企業の選び方

【2026年版】監査法人の勤務地は?8法人の事務所数と転勤の実態

監査法人の就活で、勤務地は最初に決めることの1つです。一般の企業のように「入所してから配属で決まる」のではなく、エントリーの時点で自分が働く事務所を選びます※12※19。

とはいえ、志望する法人がその地域に事務所を持っていなければ、選びようがありません。そして事務所の数は法人によってまったく違います。3か所の法人もあれば、17か所の法人もあります※4※9。

この記事では、監査法人8法人の事務所を、各法人が公表している「業務及び財産の状況に関する説明書類」と募集要項だけで並べ直しました。口コミサイトの情報は使っていません。勤務地で初任給が変わるのか、転勤はあるのか、異動の希望は通るのかも、公表資料で確かめられる範囲と確かめられない範囲を分けて書きます。

この記事の要点

  • 監査法人の勤務地はエントリーのときに自分で選ぶのが基本。採用も事務所ごとに分かれています※12※19
  • 事務所の数は3か所から17か所まで法人ごとに差があります。8法人の内訳を公衆縦覧書類でそろえました※2※3※4※5※6※8※9※10
  • 勤務地で初任給に差を付けているのは、募集要項で確認できた範囲では大手2法人だけ。準大手4法人は勤務地別の金額を書いていません※11※12※15※16※17※18

監査法人の勤務地は、エントリーのときに自分で選びます

監査法人の勤務地は、配属で決まるのではなく、応募する時点で自分が選びます。大手も準大手も、採用の窓口が事務所ごとに分かれているためです。

  1. トーマツの募集要項には「エントリーの際に希望する事務所を選択」と書かれており、選考会の予約は全国で1か所しかできません※12
  2. トーマツのよくある質問では「各地区事務所の採用は基本的には個々の地区事務所別に実施」と明記されています※19
  3. 三優は採用予定人数を「常勤職員25名程度(東京20名、札幌・名古屋・大阪・福岡5名)」と事務所別に公表しています※15
  4. 仰星は東京・大阪・名古屋・北陸のそれぞれで募集要項を出しており、東京事務所は「常勤職員10名程度」です※17
  5. 東陽は募集要項に「原則、東京事務所への勤務となります」と書いています※16

つまり、法人を選ぶことと勤務地を選ぶことは、監査法人の就活では同時に起きます。「まず法人を決めて、地域は後で考える」という順番は取りにくい、と考えてください。

注意したいのは、地方の事務所は採用枠がそもそも小さいことです。三優の例では東京20名に対して、札幌・名古屋・大阪・福岡の4事務所を合わせて5名※15。志望する地域に事務所があるかどうかだけでなく、その事務所が今年募集しているかも先に確かめます。

2027年7月1日に予定されている合併について

三優監査法人と仰星監査法人は、「監査法人BDO Japan」の創設に向けて合併することで基本合意しました。合併予定日は2027年7月1日です。

  • 両法人は対等の精神に基づいて合併します。法令上の手続としては、仰星監査法人を存続法人、三優監査法人を消滅法人とする合併方式が想定されています。
  • 合併後の規模は業務収入 約110億円(2026年6月期見込)・人員822人(非常勤を含む)・被監査上場会社192社と公表されています。いまのどちらの法人よりも大きな規模になります。
  • 2027年に入所する人は、2027年7月1日に所属する法人の名称が変わります。初任給や待遇の条件は、各法人がいま公表している募集要項が基準です。

この記事で準大手4法人(太陽・三優・東陽・仰星)として並べているのは、2027年6月30日までの区分です。

出典:三優監査法人「「監査法人BDO Japan」の創設に向けた検討について」(2026年7月27日公表・2026年8月31日確認)

監査法人8法人の事務所は、どこにいくつあるか

事務所の数は、いちばん多いトーマツの17か所から、東陽と仰星の3か所まで開きがあります。下の表は8法人が公表している「業務及び財産の状況に関する説明書類」(公衆縦覧書類)で数え方をそろえたものです。

