企業の選び方

監査法人で働く女性のキャリア|産休・育休・時短と両立の実態【2026年版】

試験に合格したあと、こんな不安がよぎった女性は多いはずです。「監査法人でキャリアを積んで、いつか結婚や出産をしたら、仕事はどうなるのだろう」。周りに働く女性会計士のロールモデルが少なく、想像がつかないまま法人選びの時期を迎えていないでしょうか。

結論から言えば、監査法人は産休・育休・時短勤務を使いながらキャリアを続けやすい職場です。理由は単純で、公認会計士という専門資格が仕事に直結するため、ブランクがあっても職務に戻りやすいからです。年収そのものの比較は監査法人で働く女性の年収の記事で扱っています。この記事では、お金ではなく「続けられるか」に焦点をあてます。

制度の中身、規模別の両立環境の違い、繁忙期と育児のリアル、復帰後の昇進、そして両立しやすい法人を見抜く5つの質問まで。読み終える頃には、自分のライフプランに合う法人の条件がはっきりします。

この記事の要点

  • 監査法人は産休・育休・時短が法律で保障され、専門資格ゆえにブランク後も戻りやすい
  • 両立環境は規模で差が出る。大手は制度とロールモデル、中小は時短の柔軟さと繁忙期の軽さが強み
  • 法人選びは「実際に時短で働く女性がいるか」を5つの質問で確かめるのが最短ルート

監査法人は女性がキャリアを続けやすい職場か

監査法人は、専門資格が仕事に直結するため、出産や育児でブランクが空いても職務に戻りやすい職場です。一般企業のように「休んだら居場所がなくなる」構造になりにくいのが特徴です。

監査の仕事は、会計基準や監査手続きという共通の土台の上で回ります。担当が変わっても引き継ぎができ、資格を持つ人材はどのチームでも必要とされます。だからこそ、時短勤務の職員をアサイン(担当割り当て)に組み込みやすい。ここが両立のしやすさを支えています。

合格したての20代前半にとって、結婚や出産を考える時期は、ちょうどスタッフからシニアスタッフへ上がる時期と重なります。ここでキャリアを諦める必要はありません。監査法人では、資格そのものが「戻る場所」を保証してくれます。数年のブランクを経ても、会計基準の改正だけキャッチアップすれば現場に復帰できます。

女性会計士はまだ少数。だからこそ環境は整いつつある

公認会計士(会員・準会員)に占める女性の割合は1割台にとどまり、まだ2割に届きません※1。日本公認会計士協会は、この比率を2048年度までに30%へ引き上げ、2030年度までに試験合格者の女性比率も30%にする目標を掲げています※2。数としては少数派ですが、裏を返せば各法人が女性の定着に本気で取り組んでいる段階です。

実際、子育て支援に積極的な法人は「くるみん」、女性活躍に積極的な法人は「えるぼし」という国の認定を取得しています※6。大手監査法人の多くがこれらの認定を受けており、制度が形だけで終わらないよう運用面の改善も続いています。

くるみんには基準を満たすと上位の「プラチナくるみん」があり、えるぼしにも三段階の評価があります。採用ページでこれらのマークを掲げている法人は、女性の定着を数値目標として管理している可能性が高い。ロゴの有無は、両立への本気度をはかる分かりやすい目印です。

一般に「監査法人は激務で女性は続かない」というイメージが先行しがちです。ただ、これは繁忙期の一面だけを切り取った見方です。閑散期の落ち着きや在宅監査の広がりを含めて年間で眺めると、想像より続けやすい環境が整っています。

働き方そのものの実態は監査法人の働き方の実態をまとめた記事でも詳しく触れています。あわせて読むと、日々の仕事のイメージがつかめます。

産休・育休・時短の制度と2026年の最新ルール

産前産後休業・育児休業・時短勤務は、いずれも法律で保障された権利で、監査法人もこれに沿って制度を整えています※3。まず押さえるべきは、制度の対象と期間です。

産前産後休業は、産前6週間・産後8週間の休業で、労働基準法で定められた権利です。育児休業は原則として子が1歳になるまで取得でき、保育所に入れないなどの事情があれば最長2歳まで延長できます。育児短時間勤務(時短)は3歳未満の子を持つ職員のために法人が用意する義務があり、1日6時間が基本の形です。産後パパ育休は配偶者の育児参加を促す制度で、パートナーと分担すれば復帰計画も立てやすくなります。

