「監査法人で働くには英語力が必要って本当?」「TOEICって何点くらい取ればいいの?」「英語ができないと出世できないの?」――そんな疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
グローバル化が進む中で、監査法人の現場では英語を使う機会が年々増えています。とくにBIG4では、外資系企業とのやりとりや国際会計基準(IFRS)への対応、海外赴任など、英語力が必要となるシーンが多々あります。
この記事では、監査法人で求められる英語力の実態から、TOEICスコアの目安、英語がもたらすキャリアの可能性、実務での英語使用例、そして効果的な学習方法までを徹底的に解説します。
英語が不安なあなたでも、この記事を読めば監査法人で活躍するための“語学戦略”が描けるようになります。
それでは早速、なぜ監査法人で英語力が求められるのか、その理由から見ていきましょう。
目次
監査法人で英語力が求められる理由とは

公認会計士として監査法人に入所した後、すべての業務が日本語だけで完結するとは限りません。英語力が必要となる背景には、監査法人がグローバル化した被監査会社を多く抱えていることや、国際的な会計基準に対応している現実があります。まずは、なぜ監査法人で英語力が求められるのか、その理由を3つの観点から確認してみましょう。
外資系被監査会社対応の重要性
監査法人では、外資系企業や多国籍企業の日本法人を被監査会社として担当するケースが増加しています。これらの企業では、財務資料が英語で作成されていたり、親会社との連携に英語が必須だったりするため、監査チームにも一定の英語対応力が求められます。
特にBIG4では、全体の被監査会社のうち2~3割が英語対応を必要とする企業であり、メールや会議が英語で行われることも日常茶飯事です。
「読む・書く・聞く・話す」すべてのスキルが問われるわけではないものの、最低限の英語読解力はどの部署でも求められると考えておくべきでしょう。
IFRSやUS基準対応に必要な語学力
日本基準だけでなく、IFRS(国際財務報告基準)やUS GAAP(米国会計基準)に対応した監査業務では、英文の会計資料を読みこなす力が求められます。
特に国際基準に関する解釈や指針は英語で発信されることが多く、一次情報を日本語訳に頼らずに理解できることが、専門家としての信頼にもつながります。
また、IFRS適用企業の監査では、英語での監査手続やレビュー業務も増えており、TOEICスコアだけでなく「業務で使える英語力」が重視されるようになっています。
国際部やグローバル案件の増加
監査法人には「国際部」や「グローバルビジネス部門」といった専門部署があり、ここに配属されると英語での業務遂行が“当たり前”になります。
これらの部署では、英語での報告書作成、外資とのWeb会議、海外メンバーとのチャット対応などが日常的に行われています。
国際案件に携わるチャンスを得るためには、英語力をアピールできることが一つの“パスポート”になるといっても過言ではありません。
TOEICスコアはどれくらい必要?

「監査法人に入るにはTOEICは何点必要?」とよく聞かれますが、実は一律に求められる基準はありません。しかし、部署や業務内容によっては一定以上のスコアが評価される場面があるのも事実です。ここでは、TOEICスコアの目安やその活用シーン、BIG4と中小法人での違いについて解説します。
配属部署によって求められるスコアは異なる
監査法人全体で英語力が求められるわけではありませんが、国際部や外資系被監査会社を担当する部署ではTOEIC600点以上が一つの目安とされています。
特に、海外の親会社とのやり取りが発生する業務では、700点以上が望ましいとされることもあり、配属の際に英語力を加味して選ばれるケースもあります。
逆に、国内企業を主に担当する部門であれば、英語力は特に問われないこともあります。ただし、TOEICのスコアがあればアピール材料にはなるため、取得しておいて損はありません。
TOEICの目安点数別に見た業務への影響
•~500点:英語を使う機会はほぼない部署向き。アピールにはならないが不利にもならない。
•600~700点:外資系企業対応の補佐や、英語メールの読解に対応できるレベル。国際部の足がかりとして評価されることがある。
•750点以上:国際案件やIFRS関連業務への本格的な参加が可能。昇進や海外赴任の選抜基準になることも。
つまり、TOEICの点数は業務の選択肢を広げる“鍵”になると言えるでしょう。
BIG4と中小監査法人での違い
BIG4では、TOEICスコアを昇格基準の一部に取り入れているケースがあり、ある程度のスコア取得が奨励されています。
また、海外研修制度や駐在候補者選抜では800点以上が求められることもあります。
一方で中小監査法人では、英語力が求められるシーンは限られており、日常業務ではTOEICスコアがほぼ問われないケースも一般的です。
ただし、今後中小法人でも国際案件が増える可能性は高く、英語力の有無が評価される機会は確実に増えています。
英語ができると監査法人で有利になる理由