法人(区分)事務所数所在地公表されている人員法人ごとの詳細
有限責任監査法人トーマツ(大手)17か所東京・大阪・横浜・名古屋・福岡ほか職員6,272名(うち東京4,206名)トーマツの年収と採用の実態
EY新日本有限責任監査法人(大手)16か所東京・大阪・福岡・名古屋・新潟ほか職員6,517名(うち東京5,133名)EY新日本の年収と採用の実態
有限責任あずさ監査法人(大手)12か所東京・大阪・名古屋ほか職員7,362名(うち東京5,608名)あずさ監査法人の年収と採用の実態
太陽有限責任監査法人(準大手)9か所東京・大阪・名古屋・北陸・札幌・東北・新潟・中国四国・九州社員100人(総人員は説明書類に記載なし)太陽有限責任監査法人の年収と採用の実態
PwC Japan有限責任監査法人(大手)5か所東京・京都・大阪・名古屋・福岡職員3,660名(うち東京3,026名)PwC Japanの年収と採用の実態
三優監査法人(準大手)5か所東京・札幌・名古屋・大阪・福岡382名三優監査法人の年収と採用の実態
東陽監査法人(準大手)3か所東京・大阪・名古屋公認会計士である使用人197人(東京157人・大阪23人・名古屋17人)東陽監査法人の年収と採用の実態
仰星監査法人(準大手)3か所+オフィス4か所東京・大阪・名古屋の3事務所と、北陸・札幌・福岡・広島のオフィス428名(非常勤を含む)仰星監査法人の年収と採用の実態
表1:監査法人8法人の事務所数と所在地(公衆縦覧書類および法人概要より。あずさ・EY新日本・PwC Japanは2025年6月30日現在、トーマツは2026年5月31日現在、太陽は2025年6月30日現在、三優は2025年10月1日現在、仰星は2025年6月末現在)。人員の欄は法人ごとに数え方が違います。大手4法人は説明書類の職員数と東京事務所の人員、東陽は公認会計士である使用人の事務所別内訳、三優と仰星は法人が公表している総人員です※2※3※4※5※6※8※9※10

数え方が資料によって違う点は、そのまま書いておきます。トーマツは説明書類では17か所ですが、募集要項の勤務地は「全国30カ所」です※4※12。連絡事務所などを含めるかどうかで数が変わります。太陽も説明書類は9か所ですが、採用サイトには京都事務所を加えた10拠点が載っています※6※7。どちらが正しいという話ではなく、志望先については両方を見ておくのが安全です。

東陽の366人は公認会計士以外を含む人員、仰星の428名は非常勤を含む人員です※9※10。法人ごとに数え方の前提が違うので、規模の大小はおおまかな目安として見てください。

自分の志望先が決まっている人は、法人ごとの初任給・賞与・働き方の公表数値をまとめた記事を上の表からたどれます。まだ絞り込めていない人は、区分ごとの違いから見ると早いです。

大手4法人は、東京事務所に何割の人がいるか

事務所の数が多い法人ほど地方に人がいる、とは限りません。説明書類には事務所ごとの人員が載っているので、東京事務所の割合を出しました。

17事務所を持つトーマツでも東京に67.1%、5事務所のPwC Japanは82.7%が東京です※4※5。事務所が多い法人は地方の1事務所あたりの人数も確保されている、という単純な話にはなりません。

大阪と名古屋の規模感も見ておきます。あずさは大阪929名・名古屋347名※2、トーマツは大阪603名・横浜289名・名古屋271名・福岡265名※4、PwC Japanは京都245名・大阪176名・名古屋169名・福岡44名です※5。東京以外で最大の拠点は、どの法人でも大阪になります。ただしPwC Japanだけは京都が大阪を上回ります。2023年12月にPwCあらた有限責任監査法人とPwC京都監査法人が合併して現在の法人になった経緯があるためです※5。

地方事務所は人数が少ないぶん、若手のうちから複数の被監査会社に関わりやすいと言われます。ただし残業時間や有給の取得率を事務所別に公表している法人はありません。「地方のほうが早く帰れる」という話を数字で確かめる方法は、いまのところありません。