制度 対象 期間・内容 根拠
産前産後休業 出産する職員 産前6週・産後8週 労働基準法
育児休業 1歳未満の子を持つ職員 原則1歳・最長2歳まで 育児介護休業法
時短勤務 3歳未満の子を持つ職員 1日6時間が基本 育児介護休業法
所定外労働の制限 小学校就学前の子を持つ職員 残業の免除を請求できる 2025年改正で対象拡大
柔軟な働き方の措置 3歳〜就学前の子を持つ職員 時差出勤・テレワーク等から選択 2025年10月施行
表1:産休・育休・時短の制度早見表(2026年時点)

2025年の法改正で「柔軟な働き方」が後押しされた

2025年に育児介護休業法が改正され、両立支援が一段と手厚くなりました※3。残業を免除してもらえる対象が「3歳未満の子」から「小学校就学前の子」へ広がり、時差出勤やテレワークといった柔軟な働き方の措置が法人に義務づけられました。

監査法人はもともと在宅監査が浸透しており、こうした改正と相性が良い業種です。制度の手厚さは福利厚生の一部でもあるため、監査法人の福利厚生を解説した記事もあわせて確認しておくと、法人ごとの差が見えてきます。

大事なのは、これらが「あれば理想」ではなく「法律で決まった最低ライン」だという点です。求人票に時短やテレワークの記載があっても、それは義務を書いているだけかもしれません。法人の本当の差は、最低ラインをどれだけ上回っているかに出ます。復帰後の勤務日数を選べるか、繁忙期の残業免除がスムーズかといった運用の柔らかさこそ、比較すべきポイントです。

ひとつ注意したいのは、監査法人には家賃補助や資格手当が基本的にない点です。制度の充実度は「住宅系の手当」ではなく「休業と復帰のしやすさ」で見るのが正解です。

育休中の収入はどうなるのか

育児休業の間は、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。給付率は休業開始から180日までが賃金の67%、181日目以降は50%が目安です。給付金は非課税で、社会保険料も免除されるため、手取りで見ると想像より落ち込みは小さめです※4。

2025年4月からは、育休中の手取りをさらに支える仕組みが加わりました。子の出生直後の一定期間に両親がともに14日以上の育休を取ると、育児休業給付金(賃金の67%)に出生後休業支援給付金(同13%)が最大28日分上乗せされます。合わせて給付率は80%となり、社会保険料の免除と非課税を加味すると、この期間の手取りは実質10割に近づきます※5。

ここで効いてくるのが、パートナーとの分担です。産後パパ育休や夫婦での育休取得を組み合わせると、給付を受けながら二人で育児期を乗り切れます。復帰のタイミングを早めやすくなり、キャリアの空白も短くできます。育休は「母親だけが取るもの」という前提を外して設計するのが、これからの標準です。

規模別に見る両立環境の違い

両立環境は法人の規模で色が変わります。大手は制度とロールモデルの多さ、中小は時短の柔軟さと繁忙期の軽さが強みです。どちらが上ということはなく、自分が何を優先するかで最適解が変わります。

大手監査法人(EY新日本・あずさ・トーマツ・PwC Japan)は、制度が体系化され、時短で働く女性の先輩も多くいます。困ったときに相談できる相手がいる安心感は大きい。一方で担当先が大きく、繁忙期の負荷は重めです。

準大手(太陽・仰星・三優・東陽)は、大手に近い制度を持ちながら、組織が大きすぎないぶん一人ひとりの事情に配慮が届きやすい規模感です。中小監査法人は法人ごとに色が濃く、時短のシフトを柔軟に組める代わりに、ロールモデルの数は限られます。

中小監査法人は「一括りにできない」のが実態です。両立に手厚い法人もあれば、少人数ゆえに一人抜けると回らず時短が取りづらい法人もあります。規模が小さいほど、制度の記載よりも、実際の職員構成や過去の取得実績を個別に確かめる必要があります。ここは大手以上に下調べが効く領域です。

