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監査未経験で公認会計士への就職は可能?年齢のハードルや成功のコツを紹介

監査未経験で公認会計士への就職は可能?年齢のハードルや成功のコツを紹介

公認会計士への就職を目指していても、監査未経験での就業が可能なのかわからず、選択肢を狭めてしまっている方も多いのではないでしょうか。専門的な知見が重視される領域でもあるため、確かに監査未経験で公認会計士になるのは困難と言わざるを得ません。

今回は、監査未経験でも公認会計士を目指せるのか?という疑問を解消します。また、監査未経験者が公認会計士になるうえで覚えておきたい、以下の内容もあわせて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

  • 公認会計士の就職市場
  • 公認会計士になるため監査未経験者が身につけておくべきスキル
  • 監査未経験者が当たる年齢の壁について
  • 監査未経験で公認会計士になった場合のキャリア
  • 監査未経験者が公認会計士になるための方法・コツ
  • 監査未経験者が公認会計士になるリスク

本記事で紹介する監査未経験者を対象にした内容は、公認会計士への就職を目指すうえで覚えておくべきものばかりです。とはいえ、就職先として選定した法人によって、求める人材の傾向や会得しておくべきことは異なります。そのため、本記事で紹介する内容はあくまで参考情報として押さえておくと良いでしょう。

公認会計士の就職市場について

公認会計士を目指すうえで、先んじて把握しておくべきは就職市場についてです。結論、公認会計士の就職市場は「売り手」であるといえます。公認会計士の試験における合格者数は、2009年が2,000人台だったのに対し、2018年には1,300人台になっていました。試験に合格する人だけでなく、そもそも受験者自体が減少傾向にありましたが、2023年合格者は1,500人超となり増加に転じています。しかし、公認会計士の就職市場はまだまだ「人手不足」であると予想されます。そのため、年齢面や既存スキル、ポテンシャルを評価してもらえれば監査未経験でも公認会計士として就職できる可能性があります。

また、監査法人以外の一般事業会社において、公認会計士に対するニーズが高まっているのも、監査未経験でも就職しやすいことの理由です。昨今は特定の企業に属し、専任の公認会計士になるキャリアが選択しやすくなっています。そのため、市場が賑わっていることに加え、専属の公認会計士を求める企業も増えているため、比較的就職自体がしやすくなっているという見方もあるでしょう。

売り手市場にあるとはいえ、公認会計士として就業するにはそれなりのハードルがあり、監査未経験者と比べて経験者が優遇されることに変わりはありません。ここからは、売り手市場である公認会計士の界隈で就職活動を成功させるため、未経験で公認会計士として働くための知識を身につけていきましょう。

公認会計士試験合格者の就職率と未経験者の割合

公認会計士試験の合格者は、例年1,000〜1,500人程度。そのうち約9割が監査法人をはじめとする会計関連業界へ就職しています。

実はその多くが実務未経験のまま就職活動をスタートしています。監査法人では「ポテンシャル採用」が基本で、会計実務よりも将来性や人柄を重視する傾向にあります。そのため、「未経験だから就職できない」というのは誤解。特に20代前半であれば、未経験でも十分に採用される可能性があります。

監査未経験でも監査法人に就職できるのか

結論、業務経験がなくても監査法人に就職することは可能です。しかし、あくまで「公認会計士の試験に合格している」事実がないと、公認会計士として就職はできません。就職を目指す段階で試験に合格していない場合は、まずは公認会計士の試験を受け、資格を取得するところから始めましょう。

ただし、公認会計士の試験に合格して​​いなくても、従事できる業務はいくつかあります。M&A・企業統合・買収などの領域であれば、資格未取得の状態でも取り組むことが可能です。しかし、これらは「実務経験」が重視される領域です。M&Aや企業統合、買収に関する実務経験があれば、公認会計士の資格がなくても就業できる可能性があります。しかし、これらの実務経験がない場合だと就職は困難です。

また、業務経験が優遇されるのは「転職」がベースの話であり、過去にある程度の勤務経験がないと就業はできないでしょう。そのため、監査未経験で公認会計士になるには、やはり資格取得を前提としておく必要があります。

なお、仮に公認会計士の資格を取得していない状態で就職できたとしても、働きながら資格を取得するよう指示される場合が多いでしょう。

関連記事:公認会計士のキャリアパスやプランを大公開!監査法人以外のキャリアもある?必要な資格やスキルも徹底解説

監査未経験でも活かせる前職の経験とは

未経験であっても、過去の職歴が監査業務に活かせることは多々あります。

たとえば経理・財務職での帳簿管理、営業職での折衝力や調整力、IT業界でのデータ処理やシステム理解は、いずれも監査業務に直結するスキルです。特に中途採用の場合、採用担当者は「これまで何を学び、どんな強みを発揮できるのか」を重視します。未経験だからといって自信を失う必要はありません。むしろ異業種の視点や実務経験を監査業務にどう応用できるかを語れることが強みになります。