監査法人そのものは、どの地域に多いのか

日本公認会計士協会に登録している監査法人は303で、そのうち190が東京会に所属しています。割合にすると62.7%です※1。

金融庁の公認会計士・監査審査会がまとめた資料でも、監査事務所は296法人で、監査業務収入の約78%を大手監査法人が占めています※20。法人の数も、仕事の量も、東京に寄っているのが実態です。

ただし、これは「東京以外では就職できない」という意味ではありません。表1のとおり、大手も準大手も東京以外に事務所を置いています。地元で働きたい人は、その地域に事務所を持つ法人から探すのが早道です。

勤務地で初任給は変わるのか

勤務地で初任給に差を付けていることを募集要項に明記しているのは、確認できた8法人のうち2法人です。EY新日本とトーマツで、差は月18,000円から20,000円です。

法人(区分)初任給(月額)勤務地による差
EY新日本有限責任監査法人(大手)首都圏365,000円/地区347,000円あり(月18,000円)。要項に金額を並記※11
有限責任監査法人トーマツ(大手)東京・横浜365,000円/その他事務所345,000円あり(月20,000円)。要項に金額を並記※12
有限責任あずさ監査法人(大手)365,000円金額に首都圏手当20,000円とワークサポート手当(東京)10,000円を含むと明記。地区の金額そのものは要項に記載なし※13
PwC Japan有限責任監査法人(大手)420,300円(新卒・監査職/米国公認会計士試験の全科目合格者向け。月30時間分の時間外勤務手当を含む)勤務地別の記載なし※14
太陽有限責任監査法人(準大手)365,000円(固定残業代なし)勤務地別の記載なし※18
三優監査法人(準大手)350,000円(2026年実績)勤務地別の記載なし※15
東陽監査法人(準大手)350,000円以上勤務地別の記載なし。100キロ以上の転居を伴う場合に転居費用の一部として30万円の支給あり※16
仰星監査法人(準大手)350,000円(東京事務所の要項・固定残業代なし)事務所ごとに要項を分けて掲載※17
表2:勤務地で初任給に差があるか(8法人の募集要項を1本ずつ確認。母数8法人/確認済み8法人)※11※12※13※14※15※16※17※18

金額の中身にも差があります。PwC Japanの420,300円は新卒採用(監査職・米国公認会計士試験の全科目合格者向け)の額で、月30時間分の時間外勤務手当が含まれています※14。固定残業代なしと明記しているあずさ・太陽・仰星の金額とは意味が違うので、額面だけを並べて高い順に見るのは誤解のもとです。

もう1つ、生活費に効く話をしておきます。確認した8法人の募集要項には、家賃補助や住宅手当の記載がありません※11※12※13※14※15※16※17※18。資格手当も同じです。通勤手当は全額支給と書いている法人が複数あります※11※13。つまり、東京と地方の手取りの差は基本給の差だけで、家賃の差は自分で負担することになります。

初任給そのものを法人別に詳しく比べたい人は、監査法人の初任給ランキング監査法人の年収の相場もあわせてどうぞ。

転勤はあるのか。異動の希望は通るのか

監査法人には、会社都合で全国を回るような転勤の仕組みが基本的にありません。採用が事務所ごとに分かれているからです※19。確認した8法人の募集要項にも、転勤手当という項目はありませんでした※11※12※13※14。

  • トーマツのよくある質問には「各地区事務所の採用は基本的には個々の地区事務所別に実施」とあり、続けて「採用後に地区事務所間を異動することも可能」と書かれています※19
  • 同じ質問集で、配属について「希望の部門に配属できるよう、最大限考慮」と明記されています※19
  • 東陽は100キロ以上の転居を伴う場合に転居費用の一部として30万円を支給すると要項に書いています※16。入所時の引っ越しを想定した制度です