比較軸 大手監査法人 準大手 中小監査法人
制度の手厚さ 体系化され充実 大手に近い 法人差が大きい
時短の使いやすさ 使えるが調整要 配慮が届きやすい 柔軟に組める
リモートの柔軟性 在宅監査が浸透 浸透しつつある 案件次第
繁忙期の負荷 重め 中程度 比較的軽い
ロールモデルの数 多い 中程度 少なめ
表2:規模別の子育て両立環境の一般的な傾向(法人ごとに差があり、個別の確認が前提)

迷ったら、まず「制度の有無」ではなく「実際に時短で働いている人がいるか」で比べてください。制度があっても使う人がいない法人より、制度はシンプルでも実例が多い法人のほうが、続けやすいことが多いからです。

今月どの法人が就活生に人気なのか、両立のしやすさも含めた最新の傾向を知りたい方は、こちらで確認できます。

繁忙期と子育ての両立はどこまで現実的か

繁忙期と育児の両立は、繁忙期を避けるのではなく「繁忙期の担当量をあらかじめ調整する」ことで現実的になります。ゼロにはできませんが、コントロールはできます。

監査法人の繁忙期は、3月決算の被監査会社が集中する1月から5月にかけてです。この時期は残業が増えます。ただ、時短勤務中の職員には担当先の数を絞る、レビュー役に回すといった調整が行われるのが一般的です。夏から秋にかけての閑散期は落ち着くため、年間で見ればメリハリがつきます。

繁忙期と閑散期の具体的な差については監査法人の閑散期を解説した記事が参考になります。年間の波を知っておくと、育児との予定も立てやすくなります。

在宅監査とリモートが両立を後押しする

近年は在宅で監査調書を作成し、被監査会社とオンラインでやり取りする働き方が広がりました。保育園の送り迎えの時間を確保しやすく、通勤の負担も減ります。リモートの実態は監査法人のリモートワークを解説した記事にまとめています。

現場の声として、時短復帰した会計士からは「午前中に在宅でレビューを回し、午後は出社して定例に出る、という組み方で回している」という話をよく聞きます。フルリモートを狙うより、出社と在宅を混ぜるほうが現実的です。

もう一つよく聞くのが、繁忙期のピークだけ祖父母やベビーシッターの手を借りて乗り切る、という声です。1月から5月のうち、本当に山場になるのは数週間に絞られます。その期間だけ集中的に支援を厚くすれば、あとの月は無理なく回せる、という発想です。

逆に、両立でつまずきやすいのは「制度はあるのに周りが誰も使っていない」職場です。前例がないと、時短やリモートを申請しづらい空気が生まれます。だからこそ、次の章で触れる法人選びの段階で、実際の利用者数を確かめておくことが効いてきます。

産休・育休後のキャリアパスと昇進

時短勤務でも役職は上がります。ただし昇進のスピードは、フルタイムに比べてゆるやかになるのが実情です。ここを正しく理解しておくと、復帰後のキャリアに納得感が持てます。

監査法人の役職は、次の5段階で進みます。時短で働きながらでも、シニアスタッフやマネージャーへ昇進する女性は珍しくありません。評価は「働いた時間」ではなく「担った職務と成果」で見られるため、資格と経験がそのまま武器になります。

役職 年数の目安 主な役割
スタッフ 1〜3年 監査手続きの実務を担当する
シニアスタッフ 3〜4年経過 現場の主査として若手をまとめる
マネージャー 5〜7年経過 複数案件を統括する。ここから年俸制でボーナスなし
シニアマネージャー 8〜10年経過 部門運営や品質管理に関わる
パートナー 11年〜 法人の社員として経営に参画する

時短の間はマネージャー昇進が1〜2年後ろにずれることがあります。それでも、いったんフルタイムに戻れば昇進ペースは取り戻せます。ブランクがキャリアの終わりにならないのが、資格職の強みです。

評価面で覚えておきたいのは、時短だからといって仕事の質を下げる必要はない点です。担当する案件の数は減っても、一件ごとに深く関われば、レビューや品質管理で評価されます。時間の長さより、限られた時間で何を残したか。ここを意識する人ほど、復帰後の評価が伸びています。

監査以外の道も広がっている

復帰後に監査業務ではなく、アドバイザリー業務(コンサルティング系の2項業務)へ軸足を移す選択もあります。クライアント先への常駐が少ない部門を選べば、育児との両立がしやすくなる場合があります。監査業務とアドバイザリー業務では繁忙度や働き方が異なるため、部門選びは復帰計画の重要な要素です。