英語が苦手でも監査法人で働くことは可能です。しかし、英語ができる人材は間違いなく“引く手あまた”です。ここでは、英語力があることで得られるキャリアの選択肢や評価の違いについて、3つの観点から見ていきましょう。
海外赴任やグローバル研修への選抜
BIG4を中心とした大手監査法人では、英語力が高い人材が海外研修や駐在案件に選ばれる傾向があります。
たとえば、EY新日本有限責任監査法人やPwC Japan有限責任監査法人では、海外法人との人材交流プログラムや国際的なプロジェクトチームへのアサイン制度が用意されており、TOEICスコアや面談結果によって選抜されることがあります。
若手でも英語ができれば、海外被監査会社との直接やり取りを任されたり、国際部への異動チャンスが広がるなど、キャリアの可能性が大きく広がります。
昇進・評価への影響はある?
法人によって異なりますが、英語力が昇進や年次評価に影響するケースも少なくありません。
例えば、マネージャーやシニアマネージャーへの昇格にあたって、「海外案件への対応経験」や「英語での業務遂行能力」が条件に含まれていることも。
また、外資系被監査会社との関係構築に成功すれば、個人の貢献度として高く評価されやすくなるという面もあります。
つまり、英語力は単なるスキルではなく、昇進への“後押し”にもなり得る要素なのです。
転職市場でも評価されるスキル
監査法人で経験を積んだ後、FAS(財務アドバイザリー)やコンサル、事業会社の経理部門などへ転職する際にも、英語力は大きな武器になります。
とくに、外資系企業や上場準備企業などでは、会計実務と英語の両方ができる人材を高く評価する傾向があり、TOEICのスコアや実務経験はそのままアピールポイントになります。
監査法人の中だけでなく、その先のキャリアでも英語力は“差をつける武器”となるのです。
実際の業務で使う英語とは?

「英語力が必要」と言われても、どんな場面で英語を使うのかが具体的にわからないと不安ですよね。ここでは、監査法人における英語使用の実態を、日常業務の中からピックアップしてご紹介します。
メール・会議・資料作成の英語対応
英語が使われる最も多い場面の一つが、海外被監査会社とのやり取りにおけるビジネスメールやミーティングです。
たとえば、監査スケジュールの確認、証憑のリクエスト、会計方針の照会など、英語での意思疎通が必要になることもあります。
また、資料作成においても、日本語と英語の両方で提出することが求められるケースもあり、読み書き能力は必須です。
文法的に完璧である必要はなくても、“伝わる英語”を使えるかが大事です。
英語での監査調書・報告書の作成
外資系被監査会社を担当している場合、監査調書(Audit Working Paper)や最終報告書を英語で作成することもあります。
特に、親会社が海外にあるケースでは、日本法人の監査結果を英語でレポートする必要があるため、表現や単語選びにも注意が必要です。
このような文書作成は、TOEICのリーディングやライティング対策ではカバーしきれない“実務英語”の力が問われる領域といえます。
監査チーム内での英語コミュニケーション
グローバルチームでの監査案件では、同じ法人内でも海外メンバーと協働する機会が増えています。
その際には、チャットやWeb会議、日報のやり取りなどで英語を使うことがあり、話す・書くスキルのバランスが重要になります。
特に最近は、リモートワークの普及によって、国境を超えたプロジェクトチームでの連携も増加しており、日常的な英語力が求められる場面は確実に増えています。
「英語が使える人」として信頼されることで、よりチャレンジングな仕事に挑戦できるチャンスも広がるのです。
英語力を伸ばすための効果的な方法

「英語に自信がないけど、監査法人で活躍したい…」という不安を抱える方も安心してください。正しい方法で学習すれば、英語力は確実に伸ばせます。ここでは、TOEIC対策との違いや、法人内のサポート制度、入所前にできる学習法を紹介します。
TOEIC対策と実務的な英語の違い
まず押さえておきたいのは、TOEICのスコア=現場で通用する英語力ではないということです。
TOEICはあくまでリスニングとリーディング中心であり、監査現場で必要とされるのは「書く・話す」力を含む実務的な英語です。
そのため、TOEIC高得点者でも実際の監査業務では苦戦するケースもあります。逆に、スコアは高くなくても“実務で使える英語”に慣れている人は、現場での評価が高い傾向にあります。
TOEICの勉強だけに偏らず、実際のメール文書や会話を模したトレーニングを並行して行うことが重要です。
監査法人の研修制度をフル活用する
多くの監査法人では、英語力向上を目的とした社内研修やeラーニングが用意されています。
たとえば:
•ビジネス英語講座
•英文監査調書の書き方研修
•ネイティブ講師とのオンラインレッスン
これらは業務に直結した内容が中心で、実践的なスキルを短期間で磨くことができます。
また、参加は任意でも評価対象となることもあるため、積極的に活用することをおすすめします。
入所前に取り組みたい英語学習法
入所前に時間がある方は、以下のような学習をおすすめします:
•英語の会計用語を集中的に覚える(例:revenue, impairment, goodwillなど)
•実際の英文財務諸表を読んでみる
•ChatGPTなどAIを使った英作文トレーニング
•音声入力を使って英語で話す練習をする
これらを習慣化することで、入所後に即戦力としての信頼を得られる可能性が高まります。
「完璧な英語」より「業務で使える英語」を目指すことが、監査法人で英語力を武器にするコツです。
まとめ

この記事を通じて、「監査法人で求められる英語力とは何か?」という疑問に、答えを見つけることはできましたか?
TOEICの目安スコアや、実際の業務で使う英語、そして英語力がキャリアに与えるインパクトまで、少しずつイメージが湧いてきたのではないでしょうか。
英語が得意であれば、それは間違いなく武器になります。しかし、苦手意識がある方も心配はいりません。監査法人には成長のチャンスが多く、努力次第で活躍の場を広げることができます。
英語は「必要な場面が来てから学ぶ」のではなく、「未来の可能性を広げるために今から準備する」ことが大切です。
キャリアの幅を広げたいと考えるなら、英語力は避けて通れない要素。だからこそ、今このタイミングから、一歩ずつ始めてみてください。
あなたの前には、グローバルに広がるチャンスが待っています。