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監査法人への就職は学歴不問?学歴よりも重視されることとは。大切なスキルの話

求人の募集要項において「大卒以上」などといった学歴の条件が記載されていることがあります。
では、監査法人への就職においては、このような学歴の条件はあるのでしょうか。

そこで今回は、監査法人への就職における学歴の条件に関して、以下の点を解説します。

  • 監査法人への就職は学歴不問なのか
  • 監査法人で学歴よりも重視されること
  • 監査法人で学歴が影響する場面
  • 学歴別でみる公認会計士試験合格者
  • 出身大学別でみる公認会計士試験合格者

公認会計士の資格を取得し、監査法人への就職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

監査法人への就職は学歴不問

一般的に、求人の募集要項に「大卒以上」などの学歴の条件が記載されていることはよくあります。
しかし、監査法人への就職においては、学歴は不問です。

そもそも、公認会計士試験は受験資格がなく、学歴に関係なく受験できます。

そして、公認会計士試験そのものが難易度が高く、その試験に合格している時点で相応の学力があるということになります。

このようなことから、監査法人への就職では、学歴よりも公認会計士試験に合格しているかどうかの方が重要なのです。

とはいえ、公認会計士試験に合格している人の内訳として、大卒が多いのも事実です。
大手監査法人ともなると、有名な大学を卒業している方も多数います。

一方で、専門学校を卒業した人でも、大手監査法人に就職している人はいます。

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公認会計士試験では、大学や大学院での履修単位や論文提出によって試験科目が一部免除される制度があります。
この点においては、大学や大学院で経済学や法学を学んでいる人の方が有利だといえます。

監査法人で学歴よりも重視されること

監査法人では、学歴よりも重視されることが多くあります。
今回は、その中の6つをご紹介します。

英語力

特に大手監査法人のクライアントには外資系の企業も多く、英語力はとても重視されています。
外資系の企業の場合、マネージャークラスの方々とは英語でやり取りを行うためです。

また、パートナーなどへの昇進においても、高い英語力は必須条件です。

近年では、グローバル展開によって国際会計基準を採用する企業が増えています。
これによって、英語の財務諸表などを読む力が公認会計士に求められているのです。

とはいえ、新卒では特に、最初から高い英語力を求められているわけではありません。
入社して公認会計士としての経験を積むと同時に、将来に向けて英語力を高める努力をしておきましょう。

ヒアリング力

監査法人で業務をするにあたって必要とされるのがヒアリング力です。

例えば、監査業務は、基本的に財務諸表などをもとに行いますが、不明点がある場合には追加で調査や説明を求めることもあります。
このときに、必要となる情報を的確に聞き出すヒアリング力はとても重要です。

提出された情報以外にも、必要となる情報を正確に聞き出すことで、正しい監査が行えるのです。


このように、ヒアリング力は直接業務に関係する部分であることから、最も重要な能力であるといっても過言ではありません。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、クライアントとの関係構築において欠かせません。
パートナーともなると、案件受注の役割も担うため、クライアントとの良好な関係構築が必要となります。

学歴によって人脈をつくることは可能ですが、高いコミュニケーション能力によって構築された関係性には深い結びつきが生まれます。

特に、案件受注においては、このような深い結びつきによる人間関係の構築が大変重要です。

また、クライアントとの関係構築だけでなく、社内においてもコミュニケーション能力はなくてはならないものです。

同僚や部下、上司などと円滑に業務を行うには、普段からコミュニケーションを取って良好な関係を築いておかなければなりません。

中には、普段あまりコミュニケーションをとっていなくても業務には支障がない、と考える方もいるかもしれません。

しかし、何でも言い合えたり、相談できたりする関係性である方が、良いチームワークを発揮でき、より良い結果を生み出すことができます。

さらに、ヒアリング力を最大限に活かすためにも、コミュニケーション能力が必要です。

ただ単に、事務的にヒアリングするだけでは、必要最低限の情報しか得られません。
雑談を交えるなどしてコミュニケーションを取り、クライアントに心を開いてもらうことで、ヒアリングもスムーズに進みます。

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コミュニケーション能力は、自分から一方的に話をすることだけを指すのではなく、相手の話を聞く力もコミュニケーション能力の一つです。

