「公認会計士は忙しい」というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実際にはどうなのでしょうか。
今回の記事では、公認会計士の有給休暇の取りやすさについて、以下の点を解説します。
- 公認会計士は有給休暇を取りやすいのか
- 大手監査法人で働く公認会計士の有給休暇事情
- 公認会計士の有給休暇に関する口コミ
- 公認会計士が忙しいと思われがちな理由
- 公認会計士が有給休暇を取る上で気をつけるべきこと
- 大手監査法人の有給休暇制度
公認会計士として就職を検討している場合など、ぜひ参考にしてみてください。
目次
公認会計士は有給休暇を取りやすいのか
監査法人、会計事務所、コンサルティングファームのそれぞれについて、有給休暇の取りやすさを見ていきます。
監査法人の場合
監査法人では、忙しい時期とそうでない時期があります。
一般的に、4月下旬~6月までが最も忙しく、残業も多くなります。
最も忙しいこの時期には、有給休暇は取りづらいといえるでしょう。
反対に、8月と11月はそれほど忙しくなく、2週間程度の長期休暇の取得も可能です。
入社1年目から有給休暇をフル活用することもでき、監査法人に勤める多くの方は、付与された有給をすべて使いきるようです。
中には、1か月間の休みを取る方もいるようで、海外旅行が好きな方など、プライベートも充実させたい場合には嬉しい環境といえます。
監査法人では、四半期ごとに業務のスケジュールを立てるため、自分で調整ができれば比較的自由に有給休暇が取れます。
監査法人では、一般的によくある住宅手当と食事補助がないことが多く、「福利厚生が少ない」という印象を持たれることがあります。
しかし、休暇制度や休みやすさについては、一般的な企業よりも恵まれた環境であるといえるでしょう。
会計事務所の場合
公認会計士の資格があれば、税理士としての登録もできます。
そして、公認会計士の資格を持っている方で、税理士登録も併せて行う方は少なくありません。
このようなこともあり、「税務業務を行ってみたい」といった理由などから会計事務所への就職を選択する方もいます。
会計事務所では、12月〜6月が最も忙しい時期となります。
12月〜1月は年末調整、2月〜3月は個人の確定申告、3月下旬〜6月は3月決算となっている法人の決算申告準備があるためです。
この時期は忙しく、なかなか休みが取れませんが、8月〜10月は申告などが少ないため、比較的休みやすいといえます。
なお、会計事務所では、担当するクライアントの決算期によっても忙しさが変わってきます。
ただ、自分で業務スケジュールを調整できれば、比較的休みやすい環境だといえるでしょう。
日本の企業では、3月に決算を迎える企業が最も多いといわれています。
この理由には、地方自治体の予算期間が4月~3月であること、教育制度の年度区切りによって新卒社員の入社が4月になること、税法改正の多くは4月から適用されること、などがあります。
コンサルティングファームの場合
コンサルティングファームでは、他の士業の方々とも連携をとりながら、企業のコンサルティングを行います。
チームを組んでプロジェクトを進める、といったような働き方になります。
このため、プロジェクトが終了したタイミングなどは、比較的休みを取りやすい時期です。
長い期間を要するプロジェクトに携わっている場合には、その期間はなかなか休みを取れない、といったこともあるかもしれません。
しかし、上手くスケジュールを調整できれば、休みを取得することは可能です。
大手監査法人で働く公認会計士の有給休暇事情
大手監査法人である有限責任あずさ監査法人とEY新日本有限責任監査法人では、実際に働く場合の有給休暇事情について、公式サイトのQ&Aにて紹介しています。
これによると、有限責任あずさ監査法人では、入社1年目の有給休暇の付与日数は10日間で、それ以降は毎年日数が加算され、年間の最大付与日数は20日間となっています。
これ以外にも、毎年7月にリフレッシュ休暇が5日間付与されるとのことです。
これらを組み合わせて長期休暇を取得することもでき、「繁忙期でなければ比較的希望どおりに休みを取得できる」となっています。
「適度に休むことでワークライフバランスを整え、仕事の効率化を図る」という方向性のようで、「有給休暇の取得を促進している」とも記載されています。
このような、法人としての方向性が公表されていることもあり、休みづらい雰囲気はなさそうです。
また、EY新日本有限責任監査法人でも、入社1年目の有給休暇の付与日数は15日間で、それ以降は毎年日数が加算されます。
これ以外には、試験休暇制度などがあるようです。
業務との兼ね合いもあるため、すべて希望どおりになるとは限らないものの、「繁忙期以外は比較的希望どおりに取得できる」となっています。
公認会計士の有給休暇に関する口コミ
口コミサイトの投稿を見てみると、大手監査法人の口コミでは「有給休暇は取りやすい」といった口コミが多く、実際にも休みは取りやすい環境のようです。
その反面、繁忙期は人手が足りないほど忙しいようで、特に「ゴールデンウィークは休めない」といった口コミが多くありました。
