監査法人の説明会に出ても、結局「雰囲気はよかった」「人がよさそうだった」という感想しか残らない。そんな経験はないだろうか。説明会で本当に必要なのは、雰囲気ではなく数字と仕組みの一次情報だ。
2026年の就活市場では、Big4・準大手・中小のいずれも合格者の囲い込みに動いている。説明会の場ではどの法人も「働きやすい」「成長できる」と語る。だからこそ、就活生側が用意した質問で建前を崩し、回答の解像度で法人の透明性を見抜く必要がある。
この記事では、説明会で聞くべき質問を年収・働き方・評価制度・キャリア・組織風土の5カテゴリ25問に整理する。質問するタイミングと、回答の読み方まで踏み込んで解説する。記事末尾には、自分用にコピーして使える質問リスト形式の表も用意した。
目次
監査法人の説明会で「いい質問」と「悪い質問」の違い
いい質問とは、即答できる人とできない人で差がつき、回答に数字が含まれる質問。悪い質問は、誰が答えても同じ建前が返ってくる質問だ。
「御社の強みは何ですか」「やりがいを教えてください」は典型的な悪い質問。答えは事前準備された採用パンフレットの抜粋で終わる。これでは法人ごとの違いが見えない。
2026年新卒で内定を取った会計士に話を聞くと、最終的な意思決定は「具体的な数字を即答できたか」で割れていた。リクルーターや人事が「ちょっと確認します」と言った瞬間に、その法人の優先度は下がっていく。
「いい質問」が満たす3条件
- 数字で答えられる(中央値・割合・年数など)
- 採用パンフに載っていない情報を引き出せる
- 即答できる法人とできない法人で差が出る
例えば「初任給はいくらですか」は1の数字条件は満たすが、Big4の場合は公開情報で2を満たさない。質問の真価は「そのうち固定残業代は何時間分か」「住宅手当の支給条件は何か」のように一段深掘りした問いに宿る。
「悪い質問」の典型パターン
- 「やりがいを教えてください」(建前で終わる)
- 「どんな研修がありますか」(採用ページに書いてある)
- 「社内の雰囲気はどうですか」(誰が聞いても「いい人ばかりです」と返る)
- 「成長できますか」(成長は自分次第。法人の責任ではない)
- 「ワーク・ライフ・バランスは取れますか」(取れますとしか答えようがない)
これらを聞いても、5法人を回った時点ですべての回答が同じになる。違いが出ないなら、質問する意味がない。説明会の質疑時間は限られている。1問あたりに最低2分かかると考えれば、30分のセッションで深掘りできるのは7問前後。質問は事前に優先順位をつけて持っていくのが鉄則だ。
「ふんわりした質問はリクルーターが安全に答えられる」が落とし穴になる。安全に答えられる質問は、こちらの判断材料にもならない。逆に、踏み込んだ質問はリクルーターが一瞬詰まることがある。その「詰まり」が、法人ごとの違いを浮かび上がらせるサインだ。

質問前に押さえておく前提知識
質問の精度を上げるには、Big4・準大手・中小の基本構造を頭に入れてから説明会に臨むこと。各層の年収レンジや働き方の傾向は、監査法人の就活ガイドで整理されている。法人選びの軸が決まっていないなら、まずはここから読むのをすすめる。
年収カテゴリの質問5問|初任給の「裏側」を引き出す
年収の質問は、額面の数字よりも「内訳」「上昇カーブ」「手当の条件」を聞くのがコツ。
採用ページの「初任給540万円〜」のような表示は、ほぼ全ての法人で固定残業代を含む。実際の手取り、賞与の評価連動、住宅手当の条件、3年目以降の昇給率は、説明会でしか引き出せない。
Q1. 初任給の内訳を月給ベースで教えてください(固定残業代の時間と金額を含めて)
狙い: 額面の中に「みなし残業」が何時間含まれているかを明示させる質問。Big4の初任給は約30万円前後だが、その中に40〜45時間分の固定残業代が組み込まれているケースがある。30時間か45時間かで実質時給は1〜2割変わる。
