公認会計士の職業は、時代の変化と共に大きな転換点を迎えています。
チャットGPTに代表されるAI技術が急速に社会に浸透し、会計業界にも変革をもたらしており、公認会計士の仕事内容やキャリアパスに大きな影響を与えているためです。
この記事では、AI技術が公認会計士にもたらす影響やキャリアパスの可能性、直面する課題や将来展望について紹介します。
技術革新の波に乗って将来のキャリアをどのように築くべきか、現状の分析と将来への展望を解説しますので、最後までご一読ください。
目次
公認会計士の現状と将来性は?
公認会計士を取り巻く環境は日々激しさを増しています。また、AI時代の本格的な到来で、今後のキャリアパスに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
下記で、公認会計士の現状と将来性を見ていきましょう。
公認会計士の現状
公認会計士は、監査法人を中心に活躍し、監査や財務会計の重要な役割を担う職業です。
主要な業務として、
- 監査
- 税務
- コンサルティング
- 組織内会計士
の4種類があります。
公認会計士は、監査法人をはじめとする多様な場で活躍し、信頼性のある経済社会を支える専門性を有しています。主な業務としては、独立した立場からの監査業務があります。具体的には、法律で定められた法定監査とそれ以外の任意監査です。法定監査では、金融商品取引法や会社法に基づく監査を行い、企業の財務報告の信頼性を確保します。
税務業務では、税理士登録により税務代理、税務書類の作成、企業再編や国際税務支援などを通じ、企業の税務をサポートします。
また、コンサルティング業務では、経営戦略の策定から組織再編、システムコンサルティングに至るまで幅広いサポートを行います。そして、組織内会計士として一般企業や公共団体、教育機関等において、経理や財務、IR、プロジェクト業務を担当し、組織の経営基盤の強化で活躍する場合もあります。
ただ一方で、業界全体はチャットGPTなど先端技術の進歩やグローバル化の影響を受け、公認会計士の業務やキャリア形成も変化の波にさらされています。
特にデジタル化やAIの導入などDX戦略が加速度的に普及する中、会計業務の自動化で監査プロセスはこれまでとは比較にならないほど高度に効率的かつ効果的なものへと変貌しています。
一例として、ビッグデータの活用により公認会計士は非常に広範なデータセットを分析し、監査の質を高める業務が可能になってきました。
また、国際的なビジネスの拡大により、多国籍企業の複雑な財務構造を理解し、多様な会計基準に精通する公認会計士の存在が一段と必要性を増しています。
このように、公認会計士として活躍するには、革新的な技術やグローバルな視点を取り入れ、継続して自身のスキルをアップデートしなければなりません。
AI技術による公認会計士への影響
AIとテクノロジーの進化により、公認会計士の業務はかつてないほど変化を見せています。
人類が経験したことのない技術革新が続き、公認会計士の仕事の方法や業務範囲へ大きなインパクトを与えると共に、未来の仕事内容やキャリアパスの情景を一変させる可能性があります。
まず、ビジネスシーンにおけるAIの導入により、データ分析と監査プロセスがハイレベルに効率化されています。例えば、AIを活用した監査ツールの登場で、人的リソースも必要だった大量のデータ分析がスピードアップし、異常やリスクを正確にピックアップ可能です。結果として、公認会計士はこれまで時間がかかっていたデータ業務から解放され、より戦略的な分析やアドバイザリー業務に集中できるようになります。
次に、AIは会計業務の精度を向上させる役割も果たしています。一例として、財務状況の未来予測やリスク評価をAIを利用した予測分析で行うと、より正確な評価ができます。AIによる評価を活用しながら公認会計士の経験とスキルを活かしクライアントに対し、より有益なアドバイスが可能です。
一方で、AIの進化により、公認会計士は最新技術に対応する新たなスキルの習得が必要と言えます。AIや機械学習に関する知識、データサイエンスの基礎、テクノロジーに対する理解など、今後の公認会計士には加速するAI時代に適用し続けるスキルアップが不可欠です。例えば、AIが生成したデータの解釈や、AIデータに基づく意思決定をする際、より深い専門知識と分析能力が求められます。
こうした劇的な変化を踏まえると、未来の公認会計士はAIとの共生を前提とし、過去に類のないワークスタイルへの進化が予測できるでしょう。
AIがこれまで人が行っていた単純作業を代行する一方で、公認会計士にはより複雑な分析や戦略的なアドバイス、クライアントとのコミュニケーションといった役割への期待が高まり、かえって業界内や公認会計士間での競争が激化する未来も有り得ます。
このように、AIの進化を通じて公認会計士にはかつてない競争が生まれるものの、キャリアの可能性において新たなチャンスをもたらす時代がやって来るでしょう。
公認会計士の将来性は明るい?暗い?