ここで正直に書いておくと、異動の希望がどれくらいの割合で通るかを公表している法人はありません。「通りやすい」と書いている記事を見かけますが、確かめられる数字はありません。公表資料でわかるのは、異動できる仕組みがあることと、希望を考慮すると法人が書いていることまでです。

だから、就活の段階で決めておくべきことは1つです。5年後10年後に住んでいたい地域に、その法人の事務所があるか。事務所がなければ、異動の希望を出す先そのものがありません。

東京と地方で、身につく経験はどう違うか

公表資料で確かめられるのは事務所の規模までで、業務内容の違いは法人が公表していません。ここは確かめられることと確かめられないことを分けて示します。

「地方は幅広く経験できる」「東京は専門性が深まる」という説明はよく見かけます。ただし、それを裏づける公表データを8法人のいずれも出していません。説明会やOB訪問で、その事務所が実際に担当している会社の規模と業種を聞くのが確実です。聞き方は監査法人の説明会で聞くべき質問25選にまとめています。

法人そのものの選び方から整理したい人は、監査法人の選び方大手・準大手・中小の比較ガイドが出発点になります。区分ごとの違いは準大手監査法人とは中小監査法人一覧もどうぞ。

監査法人の勤務地を東京と地方で比較するイメージ画像

監査法人の勤務地についてよくある質問

監査法人の勤務地はいつ決まりますか?

エントリーの時点で決まります。採用が事務所ごとに分かれているためです。トーマツの募集要項には「エントリーの際に希望する事務所を選択」と書かれており、選考会の予約は全国で1か所しかできません※12。入所後に配属先が発表されるのは事務所内の部門であって、勤務地ではありません。

監査法人に転勤はありますか?

会社都合で全国を回るような転勤の仕組みは基本的にありません。採用が事務所ごとに分かれており、確認した8法人の募集要項にも転勤手当の項目はありませんでした※11※12※13※14。ただしトーマツのよくある質問には「採用後に地区事務所間を異動することも可能」と書かれています※19。自分から希望して動く道は用意されています。

事務所がいちばん多い監査法人はどこですか?

公衆縦覧書類で数えると、有限責任監査法人トーマツの17か所が最多です※4。次がEY新日本の16か所、有限責任あずさ監査法人の12か所と続きます※2※3。PwC Japanは5か所です※5。なお、トーマツの募集要項は連絡事務所を含めて「全国30カ所」と書いており、資料によって数え方が変わります※12。

勤務地によって初任給は変わりますか?

確認した8法人のうち、勤務地別の金額を募集要項に明記しているのは2法人です。EY新日本が首都圏365,000円と地区347,000円、トーマツが東京・横浜365,000円とその他事務所345,000円です※11※12。あずさは365,000円に首都圏手当20,000円とワークサポート手当(東京)10,000円を含むと書いています※13。準大手4法人は勤務地別の記載がありません※15※16※17※18。

地方の事務所は東京より内定を取りやすいですか?

公表されている数字では判断できません。わかるのは採用枠の大きさだけです。三優は常勤職員25名程度のうち東京が20名、札幌・名古屋・大阪・福岡の4事務所を合わせて5名と公表しています※15。仰星の東京事務所は常勤職員10名程度です※17。枠が小さいぶん、応募者数によっては競争が厳しくなることもあります。

まとめ:勤務地は法人選びと同時に決まります

要点を3つに絞ります。監査法人の勤務地はエントリーの時点で自分が選び、採用は事務所ごとに分かれています。事務所の数は3か所から17か所まで法人によって開きがあり、志望する地域に事務所がなければ選択肢に入りません。勤務地で初任給に差を付けているのは大手2法人だけで、差は月18,000円から20,000円です。

だから順番はこうなります。働きたい地域を先に決めて、その地域に事務所を持つ法人を表1から拾い、それぞれの法人の初任給と働き方を見比べる。法人を決めてから地域を考えると、選択肢が急に狭くなります。

地元で働きたい人も、東京で経験を積みたい人も、候補は最低2法人は見てください。比べる相手がいると、面接で話す内容まで変わります。

参考文献・出典