即答できる法人は給与体系を透明に説明する文化がある。「採用担当に確認します」となる法人は、入社後も給与体系の説明が雑な可能性が高い。
Q2. 賞与は年何回・何か月分が標準で、評価による振れ幅はどれくらいですか
狙い: 賞与の「標準値」と「上下限」を引き出す。Big4の場合、夏冬合わせて約4〜5か月分が一般的だが、評価が下位だと2か月分まで落ちるケースもある。賞与の振れ幅を聞くだけで、評価制度の厳しさが見える。
賞与の詳細な仕組みは監査法人の賞与の解説記事も参考にしてほしい。説明会で具体額を聞く前に、相場感を頭に入れておくと深掘りしやすい。
Q3. 住宅手当・通勤手当の支給条件と金額を教えてください
狙い: 「条件付きの手当」を明らかにする。例えば「会社から半径2km以内に住む場合、月3万円支給」のような条件は、若手の手取りに直結する。Big4は住宅手当が薄い法人が多く、中小・準大手のほうが手厚いケースがある。
Q4. 3年目(シニア昇格後)の年収レンジを、上位・中位・下位で教えてください
狙い: 昇格カーブの傾きを数字で押さえる。3年目のシニア昇格時に約100〜150万円のジャンプがある法人と、ほぼ横ばいの法人で生涯年収は大きく変わる。「上位・中位・下位」の3点を聞くと、平均ではなく分布が見える。
Q5. 初任給は過去3年で何回引き上げられましたか
狙い: 給与改定の頻度と姿勢を見る。2024〜2026年は会計士不足を背景に、Big4・準大手で大幅な初任給引き上げが続いた。引き上げに敏感な法人は、人材確保への危機感が高く、入社後の昇給にも反映されやすい。「最近は据え置きです」と答える法人は、市場感度が鈍い可能性がある。
初任給そのものの相場は監査法人1年目の手取りで詳しく整理している。額面と手取りの差を理解した上で質問すると、より深い回答を引き出せる。
5問すべてを集合説明会の場で聞き切る必要はない。Q1・Q5は人事のスタンスが出やすいので最初に当てる。Q2・Q3・Q4は座談会やOB訪問で時間をかけて深掘りしたほうが、若手社員から実体験に近い数字が出やすい。「公式が答える数字」と「現場が答える数字」を別ルートで取りに行く設計が、年収カテゴリの肝になる。
年収レンジは法人ごとに大きく異なる。今月どの法人に勢いがあるかを知っておくと、説明会での質問の優先順位も決まりやすくなる。
働き方カテゴリの質問5問|「残業中央値」を引き出せ
働き方の質問は「平均」ではなく「中央値」と「分布」を聞くこと。平均は一部のハードな部署で引き上げられている可能性があるため、中央値のほうが実態に近い。
Q6. 直近期の月次残業時間の中央値と、上位10%の数値を教えてください
狙い: 平均ではなく中央値を聞くことで、極端な部署に引きずられない実態を引き出す。さらに上位10%を聞くと、「最悪のケース」の上限が見える。中央値30時間でも上位10%が80時間を超える法人は、配属ガチャの振れ幅が大きい。
Q7. 繁忙期(5月・四半期レビュー期)の月次残業時間の上限はどれくらいですか
狙い: 繁忙期のピークを数字で把握する。Big4の繁忙期は5月(3月期決算)が最も厳しく、月100時間超えの事例も珍しくない。「労務管理で月45時間以内に抑えています」と即答する法人は信頼度が高い。逆に「部署によります」で終わる法人は、労務管理が現場任せの可能性がある。
繁忙期の働き方や、それを乗り切るための準備については監査法人の閑散期と繁忙期の対策でも触れている。説明会前に押さえておくと、回答の温度感がわかる。
Q8. 直近期の有給消化率は、新卒1〜3年目で何%ですか
狙い: 全社平均ではなく「新卒1〜3年目」に絞ることで、若手の実態を引き出す。シニア以上は有給を使えても、若手は繁忙期に取れないケースが多い。1〜3年目の有給消化率が60%を切る法人は、若手の負荷が高い。
Q9. リモートワークの実施頻度はどれくらいで、クライアント先の往査とのバランスはどう設計されていますか