公認会計士の将来性を暗いとする見方もあります。「公認会計士なんて将来性があやしいからやめとけ」と言われて悩んだ経験のある方はいませんか?
ただ、今後予測される業界の変化を踏まえると、実際の所は明るいと判断できます。AIの進化や市場の変化があっても、公認会計士としてのキャリアは依然として価値の高いものだからです。
AIによる効率化が現場で進むと、公認会計士は現在のルーティンワークから解放されます。結果として、本来公認会計士の重要な業務である経営戦略の策定やリスク管理、コンサルティング業務など、より複雑で判断力を要する領域に注力できるようになります。公認会計士の独自性を発揮し、クライアント企業の方向性に大きく影響を与えるクリエイティブな業務へとシフトしていくでしょう。
さらに、法規制の変化や経済のグローバル化に伴い、公認会計士の専門知識がより一段と重要になっています。特に国際的な会計基準の適用、税法の変化、企業の国際展開など、複雑化するビジネス環境において公認会計士の専門性は必要不可欠です。
ただ、一方で、公認会計士が直面する挑戦も存在します。AIやテクノロジーに対応するための学習とスキルアップは将来の公認会計士の必須条件と言えるでしょう。積極的に新しい技術の習得を通じてデータ分析能力を向上させ、経営戦略への理解を深め、公認会計士が持つべきスキルセットを拡大させていく努力が必要です。
結論として、技術の進化に適応し、専門知識を深め、新しいスキル獲得を前提とすれば、公認会計士の将来性は非常に明るいものと言えます。反面、時代の変化へのフォローが遅れると、キャリアの見通しは暗くなる可能性もあるでしょう。
したがって、公認会計士としての将来性が明るいか、暗くなるかは、個々の持つ変化に適応する能力と努力に大きく依存すると考えられます。
参照:『FOR OUR FUTURE(2023年度版)』(PDF)|日本公認会計士協会
これからの公認会計士のキャリアパス
公認会計士と監査法人を取り巻く環境は今後大きな変化が予想される中、これからの公認会計士のキャリアパスで大切なポイントを見ていきましょう。
多様なキャリア選択肢
公認会計士のキャリアパスは非常に多岐にわたります。
これまで一般的だった監査法人に入所後、段階的にキャリアを積むスタイルだけでなく、経験やスキル次第では大企業の最高財務責任者(CFO)や財務部門のリーダーとしての道もあります。
また、企業をクライアントとする経営戦略やリスク管理に関するコンサルタントとしての道も開かれています。
そして、専門知識を活かし公認会計士としての独立開業やスタートアップ企業やベンチャー企業への参画といった選択肢も増えています。
AI時代に求められる公認会計士のスキル
AI時代の公認会計士には、従来の会計・監査技能はもちろんのこと、より高度なデータ分析能力やテクノロジーへの理解が求められます。
特に、AIや自動化ツールを活用した効率的な業務処理や、ビッグデータを用いたインサイトの提供を前提とし、ビジネスのDX戦略をリードするレベルの高度な戦略的思考が不可欠です。
今後、公認会計士として生き残るためには、新たな時代が求めるスキルセットの獲得を通じてAI時代における競争力を高める必要があります。
転職市場での需要と動向
転職市場では、公認会計士の専門知識とスキルは引き続き高い需要があります。
とりわけ、AIやテクノロジーに精通し事業のDX化を推進できる能力を持つ公認会計士を多くの企業が必要としており、活躍の場が広がっています。
新たな技術や規制の変化に対応する能力、経営層とのコミュニケーション能力、ステークホルダーの利害を踏まえた戦略的思考が求められる中で、転職市場の動向も多様化しているのが実情です。
そのため、公認会計士が自分のスキルや実績に見合ったキャリアアップにチャレンジするケースも多く見られます。
公認会計士の仕事はAIに代替される?
