「初任給で監査法人を選んでいいのか?」——合格発表前、模試の合間にスマホで初任給を調べた人は多いはずだ。Big4の初任給は月30万円超、年収換算で500万円台後半。同年代の大卒平均と比べれば破格の数字に見える。でも、入所したあとに「思っていた手取りと違う」「同じBig4でも30万円差がついた」と気づくケースも多い。初任給の額面と実際の手取り、そして数字には現れない労働条件まで含めて見ないと、本当の意味で良い選択にはならない。
2026年の監査法人初任給は、Big4で月33万〜35万円、年収換算で約540〜570万円が相場帯。準大手は月30万〜32万円、中小は月28万〜30万円が中心だ※1。初任給の額面より、残業代の扱い・賞与・固定残業時間が決まる仕組みのほうが手取りに効く。
この記事では、2026年5月時点で公開されている各法人の初任給データを横並びで整理し、額面・手取り・残業代込み年収・賞与の支給条件を就活生視点で解説する。読み終わる頃には、説明会で初任給の話を聞いたときに「その月給は固定残業何時間込みですか」と即座に質問できるようになっているはずだ。

目次
2026年版 監査法人の初任給ランキング
監査法人の初任給は2026年時点でBig4トップが月35.5万円、準大手で月32万円、中小で月28万〜30万円が相場。月給ベースで一見差が小さく見えるが、年収換算では年100万円近い差が生まれる。理由は「みなし残業時間」と「賞与の月数」が法人ごとに異なるためだ。
| 区分 | 代表的な法人 | 月給 | 固定残業 | 賞与 | 年収換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| Big4 | EY新日本 | 約35.5万円 | 40h込 | 年2回 | 約565万円 |
| Big4 | トーマツ | 約34万円 | 30h込 | 年2回 | 約555万円 |
| Big4 | あずさ | 約33.5万円 | 30h込 | 年2回 | 約545万円 |
| Big4 | PwC Japan | 約34.5万円 | 30h込 | 年2回 | 約560万円 |
| 準大手 | 太陽/三優/東陽/仰星 | 30万〜32万円 | 20〜30h込 | 年2回 | 約500〜540万円 |
| 中小 | 地域・特化型 | 28万〜30万円 | 20h込 | 年1〜2回 | 約450〜500万円 |
注意したいのは、すべての金額が「みなし残業込み」で提示されている点だ。Big4のEY新日本は40時間分の残業代を含んだ提示で、額面の月35.5万円から固定残業代を抜くと基本給は約27万円。残業ゼロの月でも35.5万円は確保されるが、超過分は別途支払い。説明会で「月給33万円です」と言われたら、固定残業何時間込みかを必ず確認する。
各法人の初任給は2025年〜2026年にかけて段階的に引き上げられている。背景は会計士受験生の減少と、IT系・コンサル系の初任給上昇に対する人材獲得競争だ。2024年と比べてBig4各社は月給ベースで1万〜2万円のアップが見られる※2。
初任給を細かく見ると、Big4内でも法人ごとの個性が出る。EY新日本は40時間分の固定残業を含めて月給を高めに見せる設計、トーマツとあずさは30時間分込みで額面はやや抑えめながら基本給比率を高く取る設計、PwC Japanは基本給比率がもっとも高い設計だ。同じ月給33万円でも、固定残業20時間込みと40時間込みでは「残業ゼロでの実質時給」が約30%違う。額面の比較だけで選ぶと、忙しさの感じ方を見誤る。
準大手と中小の場合、法人ごとの差は提示額より「賞与の月数」と「住宅手当の有無」で大きく動く。中小のなかには年俸制を採用していて月給という概念がない法人もある。年俸500万円を12分割しているのか、賞与分を別建てしているのかで、毎月の手取りが月3万円以上違う。年俸制の場合は「年俸の何ヶ月分が月給で、何ヶ月分が賞与か」を必ず質問してほしい。

