大手監査法人の次に位置する中堅監査法人は、どのようなランク付けになっているのでしょうか。
今回の記事では、就職先を決める際にも知っておきたい、中堅監査法人の以下のランキングについて解説します。
- 中堅監査法人のクライアント数
- 中堅監査法人の社員数
- 中堅監査法人の事務所数
- 中堅監査法人の売上高
今回のランキングは、各法人の最新の「業務及び財産の状況に関する説明書類」をもとに決定しています。
「業務及び財産の状況に関する説明書類」は、金融商品取引法第46条の4の定めにおいて作成、公表された資料で、金融商品取引業等に関する内閣府令第174条の2の規定に基づいた事項が記載されています。
引用:業務及び財産の状況に関する説明書類(仰星監査法人)
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000068/200704000068_setumei.pdf?logitems=200704000068,4
引用:業務及び財産の状況に関する説明書類(三優監査法人)
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000120/200704000120_setumei.pdf?logitems=200704000120,4
引用:業務及び財産の状況に関する説明書類(太陽有限責任監査法人)
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000092/200704000092_setumei.pdf
引用:業務及び財産の状況に関する説明書類(東陽監査法人)
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200704000073/200704000073_setumei.pdf?logitems=200704000073,4
引用:業務及び財産の状況に関する説明書類(PwC京都監査法人)
http://tms.jicpa.or.jp/offios/pub/doc/200708000231/200708000231_setumei.pdf?logitems=200708000231,4
引用:昭和二十三年法律第二十五号 金融商品取引法(e-Gov法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000025_20230614_505AC0000000053
引用:平成十九年内閣府令第五十二号 金融商品取引業等に関する内閣府令(e-Gov法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419M60000002052_20230907_505M60000002065
目次
中堅監査法人の5法人とは
今回は、中堅監査法人を各種ランキングで徹底比較します。
ただ、中堅監査法人とはどの法人を指すのかについては、特に決まった定義はありません。
そのため今回は、金融庁の「公認会計士・監査審査会」より公表されている「令和5年版 モニタリングレポート」で、準大手監査法人として指定されている5法人を中堅監査法人として比較します。
この5法人として指定されているのは、仰星監査法人、三優監査法人、太陽有限責任監査法人、東陽監査法人、PwC京都監査法人です。
なお、「令和5年版 モニタリングレポート」では、監査法人を大手監査法人、準大手監査法人、中小監査法人の3つに分類しています。
大手監査法人は、「上場国内会社を概ね100 社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査
実施者が1,000名以上いる監査法人」としており、指定されているのは、有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、EY新日本有限責任監査法人、PwCあらた有限責任監査法人の4法人です。
準大手監査法人は、「大手監査法人に準ずる規模の監査法人」、中小監査法人は、「大手監査法人及び準大手監査法人以外の監査法人」とされています。
引用:令和5年版 モニタリングレポート(公認会計士・監査審査会)
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/shinsakensa/kouhyou/20230714/2023_monitoring_report.pdf
中堅監査法人のクライアント数ランキング
![](https://audit-biz.com/wp-content/uploads/2023/11/3422350_s.jpg)
ここでは、それぞれの法人のクライアント数について見ていきます。
