「公認会計士として監査法人に行くべきか、公務員として安定を取るべきか――。」
今、あなたが一番頭を悩ませているのは、まさにこの選択ではないでしょうか。
「公認会計士と公務員では、20代の年収はどれくらい違うのか?」
「本当の意味で“安定”しているのはどっちなのか?」
「将来のキャリアの広がりやつぶしの利き方を考えると、どちらを選ぶべきなのか?」
公認会計士試験に合格した今だからこそ、選択肢は一気に広がります。だからこそ、どちらを選んでも一長一短があり、「正解」が見えにくくなります。本記事では、「公認会計士」と「公務員」を年収・安定性・将来性・やりがいといった軸で整理し、20代のあなたが納得して選べるように分かりやすく比較していきます。
読み終えるころには、「自分の価値観なら、まずはこの選択を取るのが良さそうだ」という一つの答えが言語化できているはずです。それではまず、公認会計士と公務員、それぞれの基本から整理していきましょう。
目次
公認会計士と公務員の基本をまず整理しよう

まずは、「公認会計士」と「公務員」がそもそもどんな仕事で、どのような立場にあるのかを押さえておく必要があります。ここが曖昧なままだと、「公認会計士 公務員 どっちがいいか」という議論をしても、ふわっとした印象論で終わってしまいます。この章では、両者の“土台”となる仕事内容・働き方・キャリアの前提を整理し、そのうえで共通点と決定的な違いを明確にしていきます。
公認会計士とは?仕事内容・働き方・キャリアの前提
公認会計士は、一言でいえば「企業や組織のお金の信頼性を保証するプロ」です。代表的な就職先は監査法人で、上場企業や大企業の財務諸表監査を通じて、投資家や社会に対して「この会社の数字は信頼できます」とサインする役割を担います。
仕事の中心は、クライアント企業に常駐しての監査業務です。決算期にはチームで長時間働くことも多く、繁忙期と閑散期の波がはっきりしているのが特徴です。一方で、若いうちから経営陣やCFOクラスと仕事をする機会があり、ビジネスの中枢に触れながら専門性を磨いていける職種でもあります。
将来的には、監査法人でパートナーを目指す道のほか、事業会社の経理・財務・経営企画、コンサルティングファーム、FAS、ベンチャーCXO、独立開業など、多様なキャリアに展開しやすい点が大きな特徴です。
公務員とは?国家公務員・地方公務員の違いと役割
公務員は、「国や自治体のルールを運用し、社会を安定的に回すプロ」です。国家公務員は各省庁や出先機関に所属し、法律や制度の企画・立案、予算編成、行政運営などを担当します。地方公務員は都道府県・市区町村などで、住民サービスの提供、地域行政の運営、インフラ・福祉・教育などを支えます。
いずれも、「特定の企業」ではなく「国や地域社会全体」に対して仕事をする立場であり、雇用主は民間企業ではなく国・自治体です。採用は原則として試験と面接による一括採用で、配属先や異動は組織側の人事によって決まるケースが多くなります。
働き方としては、部署によって忙しさに差はあるものの、民間と比べると残業時間が比較的コントロールされている職場も多く、長期的な雇用の安定性が高い点が特徴です。
公認会計士と公務員で共通している点・決定的に違う点
公認会計士と公務員には、実は共通点も少なくありません。どちらも「公的な信頼」を背負う仕事であり、法律や制度に基づいて業務を行う点、社会全体への影響が大きい点は似ています。真面目さやコンプライアンス意識、論理的に物事を考える力が求められるという意味では、適性が重なる部分もあります。
一方で、決定的に違うのは「市場との距離感」と「キャリアの広がり」です。公認会計士は、民間企業の競争環境の中で専門性を武器に戦う“プロフェッショナル職”。市場価値に応じて年収もキャリアも大きく動きます。公務員は、基本的に所属組織の人事制度と昇進ルールに従ってキャリアが積み上がる“組織内キャリア職”。配属や昇進は相対的に安定している一方で、転職市場での動き方はやや限定されます。
このように、「公認会計士 公務員」とひとまとめに比較する前に、両者の土台となる前提を押さえておくことで、次章以降の「年収・安定性・将来性」の比較がよりクリアに見えてきます。