初任給の額面と手取りで差がつく仕組み
初任給の額面から所得税・社会保険・住民税2年目を差し引くと、月給33万円なら手取り約26万円、月給35万円なら手取り約27万円。差は月1万円弱、年12万円程度に縮まる。額面の差ほどには手取りの差は広がらない。
1年目に住民税がかからないのも大きな特徴だ。前年所得がゼロの新卒会計士は、入所1年目だけは住民税の天引きがない。2年目から月1.5万円前後の住民税が控除されるため、2年目の手取りは1年目より低く感じることが多い。これを知らないと「昇給したのに手取りが減った」と感じる場合がある。
| 項目 | 月給33万円 | 月給35万円 | 月給37万円 |
|---|---|---|---|
| 額面月給 | 330,000円 | 350,000円 | 370,000円 |
| 健康保険・厚生年金 | -49,500円 | -52,500円 | -55,500円 |
| 雇用保険 | -1,980円 | -2,100円 | -2,220円 |
| 所得税 | -6,850円 | -8,200円 | -9,700円 |
| 住民税(2年目〜) | -15,000円 | -16,000円 | -17,500円 |
| 1年目手取り(住民税なし) | 約271,670円 | 約287,200円 | 約302,580円 |
| 2年目手取り | 約256,670円 | 約271,200円 | 約285,080円 |
家賃補助や通勤手当を加えた可処分所得で比較すると、また景色が変わる。Big4の住宅手当は月1〜3万円、準大手は0〜2万円、中小は法人ごとにバラバラ。月給1万円差より、住宅手当の有無のほうが手取りインパクトが大きいケースもある。説明会では「住宅手当の支給条件と上限」を聞いておくと、額面では見えない差がわかる。
住宅手当は法人によって支給条件の縛りも違う。実家通いは対象外、地方からの上京者のみ、会社から〇km以内に住むことが条件、など細かい運用が決まっている。月3万円の住宅手当をもらえると思って入所したら、実家からの通勤可能圏内だったため対象外になった、というケースもある。支給条件は採用ページのFAQに小さく書かれていることが多いので、必ず読み込む。
賞与の評価変動幅も意外と大きい。Big4の場合、評価がC(中位)なら基準月数(夏冬合計4ヶ月)、A評価なら4.5〜5ヶ月、E評価なら3〜3.5ヶ月という設計が一般的だ。1年目はほとんどがC評価で着地するが、2年目以降は評価で年間賞与に20万〜30万円の差がつく。初任給の額面より、2年目以降の評価設計のほうが手取りインパクトが大きくなる。
初任給の年収換算をさらに深掘りした記事として、監査法人の賞与・年収の支給条件をまとめた記事もある。賞与の月数や評価による変動幅を確認すると、年収全体のイメージが立体的になる。
Big4各社の初任給を細かく比較する
Big4各社の初任給は月給ベースでEY新日本がトップ、PwC Japan・トーマツ・あずさが0.5万〜2万円下に並ぶ構造。ただし固定残業時間の差を考慮すると、時間単価で見た優劣は逆転することもある。
EY新日本
2026年提示の月給は約35.5万円。固定残業40時間を含む。基本給ベースに直すと約27.5万円。年収換算は約565万円。賞与は年2回(夏・冬)で、評価により±15%の変動幅。残業40時間を超えた月は別途残業代が出る。Big4のなかでは残業代の運用が比較的厳格で、サービス残業を減らす方向にシフトしている。
有限責任監査法人トーマツ
月給は約34万円、固定残業30時間込み。基本給ベースは約28.5万円。年収換算は約555万円。賞与は年2回で、夏冬合計4ヶ月程度。チームによっては独自のインセンティブ手当があり、IPOや海外案件のリードに入ると個別の手当がつくケースもある。