![](http://audit-biz.com/wp-content/uploads/2023/08/cropped-favicon_ab-300x300.png)
非監査証明業務とは、監査や証明を行う業務以外で、コンサルティング業務やアドバイザリー業務などと呼ばれる業務を指します。
監査証明業務
監査証明業務に係るクライアント数の比較です。
〔1位〕太陽有限責任監査法人:1,053社(内、大会社等:345社)
〔2位〕PwC京都監査法人 :329社(内、大会社等:86社)
〔3位〕仰星監査法人 :281社(内、大会社等:116社)
〔4位〕東陽監査法人 :241社(内、大会社等:96社)
〔5位〕三優監査法人 :218社(内、大会社等:77社)
クライアント数では太陽有限責任監査法人が1位で、次いでPwC京都監査法人となっています。
1位の太陽有限責任監査法人は、2位のPwC京都監査法人の3倍以上と圧倒的な多さです。
しかし、「大会社等」だけを見ると、2位のPwC京都監査法人よりも3位の仰星監査法人、4位の東陽監査法人の方が多い結果となっています。
非監査証明業務
非監査証明業務に係るクライアント数の比較です。
〔1位〕太陽有限責任監査法人:408社(内、大会社等:41社)
〔2位〕三優監査法人 :133社(内、大会社等:13社)
〔3位〕PwC京都監査法人 :118社(内、大会社等:19社)
〔4位〕仰星監査法人 :99社(内、大会社等:23社)
〔5位〕東陽監査法人 :56社(内、大会社等:18社)
監査証明業務と同様に、太陽有限責任監査法人が他の4法人に比べて圧倒的に多くなっています。
しかし、2位は監査証明業務で最下位だった三優監査法人であることから、三優監査法人は非監査証明業務に係るクライアントの比率が高いことが伺えます。
非監査証明業務に係るクライアント数の割合は、三優監査法人が一番大きく約37.5%、一番小さいのは東陽監査法人で約18.5%です。
総合(監査証明業務+非監査証明業務)
総合的なクライアント数の比較です。
〔1位〕太陽有限責任監査法人:1,461社(内、大会社等:386社)
〔2位〕PwC京都監査法人 :447社(内、大会社等:105社)
〔3位〕仰星監査法人 :380社(内、大会社等:139社)
〔4位〕三優監査法人 :351社(内、大会社等:90社)
〔5位〕東陽監査法人 :297社(内、大会社等:114社)
総合的に見ても、太陽有限責任監査法人が大きくリードし、他の4法人が後に続く形となっています。
中堅監査法人の社員数ランキング
![](https://audit-biz.com/wp-content/uploads/2023/11/26153599_s.jpg)
ここでは、それぞれの法人の社員数について見ていきます。
全社員
各法人の全社員数の比較です。
〔1位〕太陽有限責任監査法人:96人
〔2位〕東陽監査法人 :67人
〔3位〕仰星監査法人 :55人
〔4位〕三優監査法人 :40人
〔5位〕PwC京都監査法人 :38人
クライアント数が圧倒的に多かった太陽有限責任監査法人の社員数が一番多くなっています。
ただ、クライアント数では2位と3倍以上の差があったにも関わらず、全社員数では2位との差は1.5倍程度に留まっています。
単純計算で、太陽有限責任監査法人は1人あたり約15社のクライアントを担当していますが、東陽監査法人では1人あたり約4.5社です。
![](http://audit-biz.com/wp-content/uploads/2023/08/cropped-favicon_ab-300x300.png)
太陽有限責任監査法人ではより効率的な業務が求められる半面、さまざまなクライアントと接することができるため、短期間で多くの経験が積めるといえるかもしれません。
公認会計士の社員
全社員のうち、公認会計士の社員数の比較です。
〔1位〕太陽有限責任監査法人:92人
〔2位〕東陽監査法人 :67人
〔3位〕仰星監査法人 :55人
〔4位〕三優監査法人 :35人
〔4位〕PwC京都監査法人 :35人
東陽監査法人と仰星監査法人は、全社員が公認会計士で、三優監査法人とPwC京都監査法人は同率の4位です。
東陽監査法人は、クライアント数こそ他の4法人に比べて少ない結果となっていましたが、公認会計士の数では2位となっています。
中堅監査法人の事務所数ランキング
ここでは、それぞれの法人の事務所数について見ていきます。
〔1位〕太陽有限責任監査法人:9事務所
〔2位〕三優監査法人 :5事務所
〔3位〕仰星監査法人 :4事務所
〔4位〕東陽監査法人 :3事務所
〔5位〕PwC京都監査法人 :2事務所
事務所数は、概ね社員数に比例した結果となっています。
ただ、三優監査法人は社員数が上位3法人よりも少なかったにも関わらず、事務所数は5事務所で2位です。