とはいえ、その代わりに少し時期をずらして休めるので、旅行などをする場合は「比較的安価な時期に行けるので良い」と感じている方もいるようです。
大手監査法人の場合は、全体的に有給休暇は取得しやすい環境であるものの、繁忙期は残業が当たり前になるほど忙しく、時期によってメリハリのある働き方になるといえるでしょう。
税理士事務所の口コミにおいても、「繁忙期は残業も多いが、有給休暇は比較的取得しやすい」といった口コミになっていました。
同じくコンサルティングファームの口コミでも、「休みは比較的取りやすい」という口コミが多く、「長い連休なども取れる」といった声も複数ありました。
公認会計士が忙しいと思われがちな理由
一般的に、「公認会計士は忙しい」というイメージを持っている方も多いようです。
この理由として、公認会計士という職業柄、責任感の強い方が多く、仕事を優先しがちといった点があります。
実際には閑散期であればそれほど忙しくなく、長期の休みも取りやすい環境ですが、繁忙期は残業が当たり前になるほどとても忙しくなるため、そのようなイメージを持たれやすいのかもしれません。
忙しい時期とそうでない時期のメリハリがある職業なので、忙しい時期のイメージの方が強くなっているのでしょう。
最近では、他の業種と同じように働き方改革も浸透してきているため、公認会計士の働く環境もさらに改善されていくものと思われます。
公認会計士が有給休暇を取る上で気をつけるべきこと
公認会計士になる方は、その職業柄、真面目で責任感の強い方が多いです。
このため、ついつい無理をしてしまい、心身を壊してしまう方もいます。
身体の病気はもちろんのこと、うつ病などの心の病気も深刻な問題です。
忙しい時期は、なかなか休みを取れないかもしれませんが、そうでない時期にはしっかり休みをとってリフレッシュすることが大切です。
無理をして頑張ることで、勤務先に貢献したり迷惑をかけずに済んだりするかもしれません。
しかし、その後に心身を壊してしまっては、その後に大きな影響が出てしまいます。
自分が苦しいだけでなく、より大きな迷惑をかけることにもなりかねません。
公認会計士という職業は、どの勤め先であっても、スケジュールを調整することによって、比較的休みを取りやすい環境です。
スケジュール調整のスキルもしっかりと身につけて、忙しい時期は集中して業務をこなし、休めるときにはしっかり休む、といったメリハリをつけて働きたいものです。
とはいえ、業務の状況に関係なく、いつでも自分の好きなタイミングで休みを取ると周りに迷惑をかけてしまうので、病気などのやむを得ない場合を除いて休むタイミングには注意しましょう。
有給休暇制度で見る監査法人10選
各法人が出している求人の募集要項に記載されている、有給休暇を含めた休日・休暇制度に基づき、10法人を紹介します。
三優監査法人
三優監査法人の休日・休暇は以下のとおりです
休日・休暇 | 土曜日・日曜日・祝日・年末年始・有給休暇・夏季休暇・試験休暇・育児・介護休暇ほか |
土曜日と日曜日の完全休業に加え、祝日、年末年始、有給休暇、夏季休暇、試験休暇、育児・介護休暇など、様々な休暇制度が設けられています。
特に、育児・介護休暇は、近年多くの企業で導入されていますが、三優監査法人では制度が充実している点が魅力です。
採用情報については、公式サイトの採用サイトで確認できます。
参照:三優監査法人 – BDO
有限責任あずさ監査法人
有限責任あずさ監査法人の休日・休暇は以下のとおりです。
休日・休暇 | 土曜日、日曜日、祝祭日、創立記念日、年末年始、年次有給休暇、リフレッシュ休暇、慶弔休暇、ボランティア活動休暇、裁判員等休暇、試験休暇、子の看護休暇、配偶者出産休暇 |
引用:2023年度会計士定期採用の募集要項(有限責任あずさ監査法人)
https://www.recruit.azsa.or.jp/recruit-02.html
参照:あずさ監査法人|会計士採用情報|定期採用|私たちが伝えたいこと
EY新日本有限責任監査法人
EY新日本有限責任監査法人の休日・休暇は以下のとおりです。
休日・休暇 | 土曜日、日曜日、国民の祝日(ただし法人が指定する祝日は除く)、年末年始、創立記念に係る休日、その他法人が認めた臨時休日、有給休暇(法定以上)、慶弔休暇、配偶者出産休暇、妊活休暇(無給)、看護・介護休暇、ボランティア休暇、試験休暇(実務補習所修了考査など) |
引用:募集要項(EY新日本有限責任監査法人)
https://www.shinnihon.or.jp/recruit/recruit/career_guide.html
参照:EY新日本有限責任監査法人 法人案内 | EY Japan
入社した段階で、それぞれの休暇が有給なのか、無給なのかを確認しておくと安心です。
ただし、面接などの選考段階でこの点を聞いてしまうと、あまり良い印象を持たれない場合があります。
どうしても入社前に知りたい場合には、すでに働いている先輩にアポイントをとり、実際に訪問してさまざまな話を聞く「OB・OG訪問」を行ってみると良いでしょう。