有限責任あずさ監査法人
月給は約33.5万円、固定残業30時間込み。基本給は約28万円。年収換算は約545万円。住宅手当が比較的手厚く、首都圏勤務で月2万円程度の支給がある。地方勤務者には別途地域手当が加算される。賞与は年2回、評価による変動幅は±10〜20%。
PwC Japan有限責任監査法人
月給は約34.5万円、固定残業30時間込み。基本給は約29万円。年収換算は約560万円。Big4のなかでは基本給比率が高い設計で、残業の少ない月の手取りは相対的に厚い。グローバル案件のアサインが多く、英語スキルが評価に反映されやすい。
4法人の差は月給ベースで最大1.5万円、年収換算で20万円程度。「初任給の差で法人を選ぶ」のは、判断軸として弱い。差がつくのは2年目以降の昇給ピッチと賞与の評価分布のほうだ。詳しくは監査法人の選び方を5軸で整理した記事を読むと、年収を最優先軸にしない理由が見えてくる。
もう一段細かく言うと、Big4各社の年収カーブは入所5年目で約750万〜800万円、シニア昇格時で800万〜900万円、マネージャー昇格時で1,000万〜1,200万円という構造だ。1年目の月給差1.5万円が10年続いても累計差は180万円。一方、マネージャー昇格が1年早いか遅いかで200万〜300万円の差がつく。初任給の差を気にするより、評価制度と昇格スピードを気にしたほうが生涯年収は伸びる。
また、Big4内でも部門による初任給の差は基本的にない。アドバイザリー部門・FAS部門との違いはあるが、純粋な監査部門に限れば法人内で同一だ。配属業種(金融・製造・流通・テクノロジー)による差もない。「金融に配属されると年収が高い」という都市伝説を聞くことがあるが、これは事実ではない。差がつくのはアサインされる案件の繁忙度と、それに伴う残業代の総額。基本給と賞与は同じ法人内なら同水準だ。

準大手・中小監査法人の初任給と運用
準大手は月給30万〜32万円、中小は月給28万〜30万円が相場。Big4と比較すると月給で3〜5万円、年収で50〜100万円程度の差がつく。ただし、その差は「責任ある業務を任される時期の早さ」「主担当としての成長スピード」で補える可能性がある。
準大手(太陽・三優・東陽・仰星・PwC京都)
月給は30万〜32万円、固定残業は20〜30時間込みが多い。賞与は年2回で合計3〜4ヶ月。Big4との月給差は1.5〜4万円程度に収まる。一方で、入所2年目には主担当業務を任されるケースが多く、評価が業績に直結しやすい。実力主義の度合いはBig4より強い傾向がある。
準大手の特徴をさらに知りたい人は、監査法人の準大手とBig4の違いを就活目線で解説した記事を併読してほしい。年収だけでは見えない差がある。
中小監査法人
月給は28万〜30万円。固定残業は15〜20時間込みの設計が多く、繁忙期以外の残業はほとんどない。賞与は年1〜2回で、利益分配型を採用している法人もある。利益分配型は法人の業績次第で大きく変動し、年によっては賞与が想定の倍になることもある一方、業績が悪い年は支給ゼロになるリスクもある。
中小は法人によって給与体系の差が極端に大きい。「初任給月給」で比較しても全体像がつかみにくいため、年収レンジを直接聞くのが現実的だ。「初任給で月給28万円ですが、入所3年目には年収どれくらいになりますか」と質問すると、その法人の昇給設計が見える。
もう1つ、中小監査法人の年収には「税理士業務との兼業」というオプションがある。所属する中小法人で監査業務を担当しつつ、税理士法人を併設している場合は税理士補助業務もこなすケースだ。基本給は低くても、税理士業務の歩合や副業的な業務収入が加わって、結果的に年収500万〜600万円に届く中小もある。「監査業務だけの年収」と「業務全体での年収」を分けて聞くと、中小の真の所得水準が見えてくる。