年収・安定性を比較|公認会計士と公務員の本当の差

公認会計士 公務員 どちらを選ぶかを考えるうえで、多くの就活生が最も気にするのが「お金」と「安定」です。ただ、表面的な平均年収や“公務員=安定”といったイメージだけで判断すると、後から「思っていたのと違う」と感じるリスクもあります。この章では、20代〜30代の年収カーブと、安定性・将来性の中身を一度分解して見ていきましょう。
20代〜30代の年収カーブ比較|公認会計士 vs 公務員
まずざっくりしたイメージとして、同じ20代後半〜30代前半で比べると、公認会計士(特に監査法人勤務)の方が、公務員より年収水準は高くなるケースが一般的です。
監査法人では、20代後半で年収600万円前後〜、30代前半で700〜800万円台に届くことも珍しくありません。一方で、公務員は初任給こそ安定しているものの、昇給カーブはなだらかで、20代〜30代前半は400万円台〜500万円台がボリュームゾーンというイメージです。
また、公認会計士は転職や昇格、インセンティブによって年収が大きく動きやすく、実力・評価次第でレンジが広がる一方、公務員は俸給表に基づいた昇給が中心で、大きく跳ねることは少ないという特徴があります。
「安定」とは何か?公認会計士 公務員それぞれのリスクと安心材料
「安定」という言葉も、中身を分けて考える必要があります。
公務員の安定は、「雇用が守られやすい」「給与が急に半分になることはほぼない」といった、“組織に守られている安定”が中心です。景気が悪化しても、リストラや大幅減給のリスクは民間より小さいと言えます。
一方、公認会計士の安定は、「資格とスキルで市場に守られている安定」です。監査法人が合わなければ事業会社やコンサルに移る、地方に移る、独立するなど、選択肢が多く、失業しにくいという意味での安定性があります。その代わり、成果や評価によって待遇が変わる、繁忙期の負荷が高いなど、“マーケットにさらされる不安定さ”も抱えます。
どちらが良い悪いではなく、「組織に守られたいのか」「市場に評価されたいのか」で、同じ“安定”でも意味合いが変わってくる点を押さえておきましょう。
将来の昇進・昇給・キャリアの広がりを数字と事例でイメージする
20代の今だけでなく、30代・40代まで見据えると、公認会計士 公務員の差はさらにはっきりしてきます。
公務員は、係長・課長・部長といったポストに上がるごとに年収も上がりますが、人数枠が決まっているため“順番待ち”になりやすく、人事評価も組織内のロジックに強く左右されます。
公認会計士の場合、監査法人内でマネージャー・パートナーを目指すルートに加え、事業会社CFO候補、FAS・コンサル、ベンチャーの役員など、年収1,000万円〜2,000万円超を狙えるポジションに進む可能性もあります。もちろん全員がそこに到達するわけではありませんが、「頑張れば年収も役割も大きく伸びる階段が用意されている」という構造は、公務員との大きな違いです。
このように、年収と安定性をセットで見ていくと、「ほどほどで良いから守られたいのか」「リスクを取りつつリターンも取りに行きたいのか」という、自分の価値観が選択の重要な軸になることがわかります。
忙しさ・やりがいで比較|向いているのはどっち?

「公認会計士 公務員 どっちが忙しいのか?」「やりがいはどちらが大きいのか?」――就職先を考えるうえで、働き方のリアルは年収以上に重要です。この章では、1日のスケジュール感や繁忙期の違い、そしてそれぞれの“やりがいの源泉”を整理し、自分の性格や価値観と照らし合わせやすいように解説していきます。
繁忙期・残業のリアル|監査法人と公務員の一日の違い
監査法人の働き方の特徴は、「時期によって仕事量が大きく変動する」ことです。特に決算期(3月決算企業が多い日本では1〜5月頃)は繁忙期となり、クライアント先に常駐しながら、連日長時間の監査業務が続くこともあります。朝は9〜10時頃に出社し、夜は22時以降まで働くケースも珍しくありません。一方で、繁忙期を外れると残業が少なくなり、有給休暇をまとめて取得しやすい時期もあります。