狙い: 「リモート可」だけでは情報量が少ないため、頻度とクライアント先往査とのバランスまで深掘りする。「往査は週2、リモートは週3」のように設計が明確な法人は、働き方への投資が継続している。逆に「部署とクライアント次第」で曖昧な法人は、現場の負荷次第で簡単にリモートが消える。
Q10. 転勤・出向の頻度と、若手のうちに経験するパターンを教えてください
狙い: 転勤や海外駐在の機会を、年次別・割合別で押さえる。Big4は海外駐在の枠があるが、実際に行けるのは年次・専門・選考通過がそろった一部だけ。「シニア以降で年間〇人」「3年目以降で希望者の約3割」のように数字で語れる法人は、制度が形骸化していない。
働き方カテゴリで押さえておきたいのは「平均」を聞かないこと。平均は外れ値で簡単に動く。中央値・上位10%・1〜3年目・繁忙期、というように条件を絞り込んだ数字を要求すると、人事側も適当には答えにくくなる。「全社平均で月35時間です」が返ってきたら、すかさず「中央値だとどうですか」「1〜3年目に絞ると変わりますか」と重ねていく。1問で終わらせず、2段階・3段階で深掘りするのが質問設計の基本だ。

評価制度カテゴリの質問5問|昇格率の「分母」を確認する
評価の質問は「昇格率」と「評価分布」を数字で確認すること。「成果次第で早期昇格できます」という表現は便利だが、実際の昇格率は法人ごとに2倍以上の差がある。
Q11. シニア昇格までの平均年数と、昇格率(同期入社者のうち昇格した割合)を教えてください
狙い: 「最短3年で昇格可能」という言葉ではなく、実際に同期の何割が3年でシニアになっているかを聞く。「3年で7割昇格」と「3年で2割昇格」では昇給カーブが全く違う。即答できる法人は人事データが整理されている。
Q12. 評価分布(S・A・B・C・D など)の標準的な割合を教えてください
狙い: 評価の正規分布のかけ方を聞く。「上位2割がA以上、下位2割がC以下」のように制度設計が明文化されている法人と、評価者の裁量任せの法人で、賞与・昇格の納得感が変わる。曖昧な回答は、評価の透明性が低い証拠だ。
Q13. 配属先(業種・部門)は、希望が通る確率はどれくらいですか
狙い: 配属希望の通過率を聞く。Big4は事業部制を採るため、希望が通るかどうかで初期キャリアが大きく変わる。「第一希望が通る割合は約7割」のように数字で答えられる法人は、配属プロセスが透明。「総合的に判断します」で終わる法人は、入社後の希望が反映されにくい。
Q14. 主担当(インチャージ)を経験する平均年次を教えてください
狙い: 主担当(インチャージ)になるタイミングは、会計士としての成長速度を決める。3年目で主担当を持つ法人と、5年目で初めて持つ法人では、5年後のスキル差が大きい。中小・準大手は早期にインチャージを任されやすい傾向がある。
Q15. 評価が低かった場合のフォロー体制(PIPの有無、再評価機会)はありますか
狙い: 評価が低かった場合の救済策を聞く。PIP(業績改善計画)の有無や、評価のフィードバック面談の頻度を即答できる法人は、人材育成への投資が厚い。「評価は最終的な賞与に反映されるだけです」と返す法人は、若手の伸び悩みに対する関与が薄い。
評価と昇格の構造は、監査法人での出世の解説でも整理されている。質問の前に役職体系を押さえておくと、回答の意味合いが理解しやすくなる。
評価カテゴリで意識したいのは、「制度の存在」と「制度の運用」を分けて聞くこと。多くの法人は評価制度を持っているが、運用が個々の評価者に委ねられているケースは少なくない。「制度として定められていますか」ではなく「どう運用されているか、最新の数字で教えてください」と聞くと、形骸化しているか機能しているかが判別できる。「制度はありますが、運用は各部門で〜」という回答は、ほぼ運用されていないと考えていい。