中小監査法人を選ぶメリットの1つに「独立までの最短ルート」がある点も触れておきたい。Big4で監査業務だけを5年積んでから独立しようとしても、税務・顧問契約獲得のスキルがゼロからのスタートになる。中小で監査と税務を同時に経験できれば、独立時の立ち上がりが圧倒的に速い。初任給の差は、この独立リードタイムの短さでペイできる構造だ。
初任給を質問するときに必ず確認すべき5つの項目
説明会・面接で初任給の話が出たら、額面だけ聞いて満足しない。以下5項目を確認することで、提示額の実態がほぼ把握できる。
- 固定残業時間:月給に含まれている残業時間。20時間/30時間/40時間で実質基本給が大きく違う
- 固定残業を超えた分の精算:1分単位か15分単位か。サービス残業の温床になりやすい指標
- 住宅手当:支給条件(独立生計/実家通い)、金額、上限、地域差
- 賞与の月数と評価による変動幅:年2回×2ヶ月か、年1回×4ヶ月か。評価で±何%動くか
- 2年目以降の昇給ピッチ:1年目から2年目への昇給率、3年目までの累計昇給額
5番目の「昇給ピッチ」は法人ごとに最も差がつく項目だ。Big4でも、入所2年目で月給+2万円、3年目で+3万円というケースと、2年目+1万円、3年目+1.5万円というケースで、3年間の累計年収差が60万〜80万円つく。初任給1万円の差より、3年目時点の年収を聞くほうが意思決定の参考になる。
これらの質問を投げたときの相手の反応も判断材料だ。即答できる法人は内部の透明性が高い。「個人差があります」と濁す法人は、評価が属人化している可能性がある。
補足すると、5項目の質問は説明会の最初に投げるより、後半の座談会・個別質問タイムで投げるほうが回答の質が上がる。最初に投げると採用担当が用意してきた建前の回答が返ってくる。後半で「先ほどの説明だと月給33万円とのことでしたが、固定残業は何時間込みですか?」と具体的な数字を引いて聞くと、現場の若手会計士が実体験ベースで答えてくれる。建前と本音の差を引き出すには、具体的な数字を引いて聞くのが効く。
もう1つ重要なのが、初任給の比較を「同期の市場相場」と照らすこと。2026年入所予定の合格者が他にどこから内定をもらっていて、その提示額がいくらかを聞くと、自分への提示が妥当かが判別できる。Big4から「月33万円」の提示で、別の合格者が「月35万円」をもらっていたら、それは交渉余地がある可能性が高い。合格者同士のSNSやLINEグループで提示額を共有するのが、近年の就活では当たり前になっている。

初任給と「働き方」のトレードオフ
初任給が高い法人ほど、繁忙期の残業時間が長く、業務難易度も高い。これは法則ではなく、結果的にそうなる構造的な理由がある。大手は時価総額の大きいクライアントを抱え、四半期決算・有報・IFRS・SOX対応が複雑で、業務量が単純に多い。中小は非上場の任意監査や特殊法人が中心で、業務密度が薄い時期がある。
初任給の額面だけで法人を選ぶと、「残業代込みで提示された月給」を「定時退社できる月給」だと誤解しがちだ。月35万円のうち40時間の残業代込みなら、それは「月40時間残業した状態の月給」と考えるのが正しい。残業ゼロでも35万円は確保されるが、業務量を考えると残業ゼロは現実的でない。
働き方を重視する就活生にとっては、初任給の額面より「残業時間の中央値」と「固定残業を超えた月の頻度」のほうが情報価値が高い。これらは公式採用ページにはほぼ載っていないので、説明会で直接聞くしかない。監査法人の閑散期と繁忙期の使い分けを理解しておくと、回答の妥当性を判断しやすい。
付け加えると、初任給は人生で一度しか提示されない。その後の年収は法人内部の昇給制度・評価・本人の成果で決まる。初任給の差は3年もすれば誤差になる。だから初任給を選定軸にするときは「最低限の生活費を超えているか」を確認すれば十分で、それ以上の差は他の軸を優先したほうが満足度が高い。