有限責任監査法人トーマツ
有限責任監査法人トーマツの休日・休暇は以下のとおりです。
休日・休暇 | 土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始休暇、年次有給休暇、受験有給休暇、慶弔休暇、産前産後休暇、通院休暇(母性健康管理)、配偶者出産休暇、育児休暇、育児参加奨励休暇、介護休暇、看護休暇、通院等特別休暇、トーマツ休日、更年期不調による休暇、生理休暇、ボランティア休暇、DFV(Domestic & Family Violence)休暇、犯罪被害休暇、転勤支度休暇、公民権行使のための休暇など |
引用:募集要項(有限責任監査法人トーマツ)
https://recruit.tohmatsu.co.jp/recruiting/flow-and-requirements#recruiting-menu
参照:沿革|コーポレート:会社案内(有限責任監査法人トーマツ)|デロイト トーマツ グループ|Deloitte
参照:包括代表からのご挨拶|コーポレート:会社案内(有限責任監査法人トーマツ)|デロイト トーマツ グループ|Deloitte
PwC Japan有限責任監査法人
PwC Japan有限責任監査法人の休日・休暇は以下のとおりです。
休日・休暇 | 土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始(12月29日~1月3日)、PwC Japan Group day、年次有給休暇(年20日)、リフレッシュ・ヘルスケア休暇(年5日)、メディカル休暇、慶弔休暇、試験休暇、出産特別休暇(有給)、育児特別休暇(有給)、介護特別休暇(有給)、子の看護休暇、公傷休暇など |
引用:募集要項(PwC Japan有限責任監査法人)
https://www.pwc.com/jp/ja/careers/new-graduate-aarata/recruiting-info/info2.html
参照:PwC Japan有限責任監査法人概要 | PwC Japanグループ
参照:PwC Japan有限責任監査法人 総合採用サイト _ PwC Japanグループ
太陽有限責任監査法人
太陽有限責任監査法人の休日・休暇は以下のとおりです。
休日・休暇 | 修了考査のための特別休暇 (2週間)、公認会計士論文式試験のための特別休暇、有給休暇、夏季休日、年末年始休日、産前産後休業、育児休業 |
参照:太陽有限責任監査法人 | Grant Thornton
参照:太陽有限責任監査法人 採用情報 | Grant Thornton
仰星監査法人
仰星監査法人の休日・休暇は以下のとおりです。
休日・休暇 | 土曜、日曜、祝祭日、年末年始、夏期、創立記念日、年次有給休暇、慶弔、出産、子の看護、介護、修了試験休暇、産前産後休暇、(出生時)育児休業、介護休業 (その他、年間カレンダーによる出勤日や休日あり) |
参照:採用情報|仰星監査法人
東陽監査法人
東陽監査法人の休日・休暇は以下のとおりです。
休日・休暇 | 土・日・祝日(※1年単位の変形労働時間制の運用あり)、年末年始休暇、夏期休暇、試験休暇(実務補習所修了考査等)、メモリアル休暇、リフレッシュ休暇、慶弔休暇(本人の結婚休暇を含む)、子の看護休暇、産前産後休暇、育児休業制度、介護休業制度、家族の介護休暇、育児による時短制度有り(子が小学校卒業まで)、介護による時短制度有り |
参照:東陽監査法人
ひびき監査法人
休日・休暇 | 土曜・日曜・祝日、年末年始休暇、有給休暇、夏季休暇、慶弔休暇、試験準備休暇、看護・介護休暇、育児休暇、産前産後休暇、育児による時短勤務制度有り |
アーク有限責任監査法人
アーク有限責任監査法人の休日・休暇は以下のとおりです。
休日・休暇 | 土、日、祝祭日、年末年始、有給休暇(初年度13日)、試験休暇、慶弔、出産、育児、介護 等 |
まとめ
最後に、今回の記事の内容をまとめてご紹介します。
- 監査法人、会計事務所、コンサルティングファームのどの就職先においても、繁忙期は休みが取れないものの、それ以外の時期は比較的休みやすい環境である
- 大手監査法人の公式サイトで公表されているQ&Aでは、比較的希望どおりに休みが取得できる旨が記載されている
- 実際の口コミでも、繁忙期以外は休みやすいという口コミがほどんどである
- 一般的に「公認会計士は忙しい」というイメージがあるのは、責任感のある真面目な方が多く、仕事を優先しがちなことと、繁忙期がとても忙しいことにある
- 公認会計士は責任のある仕事なので、ついつい無理をしてしまいがちだが、周りに迷惑がかからない範囲で適度に休みを取ることが大切
- 大手監査法人は、どこも休暇制度が充実しているが、無給となっている休暇もあるので注意が必要
公認会計士は、繁忙期を除いて休みが取りやすく、大手監査法人では休暇制度も充実しているので、比較的良い環境だといえます。
とはいえ、繁忙期は残業が当たり前になるほど忙しいので、自分で上手くスケジュールを調整しながら、休めるタイミングで上手くリフレッシュすることが大切です。