公務員の場合は、所属する部署によって忙しさが大きく異なります。予算編成に関わる部署や企画系の部署は特定の時期に残業が続くこともありますが、全体としては「年間を通じて比較的フラット」という傾向が強いです。定時前後に退庁できる日も多く、土日・祝日は原則休みという職場も少なくありません。
「短期的な負荷は高くても、そのぶんメリハリをつけて働きたい」のか、「年間を通して一定のペースで働きたい」のかで、心地よく感じる働き方は変わってきます。
公認会計士のやりがい:専門性・市場価値・キャリアの選択肢
公認会計士のやりがいの源泉は、大きく三つあります。
一つ目は、「高度な専門性」です。会計・監査のプロとして、複雑な取引やグローバルなビジネスを理解し、財務諸表の適正性を判断していく過程そのものが、頭脳労働としての面白さにつながります。
二つ目は、「自分の市場価値が上がっていく実感」です。経験を積むほど扱える案件の難易度が上がり、関わるクライアントの規模も大きくなります。それが評価や年収、転職可能性に直結するため、「成長がダイレクトにキャリアに反映される感覚」を持ちやすい職種です。
三つ目は、「キャリアの選択肢の広さ」です。監査法人で経験を積んだ後、事業会社の経理・財務・経営企画、FAS、コンサル、スタートアップのCFO候補など、多様な道が開けています。「将来的に経営サイドに立ちたい」「海外案件に関わりたい」といった野心を持つ20代にとって、公認会計士はそれを実現しやすいスタート地点と言えます。
公務員のやりがい:公共性・社会貢献・生活の安定という強み
公務員のやりがいは、公認会計士とは少しベクトルが異なります。最大のポイントは「公共性」と「社会への貢献度」です。自分が関わった政策や制度、事務が、地域住民の生活や社会インフラの維持に直結している実感を得やすいのが、公務員ならではの魅力です。
また、「生活の安定」そのものが、長期的なやりがいにつながるケースもあります。将来の収入や身分が大きく揺れ動きにくいからこそ、プライベートの計画(結婚・子育て・マイホームなど)が立てやすく、人生全体を設計しやすいというメリットがあります。
一方で、仕事の成果がすぐに数字として見えづらい、異動が多く職種が頻繁に変わる、といった側面もあります。「一つの専門性を深く突き詰めたい」よりも、「広く社会を支える役割を担いたい」という志向の人に、公務員のやりがいはフィットしやすいと言えるでしょう。
このように、忙しさ・やりがいの軸で公認会計士 公務員を比較すると、自分がどのような環境で力を発揮しやすいかが見えてきます。次の章では、これらを踏まえたうえで、20代のあなたのタイプ別に「どちらが向いているか」を整理していきます。
20代で迷うあなたへ|タイプ別「公認会計士 公務員」適性診断

ここまで、公認会計士 公務員 の違いを事実ベースで整理してきました。ただ、最終的な答えは「どちらが優れているか」ではなく、「あなたがどちらのタイプに近いか」です。この章では、価値観・性格・キャリア観から、自分にフィットする方向性を言語化していきます。
「安定志向」か「成長志向」かで変わるベストな選択肢
ざっくり言えば、公務員は「生活と身分の安定」を軸にしたキャリア、公認会計士は「専門性と市場価値の成長」を軸にしたキャリアです。
・生活基盤を早めに固めたい/転勤や部署異動にある程度従える → 公務員寄り
・多少ハードでも、20代のうちに専門性と年収を一気に伸ばしたい → 公認会計士寄り
と、自分の“譲れないポイント”を整理してみると、どちらがしっくり来るかが見えやすくなります。
性格・価値観チェックリストで自分に合う道を見極める
例えば、次のような二択を直感で選んでみてください。
・ルールに従って粛々と仕事を進めるのが得意/前例のない課題に自分で答えを出す方が好き
・組織の中で長く信頼を積み上げたい/転職も視野に入れてキャリアを主体的に動かしたい
・人並み以上にリスクは取りたくない/リスクを取ってでもリターンを狙いたい
左側が多ければ公務員タイプ、右側が多ければ公認会計士タイプと言えます。どちらが“正解”ではなく、自分の素の性格に近い方を選ぶことが、長期的な満足度の高いキャリアにつながります。
まず監査法人に就職してから公務員を目指すルートはありか?