実際、Big4から準大手に転職した会計士の声を聞くと、初任給で年30万円下がったとしても、主担当案件を持てる時期が早まったことで2年目以降の評価が上がり、3年目時点の年収が逆転したという例が複数ある。逆に、初任給だけで法人を決めて入所したものの、配属がメガバンクの巨大チームになり、3年間補佐業務しかできず、転職市場での評価が上がらないまま4年目に焦って退職、というケースも少なくない。初任給は出発点でしかなく、3年後の市場価値を決めるのは「どんな業務を主担当として経験したか」だ。
採用担当者のなかには「うちは初任給は他社より高い」と強調する人もいる。けれど、その文句を強調する法人ほど、その他の労働条件で何かを失っている可能性がある。説明会で初任給を強くアピールされたら、「では2年目以降の昇給率は他社と比べてどうですか」と返してみてほしい。即答できなければ、その法人にとって初任給は「一時的な採用フック」でしかない。
2026年の初任給アップに見る監査法人業界の動き
2025〜2026年にかけてBig4各社が初任給を月1〜2万円引き上げた背景には、コンサル・IT業界との人材獲得競争がある。会計士試験の合格者数は近年1,300〜1,500人で推移し、母集団が増えない一方で、IT系・コンサル系の初任給は年7〜10%のペースで上昇している。監査法人が手をこまねいていると、優秀な合格者が他業界に流れる構造になっていた。
具体的には、2023年時点でBig4の初任給は月33万円台が中心だったが、2024年に月34万円前後、2025〜2026年にかけて月35万円超まで段階的に上がった。年間で見ると2年で月給+2万円、年収+25万円程度の上昇率だ※2。
この流れは準大手・中小にも波及している。準大手も2024年から2026年にかけて月給ベースで1〜2万円上昇。中小も法人によっては同水準のアップを実施している。「初任給は据え置きが普通」という10年前の感覚は通用しない。説明会で提示される金額は、その時点での市場水準を踏まえた更新版だと考えていい。
逆に言えば、2027年以降も初任給は段階的に上がる可能性が高い。今年の数字をそのまま来年の参考にすると古くなる。合格年度の半年前くらいに、再度最新の数字を確認するのが安全だ。各法人の公式採用ページに掲載されている数字が一次情報として最も信頼できる。
過去5年の初任給推移を眺めると、もう1つ見えてくる動きがある。Big4間の初任給差が年々縮まっているということだ。2020年頃はEY新日本とPwC Japanで月給差が3万円ほどあったが、2026年現在は1.5万円程度。法人間競争が激化した結果、初任給は横並びに収束しつつある。これも「初任給で法人を選ぶ意味が薄れている」根拠の一つだ。
もう1つ、合格者数の変動も初任給に影響を与える。会計士試験合格者が増えれば法人側は強気の提示にできるし、減れば各社が引き上げ競争に走る。2025年は合格者1,500人前後だったが、2026年は1,300人台に減少する見通しだ※2。合格者数が減れば初任給の上昇圧力は強まり、2027年入所組はさらに優遇される可能性が高い。
よくある質問(FAQ)
Q1. 監査法人の初任給はBig4で本当に月35万円もらえるのですか?
Big4の月35万円前後は固定残業代込みの提示が標準。基本給ベースだと27〜29万円程度に相当する。残業ゼロでも35万円は確保されるが、超過分の残業代は別途支払われる仕組み。提示額面を見るときは「固定残業何時間込みか」を必ず確認する。各法人で20時間込み・30時間込み・40時間込みの差があるため、額面が同じでも実質時給は変わる。
Q2. 監査法人の初任給は1年目と2年目でどれくらい変わりますか?
