公認会計士試験に合格した後の進路として人気がある監査法人。働きながら実務経験を積めるので、就職先として気になる方も多いのではないでしょうか。
監査法人といえば「年収が高い」というイメージを持っている方も多いかもしれません。では、実際にはどのくらいの年収なのかご存じですか?
今回の記事では、公認会計士試験に合格し監査法人への就職を考えている方に向けて、以下の内容を解説します。
- 監査法人の平均年収は?
- 監査法人の役職とは
- 大手監査法人の年収相場は?【勤続年数・役職・年齢別】
- 準大手監査法人の年収相場は?
- 大手監査法人と準大手監査法人の違いとは?
厚生労働省のデータに基づき、監査法人で働く公認会計士の年収について年齢や役職別に解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
監査法人の平均年収は?
厚生労働省の出しているデータによれば、公認会計士及び税理士の平均年収は約657万円前後とされています。
※このデータでは、公認会計士と税理士が同じ職種区分になっています。
引用:職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(厚生労働省)
厚生労働省
監査法人における年収は、実務年数や所属する監査法人の大きさ、役職によって大きく変わります。例えば、経験年数が1〜4年目の公認会計士の場合、平均年収は500万円前後と見込まれます。
一方、役職の昇進や経験年数が増えると、年収は1,000万円を超える場合もあります。
国税庁の「民間給与実態統計調査」によれば、日本の平均給与は443万円です。
国税庁
このデータを考慮すると、監査法人での公認会計士の年収は、国内平均を大幅に上回ることが分かります。
さらに、キャリアアップとともに年収は順調に上昇する傾向にあるのも、監査法人の特徴です。
監査法人の役職とは
年収の解説の前に、年収に大きく関わる役職について見ていきましょう。監査法人における主要な役職は以下の通りです。
- スタッフ
- シニアスタッフ
- マネージャー
- パートナー
それぞれの特徴や役割について解説します。
スタッフ
入所初期の役職で、現場で基本的な業務を学びながらシニアスタッフの指導の下、個別の監査業務を行います。
シニアスタッフ
入所から約4年の実務経験を経て昇進する役職です。現場の責任者としての役割を果たします。このポジションは「インチャージ」や「主査」と呼ばれることもあります。
マネージャー
マネージャーは管理職として、複雑な案件の主導やチームの統括など、より高度な業務を担当します。早くて8年目で昇進すると言われているポジションです。管理職のため、残業手当が出なくなります。
パートナー
パートナーは法人の運営に関わるポジションです。早くて入所後15年で昇格できると言われていますが、昇進できる人は限られています。
大手監査法人の年収相場は?【勤続年数・役職・年齢別】
大手監査法人の年収相場について、勤続年数、役職、年齢別にそれぞれ見てみましょう。
大手監査法人とは?
日本の監査法人は大きく分けて「大手監査法人」、「準大手監査法人」、「中小監査法人」の3つのカテゴリーに分類されます。
このうち、「大手監査法人」と称されるのは、国内で最も規模の大きな監査法人を指します。大手監査法人の法人は以下の通りです。
- 有限責任あずさ監査法人
- EY新日本有限責任監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- PwC Japan有限責任監査法人
大手監査法人は従業数1,000人以上の企業規模なので年収相場は約786万円とみられます。
【勤続年数別】大手監査法人の平均年収
それでは勤続年数によってどのように年収が変動するのか、厚生労働省のデータに基づき勤続年数別に大手監査法人の年収相場を見てみましょう。
- 勤続1~4年:626万円
- 勤続5~9年:704万円
- 勤続10~14年:783万円
- 勤続15年~:1,214万円
勤続年数が増えるにつれて、年収も増加していることがわかります。
【役職別】大手監査法人の平均年収
監査法人での役職は、スタッフ、シニアスタッフ、マネージャー、そしてパートナーがあります。勤続年数別の数字を参考に、役職別の年収相場を見ていきましょう。
スタッフは入所2〜3年目に該当するため、年収相場は5年目の平均年収よりも少し低めの700万円前後といえるでしょう。
入所したばかりの頃の年収はもっと低いので、565万円前後の監査法人が多いと考えられます。
入所して平均して4年ほど経つと、シニアスタッフに昇進します。シニアスタッフからマネージャーに昇進するのは早くて8年ほどなので、5〜8年の数値が目安になります。
そのため、シニアスタッフの年収相場は765〜950万円前後と考えられます。
マネージャーへの昇進時期は人によってかなりばらつきがあり、およそ9〜15年、または15年以上の数値が参考になるのではないかと考えられます。よってマネージャーの年収相場は800万円〜1000万円前後とみられます。
大手監査法人でパートナーに昇進できる人はかなり限られています。パートナーの年収相場は1500万円以上はあるのではないかといわれています。
マネージャーやパートナーといった上位の役職では、それに伴う責任や業務の難易度が増す一方で、年収相場はスタッフやシニアスタッフに比べて大幅に上がっています。
【年齢別】大手監査法人の平均年収は?