経験

監査法人では、経験も重視されるポイントです。
携わってきた業務やそれにおける役割、それによって身につけたスキルもアピールできる強みとなります。

新卒や公認会計士試験に合格したすぐ後では、経験がなかったり少なかったりするのは当たり前です。

しかし、その後に転職する場合や出世を目指している場合などは、どのような経験を積んできたかが重要となるでしょう。

仕事の成果

昇進するにしたがって、学歴よりもどのような成果を上げてきたのかが、より重視されるようになっていきます。

また、任された仕事をやり遂げて成果を出すことは、監査法人に限らず必要なことです。

このような成果を積み重ねることで、上司などからの信頼を獲得でき、会社にとっても居なくてはならない存在となることができます。

マネジメント能力

マネジメント能力は、公認会計士としての経験を積むにしたがって、より必要とされていきます。

最初は、公認会計士としての業務をこなして経験を積むことが必要とされますが、昇進して部下ができると自分の業務以外の管理も必要となってきます。

リーダーシップを発揮するには、人間力を高めて尊敬される人物にならなければなりません。

また、案件受注を担う立場においても、マネジメント能力は必要です。

ランキング上位の監査法人も、マネジメント力の有無を気にされます。

監査法人で学歴が影響する場面もある

監査法人への就職において学歴は不問ですが、学歴が影響する場面が全くないというわけではありません。

例えば採用選考を行う際に、学歴以外は同じ程度の人が2人いたとすると、より高い学歴を持つ方が有利となることがあるでしょう。

また、同じ大卒でも難関大学を卒業している方が地頭が良いと判断されるかもしれませんし、受験勉強における努力も評価対象となるでしょう。

特に、新卒や公認会計士試験に合格してすぐの場合は、これまでの経験や成果がないため、学歴で評価せざるを得ないこともあります。

その他、面接官や採用担当者が同じ大学の出身であれば、話が盛り上がったり親近感がわいたりして採用に前向きになることもあるでしょう。

さらに、近年の公認会計士試験の合格者は、早稲田大学や慶應義塾大学が多く、必然的に公認会計士ではこれらの大学の出身者が多くなります。

同じ大学の出身であれば自然と仲間意識が生まれ、その他の大学の出身者とは仲間意識に差ができることもあります。

大手監査法人のような大きな集団であれば、なおさら仲間との連携が必要となるので、このような仲間意識の強い集団で集まりがちです。

とはいえ、公認会計士は知識や経験が重要となる仕事なので、知識や経験を磨きさえすれば学歴に関係なく必要とされる存在になることができます。

学歴別でみる公認会計士試験合格者

金融庁が公開している、「令和5年公認会計士試験 合格者調」によると、大学別の公認会計士試験合格者は以下の通りです。

学歴合格者数
(人)
合格率
(%)
大学院修了393.9
会計専門職
大学院修了
294.0
大学院在学1510.9
会計専門職
大学院在学
178.7
大学卒業
(短大含む)
6707.5
大学在学
(短大含む)
6529.7
高校卒業954.6
その他274.9
合計1,5447.6

引用:令和5年公認会計士試験 合格者調(金融庁)
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/r5shiken/ronbungoukaku_r05/03.pdf

学歴としては大学卒業や大学在学が最も多く、大学院修了や大学院在学は、高校卒業やその他に比べて少なくなっています。

これを見る限り、公認会計士は大学院まで行った人が最も多い、というわけではないようです。

しかし、高校卒業に比べると大学卒業や大学在学は13倍以上の人数になり、一定程度の学歴のある方が合格者大半を占めている資格ではあります。

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合格率を見ると、在学中の合格率が高く、大学院まで行った人の場合、在学と修了では2倍以上の差が開いています。

出身大学別でみる公認会計士試験合格者

公認会計士稲門会の公表しているデータによると、出身大学別の公認会計士試験合格者は以下の通りです。

出身大学平成29年度
合格者
(人)
平成30年度
合格者
(人)
令和1年度
合格者
(人)
令和2年度
合格者
(人)
令和3年度
合格者
(人)
早稲田大学11111510598126
慶應義塾大学157144183169178
明治大学8477816072
中央大学7777717465
東京大学5043404958
立命館大学3138385249
京都大学4838384341
神戸大学2936364738
大阪大学3436
一橋大学36343435
法政大学3442
同志社大学34
専修大学29