評価制度や昇格率は、入社後の年収・モチベーションを大きく左右する。各法人の評価制度は外からは見えにくいため、説明会で数字を引き出すことが何よりの情報源になる。気になる法人があれば、まずは応募してみることで人事から直接情報を得られる。
キャリアカテゴリの質問5問|「出口」と「滞留」を数字で見る
キャリアの質問は「入社後5年で何人がどこに行ったか」を聞くことが核心。離職率の数字ではなく、転職先の分布と独立タイミングまで踏み込む。
Q16. 入社5年後・10年後の離職率と、主な転職先の上位3カテゴリを教えてください
狙い: 単純な離職率ではなく、転職先の質まで聞く。離職率30%でも転職先がコンサル・FAS・事業会社CFOなら、外でも通用するスキルが身についている証拠。逆に転職先が会計事務所中心なら、市場価値の伸びが鈍い可能性がある。
Q17. 直近3年で独立(個人事務所開業)した会計士は何人いますか
狙い: 独立人数は、法人内で個人力が育っているかの指標になる。独立者が多い法人は中小〜準大手に多く、若手にも一定の裁量が回ってくる。Big4でも独立者がいるが、絶対数では中小のほうが比率が高い。
Q18. 海外駐在・出向の枠は年何人で、応募条件は何ですか
狙い: 海外駐在を希望するなら、枠の絶対数と応募条件を必ず確認する。「年間20人程度、英語TOEIC850以上、シニア以降」のように条件が明確な法人は、制度が運用されている。「ご希望に応じて検討します」で終わる法人は、実際の駐在数がゼロに近い可能性が高い。
Q19. パートナー昇格までの平均年数と、新卒入社者からの昇格割合を教えてください
狙い: パートナーまでのキャリアを目指すなら、新卒入社者の昇格割合を確認する。Big4のパートナー昇格率は新卒入社者の数%程度。中途入社からの登用が多い法人もあるため、新卒のキャリアパスとして現実的かを見極める。
パートナーの年収やキャリア到達の現実は、監査法人パートナーの年収で詳しく解説している。質問前にキャリアの最終地点をイメージしておくと、回答の解像度が変わる。
Q20. 法人内のキャリアチェンジ(監査からアドバイザリー、FAS、海外への異動)の事例と頻度を教えてください
狙い: 監査一本ではなく、法人内でキャリアの幅を広げられるかを聞く。Big4は内部異動の制度が整っており、監査経験を活かしてアドバイザリーやFASへ移るルートが用意されている。中小・準大手は内部異動の選択肢が狭いケースが多い。
監査法人を出た先のキャリア全体像は監査法人キャリアロードマップを参照すると、説明会で聞く出口情報の意味合いが理解しやすくなる。
キャリア質問で気をつけたいのは「ロールモデルがいるかどうか」を確認する切り口。「直近5年で、新卒入社者から海外駐在に行った方は何人ですか」「直近3年でパートナーに昇格した方の最年少は何歳ですか」のように、具体例の数を聞くと、制度が運用されているかが見える。「制度上は可能です」と「実際に〇人います」の差は、入社後の自分の選択肢の広さに直結する。
組織風土カテゴリの質問5問|「即答できるか」で透明性を測る
風土の質問は「数字」ではなく「即答できるかどうか」で見抜く。風土は数値化しにくい領域だが、人事が普段から情報を整理しているかどうかで法人の姿勢がわかる。
Q21. 会計士1人あたりのパートナー比率(パートナー1人につき会計士何人)を教えてください
狙い: パートナーとの距離感を数字で測る。パートナー1人につき会計士10人の法人と、50人の法人ではアクセスのしやすさが5倍違う。中小はパートナーが近く、Big4は遠い、というのが一般論だが、実数を聞くと差がはっきりする。
Q22. 入社後1年間の研修総時間と、内訳(座学・OJT・eラーニング)を教えてください
狙い: 教育投資の量を時間で測る。1年目の研修総時間が200時間を超える法人は、教育への投資が厚い。座学だけで多いのではなく、OJT・eラーニングのバランスが取れているかも確認する。