公認会計士への就職活動において監査未経験者が身につけるべきスキルとは

監査未経験で公認会計士を目指す場合は、資格の取得が最低条件として挙げられます。加えて、以下に挙げる知見を会得しておくことも大切です。

  • 税務の知識
  • ITに関する理解
  • 語学力

ここで挙げる知見を豊富に有していれば、仮に公認会計士の資格を取得していなくても監査未経験者枠として採用される可能性も0ではありません。

税務の知識

税務の知識は、公認会計士としての仕事幅を広げるうえで重要になります。会計と税務はひとつの流れとされるため、切り離して考えられない領域です。監査業務においては、税務処理も監査対象となることから、税務の知識は必須といえるでしょう。

ITに関する理解

昨今、公認会計士を抱える企業や監査法人の多くは、会計処理にシステムを利用することも増えました。加えて、財務報告の作成システムを監査する「IT監査」も行われています。このことから、公認会計士には会計・税務に関する知識だけでなく、ITにおける理解を深めておくべきと判断できます。公認会計士の資格に加えて、豊富なITスキルも身につけておけば、就職時に優遇される可能性があるでしょう。

語学力

公認会計士には、ある程度の語学力も求められます。外資系企業との関わりを持つことの重要性や、グローバル化が注目されているためです。最近では、英語を社内公用語にする企業も増えていることから、英語を話せるだけで公認会計士としての就職が有利になる可能性があります。

コミュニケーション能力とチーム対応力

監査業務はチームで進めるのが基本です。未経験でも即戦力として評価される人材は、上司や被監査会社との円滑なコミュニケーションが取れるかどうかがポイントになります。報連相や質問力、状況把握力、相手の立場を考えた対応などが求められます。特に未経験者の場合、分からないことを素直に聞ける姿勢や学ぶ意欲が重視されます。スキルよりも「人と一緒に働けるかどうか」が問われるため、自分の対人能力を客観的に伝えるエピソードを準備することが大切です。

監査未経験で監査法人に就職するには年齢の壁を理解すべき

監査未経験で公認会計士として働く際は、年齢におけるハードルがあることを理解しておくべきでしょう。20代・30代であれば、仮に監査未経験でもポテンシャルを評価されて就職できる可能性があります。しかし、40代にもなれば前職の経験や実績がないと、監査未経験で公認会計士になることは困難でしょう。

20代・30代で公認会計士として働くのであれば、上述した税務やITに関する理解、語学力があれば未経験でも採用されるかもしれません。しかし、やはり公認会計士の資格がないと、監査未経験での採用はハードルが高くなると認識しておくと良いでしょう。

「資格は有していないが業務経験はある」

このような状況でも採用されるのは、最初の「就職」ではなく何度目かの「転職」が多いことを前提にしてください。そのため、監査未経験で公認会計士になるのは、非常にハードルが高いことだと覚えておくべきです。

監査未経験で監査法人に就職した場合の待遇・キャリアについて

監査未経験で監査法人に就職した場合、経験者と比べて待遇やキャリアに違いが出てしまいます。ここで紹介する内容を、監査未経験で公認会計士になるうえでの待遇面を理解し、就職後のキャリア形成にお役立てください。

就職後最初の役職

監査法人に就職した場合、最初に与えられるのは「スタッフ(ジュニアスタッフ)」という役職です。最初の役職であるため、現預金や借入金、貸付金といった比較的易しめの科目を担当することになるでしょう。ジュニアスタッフの経験を数年積んで、シニアスタッフになるのが基本的な流れになりますが、経験者であれば飛び級できることも。ただし、監査未経験の場合は飛び級で役職が変わることはほとんどないと考えて良いでしょう。

キャリア

公認会計士の基本的なキャリアは、以下のとおりです。

スタッフ入社1年目のポジションシニアの指導を受けながら、監査法人に関する基本を学ぶ
シニアスタッフ入社4年目ごろから就けるポジション現場責任者としてスタッフをまとめる自身の業務と育成を並行することが多い
マネージャー入社8年目ごろから就けるポジションシニアも含めたチーム全体をまとめる管理職になるため残業代がつかない
パートナー入社15年目ごろから就けるポジション経営の一角を担う

上記は公認会計士の基本的なキャリアではありますが、監査未経験の場合は経験者と比べてキャリアチェンジに時間がかかるかもしれません。監査未経験であることをハンディとしないためには、就職前はもちろん、就職後の実務経験や自習が重要になるでしょう。

監査未経験で就職した場合の給与

監査未経験で監査法人に就職した場合の給与は、いわゆる「1年目」とほぼ同等の金額に設定されるでしょう。なぜなら、公認会計士の給与は、ある程度ベースが固まっているためです。公認会計士1年目のスタッフの場合、およそ500万円から600万円の年収が得られます。監査未経験者の場合はスタッフとして採用されることが多いため、監査未経験者も同様の収入を得られると考えていて良いでしょう。