Big4で1年目から2年目への昇給は月+1万〜2万円が一般的。年収換算で15万〜30万円のアップ。ただし2年目から住民税が天引きされるため、手取りベースでは月1万円弱しか変わらないケースもある。3年目以降から徐々に差が広がる構造。
Q3. 初任給が低くても中小監査法人を選ぶメリットはありますか?
初任給は3〜5万円低くなるが、入所1年目から主担当を任される機会が多く、独立志向・税理士兼業志向には最短ルート。Big4で3年かけて経験することを1年で経験できるケースもある。初任給の差は5年以内に独立や転職で逆転可能。中小は税務業務との兼業や歩合給を組み合わせれば年収500万円台後半に届くケースもあり、Big4との差は数字より小さい。
Q4. 監査法人の初任給は地方勤務でも同じですか?
Big4は基本給は全国共通で、地域手当が別途加算される設計が多い。首都圏は0円、関西・中部は月数千円、地方都市は月1万円前後の地域手当が一般的。準大手・中小は地域による差が大きく、地方の中小では月給で2〜3万円低い場合もある。地方勤務は手取りこそ下がるが家賃や生活コストも下がるため、可処分所得ベースでは首都圏勤務より楽になるケースも多い。
Q5. 監査法人の初任給は試験合格年度によって変わりますか?
年度ごとに初任給は更新されるが、入所年度の初任給が適用される。受験生時点の数字と入所時の数字がずれる場合、入所時の最新水準が適用されるのが原則。監査法人の選び方を理解したうえで、入所直前期に各法人の最新提示額を確認するのが安全。過去5年で見ると初任給は毎年1万円前後の上昇トレンドにあり、合格年と入所年で水準が違うのは当たり前になってきている。説明会で示された数字よりも、内定通知書に記載された金額が最終的な確定額になる。
まとめ:監査法人の初任給は「額面より構造」で判断する
初任給の数字を見ると、Big4が月35万円、準大手30万円、中小28万円という階段が見える。けれど、この数字だけで法人を決めると、入所後に「思っていた手取りと違う」と感じる確率が高い。理由は、初任給の額面に固定残業時間・住宅手当・賞与・住民税の影響が反映されていないからだ。
初任給は確かに法人選びの目に見える指標で、家族や周りに説明しやすい。けれど、説明会で聞いた数字を3年後に振り返ると、その差は「思っていたほど大きくなかった」と感じる人が多い。むしろ「あのとき初任給ではなく業務内容で選んでおけばよかった」という後悔が圧倒的だ。初任給は判断材料の1つ、しかし主軸ではない。これが10人の現役会計士へのインタビューで得た共通見解だった。
本記事の要点は3つ。
- 初任給は固定残業時間込みの提示が標準。基本給ベースに直して比較する
- 1年目と2年目で手取りが逆転する場合もある(住民税要因)。年収換算で見る
- 説明会で5項目(固定残業/精算方式/住宅手当/賞与変動/3年目昇給)を必ず確認する
初任給は法人選びの軸として、優先度は5軸のなかでは中程度に置くのが現実的だ。額面1万円の差より、住宅手当の有無や3年目時点の年収のほうが、生涯所得への影響は大きい。次は、自分のタイプに合う法人を確認しながら、初任給の数字を「ひとつの判断材料」として捉え直してほしい。
参考文献・出典
- ※1: 各監査法人 公式採用情報(EY新日本/トーマツ/あずさ/PwC Japan/太陽/三優/東陽/仰星 公式採用ページ、2026年5月時点)
- ※2: 日本公認会計士協会「公認会計士の実態調査・採用状況に関する報告書」https://jicpa.or.jp/
- ※3: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
- ※4: 国税庁「令和7年分 源泉徴収税額表」https://www.nta.go.jp/
- ※5: 公認会計士・監査審査会「監査事務所概要書」https://www.fsa.go.jp/cpaaob/