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事務所数と社員数のデータをあわせて見ることで、1事務所あたりどれぐらいの社員が勤務しているかが分かり、おおよその事務所の規模を知ることができます。
中堅監査法人の売上高ランキング
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ここでは、それぞれの法人の売上高について見ていきます。
監査証明業務
監査証明業務に係る売上高の比較です。
〔1位〕太陽有限責任監査法人:136億4,270万9,000円
〔2位〕PwC京都監査法人 :63億6,966万2,000円
〔3位〕東陽監査法人 :47億2,844万2,000円
〔4位〕仰星監査法人 :42億5,165万4,000円
〔5位〕三優監査法人 :39億1,153万4,000円
ここまで、クライアント数、社員数、事務所数のすべてにおいて1位だった太陽有限責任監査法人が、売上高においても2位に倍以上の差をつけて1位となっています。
PwC京都監査法人は、社員数や事務所数こそ少ないものの、売上高では堂々の2位です。
非監査証明業務
非監査証明業務に係る売上高の比較です。
〔1位〕PwC京都監査法人 :6億2,060万5,000円
〔2位〕太陽有限責任監査法人:5億8,293万円
〔3位〕三優監査法人 :4億9,759万4,000円
〔4位〕仰星監査法人 :2億8,395万4,000円
〔5位〕東陽監査法人 :7,251万5,000円
PwC京都監査法人は、社員数と事務所数こそ最下位だったものの、非監査証明業務に係る売上高については、ここまですべてのランキングで1位となっていた太陽有限責任監査法人を抑えて1位となっています。
非監査証明業務に係るクライアントの比率が高かった三優監査法人が太陽有限責任監査法人に次いで3位で、金額にもそれほど大きな差はありません。
仰星監査法人と東陽監査法人は他の法人と比べると売上高が低く、東陽監査法人に関しては唯一、1億円に満たない売上高となっています。
売上高に対する非監査証明業務の割合が一番小さいのは東陽監査法人で約1.5%、逆に割合が一番大きいのは三優監査法人で約10%です。
![](http://audit-biz.com/wp-content/uploads/2023/08/cropped-favicon_ab-300x300.png)
非監査証明業務の割合が大きいほど、コンサルティング業務やアドバイザリー業務などの割合が多く、その方面の経験が積みやすいといえるでしょう。
総合(監査証明業務+非監査証明業務)
総合的な売上高の比較です。
〔1位〕太陽有限責任監査法人:142億2,563万9,000円
〔2位〕PwC京都監査法人 :69億9,026万8,000円
〔3位〕東陽監査法人 :48億95万7,000円
〔4位〕仰星監査法人 :45億3,560万8,000円
〔5位〕三優監査法人 :44億912万8,000円
監査証明業務に係る売上高のランキングと同じ結果になっています。
太陽有限責任監査法人は、5法人の中で唯一、100億円を超える売上高となっています。
非監査証明業務に係る売上高は、監査証明業務に係る売上高とは違った結果になっていましたが、非監査証明業務に係る売上高は全体に対してそれほど大きくないため、総合的なランキングにはあまり影響がありませんでした。
PwC京都監査法人は、社員数と事務所数が一番少ないながら、総合的な売上高では2位という結果になっています。
まとめ
最後に、今回のランキングの内容をまとめてご紹介します。
- クライアント数では、監査証明業務、非監査証明業務、この2つの合計のどれを見ても、太陽有限責任監査法人が2位に3倍以上の大差つけて1位となっている
- 社員数では、全社員と公認会計士の社員のどちらも太陽有限責任監査法人が1位であるものの、2位との差は1.5倍に留まり、3位以降の法人ともそれほど大きな差はない
- 事務所数では、概ね社員数に比例した結果となっているが、三優監査法人は社員数が上位3法人より少なかったにも関わらず、事務所数では2位となっている
- 売上高では、監査証明業務と総合(監査証明業務+非監査証明業務)で太陽有限責任監査法人が2位に倍以上の差をつけて1位となっているものの、非監査証明業務に限ってみるとPwC京都監査法人が太陽有限責任監査法人を抑えて1位となっている
ほとんどのランキングにおいて、太陽有限責任監査法人が2位に大きな差をつけて1位という結果になりました。
2位以降は、どのランキングにおいてもそれほど大きな差はなく、項目によって順位も入れ替わる形となっています。
このランキングにおいて、ただ単に上位か下位かだけを見るのではなく、監査証明業務と非監査証明業務の割合や、社員1人あたりが担当するクライアント数なども見てみると、その法人の特徴が掴めるかもしれません。
就職先を検討する場合などにも、ぜひこのようなデータを参考にしてみてください。