Q23. パワハラ・セクハラの相談窓口は何種類あり、過去3年の対応件数を教えてください
狙い: 相談窓口の数と、実際の対応実績を聞く。「窓口は内部・外部・人事の3種類で、年間〇件の相談を受けています」と即答できる法人は、ハラスメント対策が運用されている。「相談窓口はあります」だけで終わる法人は、制度が形だけの可能性がある。
Q24. 同期との交流頻度や、メンター制度の運用実態を教えてください
狙い: 横のつながりと、縦のサポート体制を聞く。同期との集合研修が月1回以上ある法人は、横のつながりが強くなる。メンター制度については、形式的に割り当てられるだけなのか、月1回の1on1が制度化されているのかで実態が大きく違う。
Q25. 女性会計士の比率と、産休・育休からの復帰率を教えてください
狙い: 多様性の数字を聞く。女性比率30%以上・復帰率90%以上の法人は、ライフイベントを含めた長期キャリアが描きやすい。男性しか答えられない、というだけでも法人の偏りが見える。男女問わず、長く働ける環境かどうかを判断する指標になる。
組織風土カテゴリは、説明会の場では人事の建前トークが厚くなる領域。だからこそ、数字で聞く意味が大きい。「家族的な雰囲気」「フラットな組織」のような形容詞には、ほぼ情報がない。パートナー比率、研修時間、ハラスメント対応件数、女性比率、復帰率、と数字で並べてしまえば、5法人を横並びで比較できる。回答が即答できなかった項目こそ、その法人の弱点だと考えていい。

質問するタイミングと、回答から見極めるべきポイント
説明会の質問は、タイミングの設計で得られる情報量が変わる。集合型の説明会では建前しか出ない。本音は座談会・OB訪問・面接前後で引き出すのが鉄則だ。
タイミング別の質問配分
| シーン | 適した質問カテゴリ | 得られる情報の質 |
|---|---|---|
| 大規模説明会(数十人〜100人) | 事業概要・採用数(Q1・Q5) | 建前中心。数字は公開情報レベル |
| 少人数座談会(5〜10人) | 働き方・評価制度(Q6〜Q15) | 若手の生声が出やすい。数字も引き出せる |
| OB訪問(1対1) | キャリア・風土(Q16〜Q25) | 本音と数字の両方を引き出せる最強の場 |
| 面接前後の雑談 | 当日の人事の温度感確認 | 人事の優先順位や本音が漏れる |
| 内定後の面談 | 配属希望・年収交渉 | 条件確認の最終チャンス |
大規模説明会で「Q23のハラスメント対応件数を教えてください」と聞いても、即座に出てこないことが多い。大規模の場では「あとで個別に聞きたい」と前置きしておき、座談会や個別面談に持ち越すのが効率的だ。
回答から見極めるべき4つのサイン
- 即答度: 数字をその場で出せるか。「あとで確認します」が3問続いたら、その法人の人事は数字に弱い
- 具体性: 「人による」「部署による」で終わるか、ベースラインを示せるか
- 更新性: 「直近期は〜」と言えるか、「数年前のデータですが〜」と古い数字が出るか
- 透明性: 不利な数字も含めて開示するか、いい数字だけ並べるか
4つすべてが揃う法人は少ない。このうち3つを満たす法人なら、入社後の情報開示も期待できる。逆に1つも満たさない法人は、内定後の条件交渉でも苦労する可能性が高い。
NG回答パターンと、その意味
- 「総合的に判断しています」 → 制度が明文化されていない
- 「人によります」 → 評価・配属が属人的
- 「採用担当に確認します」 → 数字が共有されていない
- 「会社のカルチャーが合えば大丈夫です」 → 客観基準がない
- 「うちは家族的な雰囲気で〜」 → 制度より情緒で運営している
これらの回答が複数返ってきた法人は、入社後にミスマッチが起きやすい。説明会の段階で違和感を放置せず、自分用のメモに「即答度」「具体性」のチェック欄を作って点数化するのがおすすめだ。

25問チェックリスト(コピーして使う)