年齢別の大手監査法人の年収相場を見てみましょう。
- 25〜29歳:678万円
- 30〜34歳:742万円
- 35〜39歳:779万円
- 45〜49歳:1,013万円
- 55〜59歳:1,214万円
※20~24歳、40~44歳、50~54歳データ無し
引用:職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(厚生労働省)
厚生労働省
準大手監査法人の年収相場は?
準大手監査法人とは、大手監査法人に準ずる規模の監査法人です。準大手監査法人に該当する法人は以下の通りです。
- 仰星監査法人
- 三優監査法人
- 太陽有限責任監査法人
- 東陽監査法人
準大手監査法人の企業規模は従業員100〜999人に該当します。厚生労働省のデータを見ると、年収相場は約835万円です。ただし役職や勤続年数、業務の内容などによって、実際の年収には幅が存在する可能性があります。
大手監査法人と準大手監査法人の違いとは?
厚生労働省のデータに基づくと、1,000人以上の企業規模の年収相場が約786万円、100〜999人の年収相場が約835万円なので、大手監査法人よりも準大手監査法人の方が年収相場が高くなっています。
さらに、大手監査法人や準大手監査法人よりも規模の小さい「中小監査法人」も存在します。大手監査法人や準大手監査法人は幅広く業務を担当していることが多いですが、中小監査法人は特定の業界に特化しているなど、それぞれの法人が独自の強みや特色を持つ傾向にあります。
監査法人でのキャリアアップの方法
監査法人でのキャリアアップは給与の増加や昇進に直結します。以下は、キャリアアップを目指すための具体的な方法です。
確実な業務遂行能力を身につける
基本的な業務遂行能力を確実に身につけることが重要です。監査業務は詳細な会計データの分析や被監査会社とのコミュニケーションが求められます。ミスのない確実な業務遂行が評価されるため、細部にまで注意を払うことが大切です。
継続的な学習とスキルアップ
監査法人では、継続的な学習が求められます。公認会計士の資格取得後も、新しい会計基準や法規制について学び続けることが必要です。定期的にセミナーや研修に参加し、最新の知識を身につけることで専門性を高めることができます。また、ITスキルや英語力も評価されるポイントです。
積極的なプロジェクトへの参加
プロジェクト単位での業務が多いため、積極的に参加して経験を積むことが大切です。難易度の高い監査業務や新しい分野への挑戦は、スキルアップにつながります。自ら進んで新しい監査業務に取り組む姿勢が重要です。
リーダーシップとコミュニケーション能力の強化
キャリアアップにはリーダーシップとコミュニケーション能力の向上も欠かせません。シニアスタッフやマネージャーといった役職では、チームをまとめる力や被監査会社との円滑なコミュニケーションが求められます。リーダーとしてのスキルを磨くことがキャリアアップの鍵となります。
以上のポイントを意識して取り組むことで、監査法人でのキャリアアップを実現できます。日々の努力と積極的な姿勢が将来の成功につながるでしょう。
まとめ
今回は監査法人の年収相場について紹介しました。内容をまとめてご紹介します。
- 監査法人の年収相場は約657万円
- 大手監査法人の年収相場は約786万円
- 準大手監査法人の年収相場は約835万円
- 監査法人の役職はスタッフ、シニアスタッフ、マネージャー、パートナーがある
- 年収は役職によって大きく異なる
監査法人でのキャリアは、専門的な知識や経験を積む絶好の場となるでしょう。
しかし、監査法人選びは、年収だけを基準にするのではなく、あなた自身のキャリアビジョンや価値観に合わせて行うことが大切です。
未来のキャリアを設計する際に、今回の情報が少しでもお役に立てれば幸いです。