。
年収については、「令和4年賃金構造基本統計調査」をもとに平均年収で比較すると、大手監査法人のほうが214万円高いといったデータがあります。(こちらの計算方法や具体的的な数値については、下部リンク「中小監査法人の年収はいくら?役職・年齢による年収の変化や大手監査法人との比較も解説」の記事にて解説しています)
したがって、全体平均だけで年収を比較すると大手監査法人に軍配が上がります。
ただしこれは平均値でしかなく、実態としては大手監査法人と変わらない年収で働く中小監査法人の公認会計士も存在します。
入所年数を同じ条件で比較した場合、結局はシニアスタッフやマネージャーへどれだけ早く昇進できるかによって差が出てくるため、監査法人選びで年収を気にする方であれば、昇進スピードに注目するほうが良いかもしれません。
大手監査法人の年収についてはこちら▼
監査法人の年収はいくら?大手監査法人の年齢・役職別の年収相場を解説
中小監査法人の年収についてはこちら▼
中小監査法人の年収はいくら?役職・年齢による年収の変化や大手監査法人との比較も解説
中小監査法人にマッチする人
これまで解説してきた中小監査法人の特徴やメリットについてまとめると、以下に該当する人が中小監査法人にマッチします。
- 将来的に独立を考えている人
- 効率良くメリハリをつけて働きたい人
- キャリア重視で働いていきたい人
- 最終的なキャリアをパートナーに置いている人
どんな公認会計士になりたいのか、どのような働き方をしていきたいのか、最終的な着地をどこに置くのかなど、描いたキャリアプランにマッチする監査法人選びができるかどうかで、その先の方向性は大きく変わってきます。
上記に該当すると感じた方は、中小監査法人を視野に入れることをおすすめします。
中小監査法人の中でおすすめはどこ?見極めるポイントは?
ここまで中小監査法人全体をおすすめしてきましたが、最後に中小監査法人の選び方や見極めポイントを解説しておきます。
数多くある中小監査法人の中から選ぶことになるため、必ずチェックしておきましょう。
離職率チェックは欠かせない
各監査法人の採用ページや募集要項等には、特色や独自制度について魅力的に見える書き方で記載されています。
しかし、実態としてどこまで活用されているのか、仕組み化されているのかまでは見えてこないため、入所後に「イメージしていたものと違った」というケースが起こりがちです。
そこで、離職率をチェックしておくのが重要なポイントになります。
離職率は、客観的なデータとして監査法人を評価する指標といえますので、チェックしておけば内部の実態が少しでも見えてくるはずです。
過去に行政処分を受けていないか確認する
数ある中小監査法人の中には、過去に行政処分を受けている監査法人も存在します。
行政処分を受けている監査法人が必ずしもそうであるとは限りませんが、監査の質が低い・評判が悪いといった監査法人に当たってしまうケースもあります。
ホワイトな環境の監査法人で働きたい方は、過去の履歴についてもチェックしておくべきでしょう。
中小監査法人以外におすすめの監査法人はどこ?
中小監査法人に興味を持っているのであれば、準大手監査法人も視野に入れておくべきでしょう。
大手監査法人と中小監査法人の間に区分されるため、まさに両者の良い部分を合わせ持った監査法人といえます。
- 請け負っている被監査会社は中小企業が中心ではあるものの、規模が大きい企業も請け負っている
- IPO準備監査の業務にも関わりやすい
- 大手監査法人よりも昇進しやすい環境
- ワークライフバランスにも積極的に取り組んでいる
上記のような魅力を持っているのが準大手監査法人であり、中小監査法人と比べれば規模が大きい監査法人です。
ぜひ、下記の記事もチェックをしていただき、準大手監査法人の魅力についても確認しておきましょう。
準大手監査法人の魅力について詳しくはこちら▼
準大手監査法人の採用市場は?魅力や年収、キャリアについても徹底解説
法人文化や福利厚生など魅力が多いのは「三優監査法人」
準大手監査法人の中でも特におすすめなのが、三優監査法人です。
三優監査法人は、「君じゃなきゃ、といわれる会計士へ。」というメッセージを大切にしているだけあり、入所した全員が輝けるような法人文化と制度です。
そのための取り組みとして、福利厚生など充実した環境を用意しています。
- 入所後のバックアップとして、実務補習所への交通費負担や通学しやすい環境の醸成
- 修了考査に関する費用負担や試験休暇制度
- 女性でも働きやすいように出産・育児に関する充実した支援制度
- ワークライフバランスを尊重する風土
- リモートワークを柔軟に取り入れる姿勢と制度
さらに三優監査法人は、入所1年目からIPO準備監査に関われるなど多様なスキルを早い時期から磨ける環境を用意するなど、他にはない独自性も持っているなど、魅力あふれる監査法人です。
▽三優監査法人の採用ページはこちら▽
三優監査法人採用ページ
キャリアプランに合った監査法人を選ぶのが大切
最後に今回の記事内容を整理しておきます。
- 中小監査法人は、大手監査法人・準大手監査法人以外の監査法人
- 中小監査法人は規模が小さいからこその魅力やメリットがある
- 海外勤務のチャンスが少ない、人間関係の不安といったデメリットもある
- 大手監査法人とは、請け負っている被監査会社の規模やチーム体制など異なる点がある
- 中小監査法人は、キャリア志向の人やワークライフバランス重視の人におすすめ
- 準大手監査法人の魅力もチェックし、視野に入れるべき
- 最終的にはキャリアプランに合わせた監査法人選びが大切
中小監査法人は規模が小さいとはいえ、大手監査法人にはない独自の魅力を持っている監査法人です。
監査法人の規模感だけにとらわれず、広い視野を持って就職先を選ぶようにしてください。
また、将来的にどんなキャリアプランを描きたいのか、公認会計士としてどう働いていきたいかによって、選ぶべき監査法人は変わってきます。
まずは理想とする公認会計士像をイメージ・具体化させておき、あなたのキャリアプランにマッチする監査法人を探してみてください。