長い目で見れば、監査法人で積んだ経験は独立や転職の土台にもなります。子育てが一段落したあとに、監査で培った専門性を武器にキャリアを広げていく会計士も増えています。今の法人でずっと働き続けることだけが正解ではありません。まずは資格と経験を途切れさせず、選択肢を持ち続けること。それが両立を考えるうえでの一番の安全網になります。

両立しやすい監査法人を選ぶ5つの質問

両立しやすい法人かどうかは、制度の有無ではなく「使っている人がいるか」を確かめると見抜けます。説明会や面接で、次の5つを具体的に質問してください。

# 質問 見極めるポイント
1 時短勤務中の女性は現在何名いますか 制度の実利用者がいるか
2 育休から復帰した方の割合はどのくらいですか 復帰しやすい風土か
3 繁忙期は時短の方の担当をどう調整していますか 負荷調整の仕組みがあるか
4 時短でマネージャーに昇進した例はありますか キャリアが頭打ちにならないか
5 在宅と出社はどんな比率で組めますか 柔軟な働き方の実態
表3:両立しやすい法人を見抜く5つの質問チェックリスト

数字で答えが返ってくる法人は、両立を「実績」として持っています。逆に「制度はあります」で止まる法人は、使った人が少ない可能性があります。法人選びの軸そのものを整理したい方は監査法人の選び方を解説した記事もあわせてどうぞ。

質問をぶつける相手も選びましょう。人事担当より、実際に時短で働く先輩職員に聞くほうが具体的な答えが返ってきます。説明会では「時短勤務中の女性職員とお話しできますか」と頼んでみてください。快く応じてくれる法人は、両立が日常になっている証拠です。逆に言葉を濁す法人は、その時点で候補から外す判断もできます。

準大手(太陽・仰星・三優・東陽)は、大手ほどの規模ではないぶん、こうした質問に個別具体で答えてくれることが多い層です。両立を重視するなら、候補に入れて損はありません。

よくある質問(FAQ)

監査法人で産休・育休を取ると、キャリアは不利になりますか

不利になりにくい職場です。公認会計士の資格と実務経験は休業で失われないため、復帰後も職務に戻りやすいのが特徴です。昇進が一時的にゆるやかになることはありますが、フルタイムに戻ればペースは取り戻せます。

時短勤務は何歳まで使えますか

法律上、3歳未満の子を持つ職員には法人が時短勤務を用意する義務があります。多くの法人はこれを上回り、小学校就学前まで利用できるよう独自に延長しています。実際の上限は法人ごとに違うため、面接で確認するのが確実です。

繁忙期に育児と両立できるか不安です

時短勤務中は担当先の数を絞る、レビュー中心の役割に回すなどの調整が一般的です。繁忙期は1月から5月に集中しますが、夏から秋の閑散期は落ち着きます。年間の波を前提に予定を組めば、両立は現実的です。

大手と中小、両立にはどちらが向いていますか

制度とロールモデルの多さを重視するなら大手監査法人、時短の柔軟さと繁忙期の軽さを重視するなら中小監査法人が向きます。準大手はその中間で、配慮が届きやすい規模感です。優先順位を決めてから選ぶと迷いません。

女性会計士のロールモデルが少なくて不安です

女性会計士は会員・準会員の1割台とまだ少数派ですが、各法人が定着に力を入れているため環境は整いつつあります。説明会で時短勤務中の女性職員と話す機会を求めれば、リアルなロールモデルに出会えます。

まとめ

監査法人は、産休・育休・時短を使いながらキャリアを続けやすい職場です。専門資格が仕事に直結するため、ブランクがあっても戻りやすく、時短でも役職は上がります。

  • 制度は法律で保障され、2025年の改正で柔軟な働き方がさらに後押しされた
  • 両立環境は規模で色が違う。大手は制度とロールモデル、中小は柔軟さが強み
  • 選ぶときは「時短で働く人が実際にいるか」を5つの質問で確かめる

大切なのは、今の不安だけで法人を狭めないことです。10年先まで働き続ける前提で、制度が実際に使われている法人を選んでください。まずは各法人がどんな両立支援をうたっているか、就活生に人気の法人から見比べてみましょう。

参考文献・出典