公認会計士の仕事はAIに代替されるのか?この疑問は、急速に進化するAI技術の中で、特に公認会計士を目指す方々にとって重要なテーマです。AIが業務に与える影響は避けられない現実ですが、公認会計士としての価値が完全に失われるわけではありません。
ここでは、AIが代替できる業務、その範囲、そして公認会計士がAIと共存するための戦略と役割について解説します。
AIが代替できる業務とその範囲
AIの強みは、大量のデータ処理や定型的なタスクの効率化にあります。例えば、帳簿突合や仕訳の自動化、分析的手続などの定型業務は、AIが得意とする領域です。これらの業務は、規則に従って機械的に処理されるため、AIが高速かつ正確にこなすことができます。特に、監査業務においては、証憑の確認や仕訳チェックなど、膨大なデータを処理する作業がAIにより効率化される可能性が高いです。
これにより、AIは公認会計士が関わるルーチンワークの一部を担い、業務の効率化を図ることができます。
公認会計士がAIと共存するための戦略
AIが一部の業務を代替する一方で、公認会計士が生き残り、さらに価値を提供するためには、AIと共存する戦略が必要です。
まず、公認会計士はAIが担えない領域、すなわち人間的な判断が求められる業務に注力することが求められます。例えば、クライアントとのコミュニケーションや、複雑な意思決定をサポートする役割がますます重要になります。また、AIを活用したデータ分析や異常検知の結果を踏まえ、最終的な判断を下す役割も公認会計士の専門性が求められる場面です。さらに、AIの進化に対応するために、ITスキルやデータサイエンスの知識を身につけることも重要です。
これにより、公認会計士はAIツールを効果的に活用し、業務効率を向上させると同時に、より高度な業務に専念できるようになります。
AI時代における公認会計士の役割とは
AI時代において、公認会計士の役割は、従来の監査や会計業務にとどまらず、より広範なビジネスアドバイザーとしての役割が期待されます。AIが定型業務を担うことで、公認会計士は戦略的な意思決定やリスク管理、そしてクライアントのビジネス成長を支援する業務に注力できるようになります。例えば、AIを用いたビッグデータ分析の結果をもとに、企業の未来予測や経営戦略の提案を行うことができるでしょう。
また、AIが処理できないイレギュラーな事態や、新しい法規制への対応など、柔軟な対応が求められる場面でも、公認会計士の専門知識と経験が不可欠です。
さらに、クライアントとの信頼関係の構築や、倫理的な判断を下す場面では、AIには代替できない人間的な判断力が重要な役割を果たします。
結論として、公認会計士の仕事はAIによって一部代替されるものの、完全に取って代わられることはありません。むしろ、AIを活用することで、公認会計士はより付加価値の高い業務に集中でき、ビジネスの重要なパートナーとしての役割を強化することが期待されています。AI時代においても、公認会計士の将来性は依然として明るく、その役割はますます重要となるでしょう。
公認会計士が直面する課題と将来展望
公認会計士が今直面している課題と将来の展望を見ていきましょう。
AI化に伴う業務の変化
AI技術の進歩により、公認会計士が手作業で行っていた事務作業が自動化され、業務の質の向上がより一層求められるようになりました。
たとえば、伝票の入力や照合、基本的な数値分析などが代表例です。
したがって、公認会計士はデータの分析や戦略的なアドバイスなど、クライアントの事業や経営方針に深く入り込み、より複雑で高度な業務に注力し数字を上げる職業へとシフトしていくでしょう。具体的には、テクノロジーを活用できるようになった結果、従来の単純な財務報告を超え、高度なビジネスインテリジェンス(BI)や予測分析が可能になっています。一例として、過去の財務データから未来の市場動向を予測する、AIベースの予算策定ツールの使用などが挙げられます。
こうした先進テクノロジーにより複雑なデータセットから有意義な視点をクライアントに提示し、経営戦略に反映させる役割がより一段と求められています。
業務の自動化にどう対応するか
自動化技術を理解し日常業務に取り入れる努力を通して、より価値の高い分析や戦略的なアドバイスのクオリティを高める成果を出す必要があります。
AIや自動化の波にどう対応するかが、これからの公認会計士にとって重要な課題です。たとえば、ブロックチェーンやクラウドベースの会計システムへの理解をベースとした効率的な監査手法の開発スキルなどが、今後の公認会計士に必要とされるスキルです。
そして、データを活用した戦略的なビジネスパートナーとしての役割を果たし、クライアントのビジネスモデルの革新を実現できるかどうかも、公認会計士として将来のキャリア形成を大きく左右するでしょう。
AI時代におけるキャリア形成とは