監査未経験者が監査法人に就職するためのコツ

監査未経験者が公認会計士になるには、応募する監査法人が求める人材を理解し、かつ競争率の低い求人を探すことが重要です。

応募する監査法人が求める人材を理解する

自身がアプローチする監査法人が、どのような人材を求めているのかあらかじめ理解しておくことが大切です。例えば、英語を話せる人材を募集している監査法人であれば、仮に公認会計士の資格がなくても監査未経験で就職できる可能性があります。一方で、公認会計士の資格を有していることが最低条件の監査法人であるにもかかわらず、無資格でアプローチするのは危険です。あくまで就職希望先の求める条件を理解し、自身が当てはまっているか確認したうえで面接のアポを取るようにしましょう。

競争率の低い求人を探す

監査未経験で公認会計士になるには、あえて競争率の高い監査法人にアプローチする必要はないでしょう。競争率の高い監査法人は経験者や資格取得者を求めているケースが多く、監査未経験の場合は面接にすら進めない可能性があります。応募先が求める人材を理解し、かつ競争率の低い監査法人に絞ることで、就職の成功率が高まるかもしれません。

6.3 転職エージェントや監査法人説明会を活用する

監査未経験者が就職活動を効率的に進めるには、転職エージェントや監査法人の説明会をフル活用するのが鍵です。エージェントは未経験でも応募可能な求人を紹介してくれるだけでなく、書類添削や模擬面接などのサポートも受けられます。また、監査法人が開催する採用説明会では、現場の声を直接聞けるチャンス。未経験者向けのプログラムや配属部門の柔軟さなどを事前に確認できるため、ミスマッチを防ぐことができます。自力での情報収集に限界を感じたら、ぜひ専門家を頼ってみましょう。

監査未経験者が監査法人に就職するリスク

監査未経験者でも、応募先によっては公認会計士として働くことが可能です。ただし、監査未経験での就職には以下のリスクがあることも理解しておきましょう。

  • 一般的なキャリアパスのレールに乗れない
  • 就職後のスキル・知識の会得を怠れない
  • 年収が思うように上がらない

一般的なキャリアパスのレールに乗れない

公認会計士のキャリアパスは経験年数に応じて変化する傾向ではあるものの、監査未経験の場合は例に漏れる可能性があります。監査未経験であることから、経験者と同じレベルで仕事をこなせるようになるまで時間がかかるためです。そのため、監査未経験で公認会計士を目指す際は、一般的なキャリアパスを意識するよりも、知見を身につけながら確実に成長していく形を目指すべきでしょう。

就職後のスキル・知識の会得を怠れない

監査未経験で公認会計士になった場合、実務に影響が出ないレベルのスキル・知識を経験者以上の温度感で身につけなければなりません。たとえ就職できたとしても、監査未経験であることは大きなハンデです。周囲との差を埋め、確実なキャリアパスを積んでいきたいのであれば、就職後こそ努力を重ねる必要があるでしょう。

年収が思うように上がらない

公認会計士の年収は一般企業の従業員と比べて高い傾向にあるものの、監査未経験の場合は経験者と比べて給与が下がる可能性もあるでしょう。監査未経験であることがネックになり、初期段階の給与額が低くなると、キャリアを重ねても思ったように年収が上がらないかもしれません。理想とする年収を得るには、やはり経験不足をカバーする努力が重要視されます。

未経験ゆえのプレッシャーや職場適応の課題

未経験で監査法人に就職した場合、多くの人が感じるのが「ついていけるか不安」「周囲に迷惑をかけていないか」というプレッシャーです。実際、監査現場では専門用語やフローの理解が必要で、習得には一定の時間がかかります。また、チームで動く環境に慣れていないと、職場の空気やスピードに戸惑うことも。大切なのは、完璧を目指さず、分からないことは早めに聞く、周囲のアドバイスに素直に耳を傾ける姿勢です。未経験者だからこそ、学ぶ姿勢が一番の武器になります。

まとめ

最後に、今回の記事の内容をまとめてご紹介します。

  • 公認会計士は監査未経験でもなれるが、資格を有しておく必要がある
  • 公認会計士の就職市場は「売り手市場」である
  • 監査未経験で公認会計士になるのであれば税務やITの理解、語学力が重視される
  • 監査法人への就職は年齢の壁がある
  • 監査未経験で就職した場合の待遇やキャリアは経験者と比べて若干異なる
  • 監査未経験で公認会計士になるには求められている人材の傾向を理解すべき
  • 競争率の高い監査法人をあえてターゲットにする必要はない
  • 監査未経験で公認会計士になるのはキャリアパスや年収の視点でリスクがある

公認会計士は監査未経験でも就職できるものの、資格取得が前提になったり、無資格をカバーできるほどの実務経験が必要だったりします。経験者と比べて就職後のハードルも高く、そればかりか監査未経験者をそもそも募集していない監査法人もあるかもしれません。

監査未経験の状態で公認会計士を目指したい方は、下記を参考にしてみてください。

参考:日本公認会計士協会