「今は公認会計士としての専門性も捨てたくないけれど、公務員にも興味がある」という場合、二者択一で悩みすぎる必要はありません。実際に、公認会計士として監査法人で数年経験を積んだ後、経験者採用枠や任期付き公務員として省庁・自治体に転じる事例もあります。
20代前半の段階では、「まずは監査法人で専門性とビジネス感覚を身につけ、そのうえで公共セクターに関わるかを考える」というステップを踏むのも一つの戦略です。公認会計士 公務員 を“どちらか一生”ではなく、“キャリアの中でどう組み合わせるか”という発想を持つと、選択のプレッシャーはかなり軽くなるはずです。
後悔しないために|公認会計士と公務員で迷う20代が取るべき3ステップ

ここまで読むと、「なんとなく方向性は見えたけれど、まだ決め切れない」という感覚かもしれません。最後に、公認会計士 公務員 のどちらを選ぶにしても、20代の今だからこそやっておくべき「考え方」と「行動ステップ」を3つに整理します。このステップを踏めば、感覚的な迷いではなく、納得感のある意思決定に近づけます。
情報収集ステップ:OB訪問・説明会・インターンの活用法
まずは、机上の比較だけでなく「生の情報」を取りに行くことが重要です。
公認会計士側では、監査法人やコンサルファームの説明会・座談会・インターンを活用し、現役会計士に「繁忙期のリアル」「キャリアの広がり」「辞めていく人の理由」まで率直に聞きましょう。可能なら、BIG4と中堅・準大手の両方を見ておくと、働き方の違いがよくわかります。
公務員側でも、官庁訪問や自治体説明会、OB訪問を通じて、部署ごとの忙しさ、若手に任される仕事の裁量、異動の頻度などを確認しましょう。「〇〇省=激務」「地方公務員=ラク」といったイメージだけで判断せず、実際にその組織で働く人の声を自分の耳で確かめることが大切です。
5年後・10年後のキャリアを描く「キャリア仮説」の立て方
次に、5年後・10年後の自分の姿を、具体的な「キャリア仮説」として文章にしてみてください。
例えば、公認会計士ルートなら
「27歳:スタッフとして複数クライアントを担当/30歳:シニアとしてチームをまとめる/32歳:転職して事業会社の経営企画へ」
公務員ルートなら
「27歳:本庁で担当係として政策立案の補助/30歳:係長としてチームをリード/35歳:地域の中核ポジションでプロジェクトを主導」
といったイメージです。
このとき、「どちらのストーリーの方がワクワクするか」「ストレスのイメージが少ないか」を基準にしてみてください。将来像が具体的であればあるほど、今の選択の意味がはっきりします。
最初の一社をどう選ぶか|監査法人就職を軸にした戦略的な決断
最後に、「最初の一社をどう選ぶか」です。
20〜24歳の今の段階では、「一生分の進路を決める」というより、「最初のキャリアの土台をどこで作るか」を決めるイメージが現実的です。公認会計士試験に合格しているあなたにとって、監査法人への就職は、専門性・市場価値・キャリアの広がりという意味で非常に強いスタートラインになります。
そのうえで、「将来、公務員として公共セクターに関わる可能性を残したい」のか「民間で経営サイドまで駆け上がりたい」のかを考えれば、今取るべき選択肢は自然と絞られてきます。
どちらを選んでも、20代の選択は後から修正可能です。ただし、「情報を集めず、なんとなく世間のイメージで決めた」ことだけは、後悔の種になりやすいポイントです。
この3ステップを踏んだうえで出した結論であれば、公認会計士 公務員 いずれを選んだとしても、自信を持って前に進むことができるはずです。
まとめ
この記事を読み終えて、「自分は公認会計士と公務員のどちらを選ぶべきか」、少なくとも以前よりは輪郭がはっきりしてきた感覚はありますか?
冒頭でお伝えしたとおり、本記事のゴールは「年収・安定・将来性・やりがいの軸で両者を整理し、20代のあなたが自分の価値観に合った選択肢を言語化できるようにすること」でした。
ここまでで、
- 公認会計士は「専門性と市場価値の成長」を軸に、年収やキャリアの伸びしろが大きい一方、繁忙期の負荷や“市場にさらされる”不安定さもあること
- 公務員は「身分と生活の安定」を軸に、公共性や社会貢献を感じられる一方、昇進や仕事内容が組織のロジックに左右されやすいこと
- 忙しさ・やりがい・適性は「どちらが上か」ではなく、「あなたがどんな人生を送りたいか」で変わること
- そして、公認会計士 公務員を“一生の二択”ではなく、「キャリアのどこかでどう組み合わせるか」という発想も取り得ること
を整理してきました。
公認会計士試験に合格したあなたは、すでに「どちらも選べる立場」にいます。これは、多くの人が持てない大きなアドバンテージです。そのカードをどう切るかは、誰かの正解ではなく、あなた自身の納得感で決めて構いません。
もし今、「まずは監査法人で専門性をつけてみよう」「自分はやはり安定を重視したいから、公務員の道も真剣に検討しよう」といった仮の答えでも浮かんでいるなら、それは十分な一歩です。あとは、OB訪問や説明会などで情報を取りに行きながら、その仮説を少しずつ磨いていけば大丈夫です。
20代でのキャリア選択はゴールではなく、長いキャリアの“スタートライン”にすぎません。
公認会計士としての専門性を武器にするにせよ、公務員として社会を支える道を選ぶにせよ、「自分で考えて、自分の意思で選んだ」経験そのものが、これからのキャリアを強くしてくれます。
迷っている時点で、あなたはすでに真剣に向き合えているはずです。
あとは、一歩を踏み出すだけです。