AI時代が加速すると公認会計士に求められるスキルセットが大幅に変化します。データ分析やビジネス戦略、マーケティング等に関する業界ごとの深い知識を貪欲に吸収し、新しい時代に適応できるスキル習得がキャリアの成功に重要です。
また、マーケティングや経済学など、監査業務以外に自分の専門分野外の知識を身につけると、より幅広い業務に対応できます。たとえば、製造業やサービス業など、特定の業界に特化した知識を吸収し、その業界に特有のビジネスモデルやリスクへの理解を通じて、より有益な業務につながるでしょう。
このように、変化する業界環境で長く活躍するため、公認会計士は急速に進む環境変化に柔軟に対応し従来の会計知識やスキルに加えて新たなスキルセットを拡大していく必要があります。
参照:『AI 等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響』(PDF)|日本公認会計士協会
公認会計士の市場動向と未来の働き方
公認会計士の市場動向と未来の働き方について考察することは、これから公認会計士を目指す人や、現在活躍している公認会計士にとって非常に重要です。市場動向を把握し、今後のキャリアをどう築いていくかを見極めるためにも、
ここでは、公認会計士の活躍の場が広がる理由、監査業務の変化と将来の展望、そして注目される新たな業務領域について詳しく解説します。
公認会計士の活躍の場が広がる理由
公認会計士の活躍の場が広がっている背景には、ビジネス環境の変化や企業のニーズの多様化があります。特に、企業がグローバル化する中で、国際会計基準(IFRS)への対応や、内部統制の強化が求められるようになり、公認会計士の専門知識がより重要視されています。
また、近年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、ITの知識を持つ公認会計士が、システム監査やデータ分析の分野で活躍する機会が増えています。
さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大により、企業のサステナビリティ情報の開示が求められ、公認会計士がこれに関与する場面も増えています。
これらの要因が相まって、公認会計士の活動範囲は、従来の監査業務を超えて広がりを見せているのです。
監査業務の変化と将来の展望
監査業務自体も、時代の変化に伴い進化しています。従来の財務諸表のチェックにとどまらず、データ分析やリスク評価など、より高度な専門知識が求められるようになっています。特に、AIやビッグデータ解析の導入により、監査業務の効率化が進んでいますが、それに伴って公認会計士には、新しい技術に対する理解と、それを活用したリスク管理能力が求められます。未来の監査業務は、デジタルツールを駆使したリアルタイム監査が主流となり、企業の財務健全性を常時監視する体制が整う可能性が高いです。
このように、技術革新に対応できる公認会計士が、今後も監査業務の中核を担っていくでしょう。
公認会計士が注目する新たな業務領域
公認会計士が注目する新たな業務領域として、特にコンサルティング業務とM&A(企業の合併・買収)支援が挙げられます。企業のグローバル化や市場競争の激化に伴い、企業再編や新規事業の立ち上げが活発化しており、公認会計士の持つ財務知識と分析力が求められています。
また、ベンチャー企業やスタートアップに対する支援も増加しており、資金調達やIPO(新規株式公開)の準備において、公認会計士の役割がますます重要となっています。
さらに、サイバーセキュリティやプライバシー保護といったリスクマネジメント分野でも、公認会計士の知見が期待されています。
これらの新たな業務領域へのシフトは、公認会計士のキャリアの多様化を促進し、従来の監査業務にとどまらないキャリアパスを提供するものです。
総じて、公認会計士の市場動向は、業界の垣根を越えて広がり続けており、将来的にはより多様で高度な業務が求められるでしょう。そのため、公認会計士として活躍するためには、専門知識の深化に加え、新たな分野へのチャレンジ精神とスキルの習得が不可欠です。今後の働き方を見据えて、自身のキャリアを積極的にデザインしていくことが重要となるでしょう。
まとめ
本格的なAI時代が到来した今日、公認会計士の職業で活躍するためには新たな挑戦とチャンスが待っています。
ただ、AI技術の進展により会計業務の自動化や効率化が進む中、公認会計士はこれまで以上に深い専門知識、戦略的思考、柔軟な対応能力が必要です。公認会計士の将来性で重要な点は、AIとの共存そして活用を通じビジネス面でクライアントに新しい価値を提供できる人材になる努力にあります。
ぜひ監査法人で活躍する場合も、公認会計士としての将来性を見据えたキャリア形成を意識して働きましょう。