| # | カテゴリ | 質問内容(要約) | 即答チェック |
|---|---|---|---|
| Q1 | 年収 | 初任給の内訳(固定残業代の時間と金額) | □ |
| Q2 | 年収 | 賞与の標準と評価による振れ幅 | □ |
| Q3 | 年収 | 住宅手当・通勤手当の支給条件 | □ |
| Q4 | 年収 | 3年目の年収レンジ(上位・中位・下位) | □ |
| Q5 | 年収 | 過去3年の初任給引き上げ回数 | □ |
| Q6 | 働き方 | 月次残業時間の中央値と上位10% | □ |
| Q7 | 働き方 | 繁忙期の残業時間上限 | □ |
| Q8 | 働き方 | 1〜3年目の有給消化率 | □ |
| Q9 | 働き方 | リモートの頻度と往査のバランス | □ |
| Q10 | 働き方 | 転勤・出向の頻度と若手の事例 | □ |
| Q11 | 評価 | シニア昇格までの平均年数と昇格率 | □ |
| Q12 | 評価 | 評価分布の標準的な割合 | □ |
| Q13 | 評価 | 配属希望が通る確率 | □ |
| Q14 | 評価 | 主担当を経験する平均年次 | □ |
| Q15 | 評価 | 低評価時のフォロー体制 | □ |
| Q16 | キャリア | 5年後・10年後の離職率と転職先 | □ |
| Q17 | キャリア | 直近3年の独立人数 | □ |
| Q18 | キャリア | 海外駐在の枠と応募条件 | □ |
| Q19 | キャリア | パートナー昇格までの年数と新卒からの割合 | □ |
| Q20 | キャリア | 法人内のキャリアチェンジ事例 | □ |
| Q21 | 風土 | 会計士1人あたりのパートナー比率 | □ |
| Q22 | 風土 | 1年目の研修総時間と内訳 | □ |
| Q23 | 風土 | ハラスメント相談窓口と対応件数 | □ |
| Q24 | 風土 | 同期交流とメンター制度の運用 | □ |
| Q25 | 風土 | 女性会計士比率と産育休復帰率 | □ |
この表を印刷して持ち歩き、即答できた質問にチェックを入れていく。3法人で同じ質問をすれば、即答率の差が法人選びの最初のフィルターになる。
よくある質問
Q. 説明会で質問しすぎると印象が悪くなりませんか?
2026年現在の売り手市場では、むしろ質問しない方が印象が悪い。法人側は「うちに本気で関心がある学生か」を見ているため、具体的な質問は逆に好印象につながる。ただし1人で30分独占するのは避け、優先度の高い3問程度に絞ること。残りはOB訪問や個別面談に回せばいい。
Q. 質問しても「会社による」「人による」しか返ってこない場合、その法人はやめるべき?
結論を急ぐ必要はないが、警戒レベルは上げてよい。即答できない理由が「情報を持っているが言えない」のか、「そもそも整理されていない」のかで意味が変わる。OB訪問で同じ質問を別の人にぶつけて、回答が揃うかを確認するとブレが見える。
Q. Big4と中小監査法人で、質問内容を変えるべきですか?
カテゴリは同じだが、深掘りの方向を変える。Big4には「希望が通る確率」「海外駐在の枠」のような分母が大きい質問が刺さる。中小・準大手には「パートナーとの距離」「主担当の早期経験」「独立サポート」のような少数精鋭の利点を引き出す質問が向く。
Q. 内定後に年収交渉は可能ですか?説明会で聞いてもいいですか?
内定後の条件交渉は可能だが、説明会の場では避けるべき。「他社の内定とどう比較すべきか」のような相談を、内定後の面談で人事にぶつけるのが現実的。説明会では「条件交渉の余地はありますか」程度のソフトな確認にとどめておく。
Q. 「即答できない法人=悪い法人」という判断は乱暴ではないですか?
1問の即答度だけで判断するのは乱暴だが、25問中の即答率を見れば法人の透明性は数値化できる。即答率50%を下回る法人と80%を超える法人では、入社後の情報開示の質が違う可能性が高い。あくまで複数の指標の1つとして使うのが現実的だ。
まとめ|質問の設計で、説明会の価値は10倍変わる
説明会で「雰囲気はよかった」で終わる人と、「数字で5法人を比較できた」と言える人の差は、質問の設計力にある。5カテゴリ25問のリストを持っていくだけで、得られる情報の質は何倍にもなる。
要点は3つ。1つ目は数字を引き出す質問を準備すること、2つ目はタイミング別に質問を振り分けること、3つ目は即答度・具体性・更新性・透明性の4軸で回答を採点すること。この3つを徹底すれば、説明会の場が単なる雰囲気確認から、意思決定材料の収集に変わる。
次にやるべきは、まず1〜2法人の説明会に「25問のチェックリスト」を印刷して持っていくこと。1回試すだけで、自分なりの優先質問が見えてくる。
説明会で何を聞くか以前に、どの法人を回るかも重要な判断ポイントになる。今月どの法人に勢いがあるかを押さえてから動けば、説明会の選び方も効率が変わる。
参考文献・出典
- ※1: 日本公認会計士協会(JICPA)公式サイト https://jicpa.or.jp/
- ※2: 金融庁 公認会計士・監査審査会 https://www.fsa.go.jp/cpaaob/
- ※3: 厚生労働省 一般職業紹介状況 https://www.mhlw.go.jp/
- ※4: マイナビ会計士 https://mynavi-kaikeishi.jp/
- ※5: CPA会計学院 公式サイト https://cpa-net.jp/