引用:平成29年度公認会計士試験合格者(公認会計士稲門会)
https://www.cpa-tomonkai.jp/2018/01/09/%e5%b9%b3%e6%88%9029%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e5%85%ac%e8%aa%8d%e4%bc%9a%e8%a8%88%e5%a3%ab%e8%a9%a6%e9%a8%93%e5%90%88%e6%a0%bc%e8%80%85/

引用:平成30年度公認会計士試験合格者(公認会計士稲門会)
https://www.cpa-tomonkai.jp/2019/01/15/%e5%b9%b3%e6%88%9030%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e5%85%ac%e8%aa%8d%e4%bc%9a%e8%a8%88%e5%a3%ab%e8%a9%a6%e9%a8%93%e5%90%88%e6%a0%bc%e8%80%85/

引用:令和1年度公認会計士試験合格者(公認会計士稲門会)
https://www.cpa-tomonkai.jp/2020/05/23/%e4%bb%a4%e5%92%8c1%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e5%85%ac%e8%aa%8d%e4%bc%9a%e8%a8%88%e5%a3%ab%e8%a9%a6%e9%a8%93%e5%90%88%e6%a0%bc%e8%80%85/

引用:令和2年度公認会計士試験合格者(公認会計士稲門会)
https://www.cpa-tomonkai.jp/2021/06/06/%e4%bb%a4%e5%92%8c2%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e5%85%ac%e8%aa%8d%e4%bc%9a%e8%a8%88%e5%a3%ab%e8%a9%a6%e9%a8%93%e5%90%88%e6%a0%bc%e8%80%85/

引用:令和3年 公認会計士試験合格者(公認会計士稲門会)
https://www.cpa-tomonkai.jp/2022/07/30/%e4%bb%a4%e5%92%8c3%e5%b9%b4-%e5%85%ac%e8%aa%8d%e4%bc%9a%e8%a8%88%e5%a3%ab%e8%a9%a6%e9%a8%93%e5%90%88%e6%a0%bc%e8%80%85/

平成29年~令和3年の過去5年間のデータでは、慶應義塾大学の合格者が群を抜いて最も多く、続いて多いのが早稲田大学です。

1位、2位に次いで多いのが明治大学と中央大学で、この2校が毎年3位と4位を競っています。

その他の大学については、それほど大差はありませんが、毎年大体同じ大学で合格者が多いことが分かります。

東京大学、立命館大学、京都大学、神戸大学は、1位~4位までの大学ほど多くはありませんが、毎年多くの合格者を輩出している大学です。

合格者を多く輩出している大学が毎年ほとんど同じであるため、監査法人内でも必然的にこれらの大学出身者が多くなるでしょう。

それによって、自然と同じ大学出身同士のグループができたり仲間意識が生まれたりすることもあります。

しかし、公認会計士として働く上で最も必要なのは知識と経験であって、たとえこれらの大学出身でなくとも、自分の努力次第で必要とされる存在になることは可能です。

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公認会計士として働くにあたって、出身大学が影響する場面はゼロではありません。
これから大学受験をする場合で、公認会計士になるにあたって少しでも有利な状況にしておきたい、という場合には、これらの大学の受験を検討してみても良いかもしれません。

まとめ

最後に、今回の記事の内容をまとめてご紹介します。

  • 監査法人への就職においては、公認会計士試験に合格していれば学歴は不問である
  • 監査法人では、英語力やヒアリング力、経験など、学歴よりも重視されることが多くある
  • 監査法人への就職においては学歴不問だが、同じ大学出身であることで仲間意識が生まれ、採用選考や業務において影響する場合もある
  • 公認会計士試験合格者は、大学卒業や大学在学の人が最も多く、大学院修了や大学院在学の人は高校卒業やその他の人に比べて少ない
  • 近年の公認会計士試験の合格者は、早稲田大学や慶應義塾大学が多く、その他も大体同じ大学で合格者が多くなっている

監査法人への就職において学歴は必要ありませんが、特に新卒や公認会計士試験に合格してすぐの場合は、経験や成果などで比較ができないため、どうしても学歴や出身大学で比較されることがあるのは事実です。

とはいえ、公認会計士として働くにあたって、学歴よりも大切なことはたくさんあります。

公認会計士としての経験を積むまでは、学歴に左右されることもあるかもしれませんが、その後の努力次第でそれを超えることは十分可能です。

公認会計士試験に合格している時点で、相応の学力があることは証明されているので、その後の可能性を広げるためにも自信を持ってさまざまなことに取り組むと良いでしょう。