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公認会計士のキャリアパスで重要な監査法人の選び方と働き方のコツ

公認会計士のキャリアパスで重要な監査法人の選び方と働き方のコツ

公認会計士として社会に出る場合、監査法人の選び方によって今後のキャリアは大きく変化します。学生時代に培った専門知識や興味を基に自分にとってベストの監査法人を選ぶ意識が重要です。

そこでこの記事では、公認会計士のキャリアパスの視点による監査法人の選び方と働き方の重要性について紹介します。

監査法人でのキャリアスタートが王道

公認会計士試験論文式試験に合格後、多くの新人は監査法人に就職しキャリアをスタートさせます。したがって、公認会計士としてのキャリアの将来を考えた際、就活での監査法人選びは非常に重要です。

特に、就職先を選ぶ場合、大手、準大手、中小の監査法人ごとに特色が異なり、それぞれの環境によって自身のキャリア形成に大きな影響を与えます。

大手監査法人と準大手・中小法人の違い

大手監査法人(いわゆるBig4)は国内外の大企業や外資系企業をクライアントに抱え、国際的なネットワークを駆使した監査業務を展開しています。

一方、準大手や中小監査法人の場合、新人であっても重要な業務を担当できるケースが多いです。

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準大手や中小監査法人の場合、大手監査法人に在籍する場合とは異なり、監査の計画段階の手続など比較的早期に経験できるので体系的な理解が得られるかもしれません。

監査法人の魅力とキャリアの可能性

監査法人に就職し、働きながら公認会計士としてのキャリアを培う経験は非常に有意義です。いきなり独立開業し企業の監査を担当する、コンサルタント業務に従事するのは現実的ではありません。新人として座学やOJT、実際の業務を通じて一から公認会計士のいろはを学べる環境で経験を積めば、将来のキャリアパスの選択肢が広がります。

そこで、どのような監査法人に就職すればよいか悩むケースが見られます。一般に、大企業志向が強いのは公認会計士の業界でも同様と言えます。ただ、近年、業界の動きに変化が見られ、特に準大手や中小監査法人への注目が高まっています。

なぜなら、大手監査法人は大企業の監査が中心で専門性を深めるチャンスがありますが、準大手や中小監査法人は多種多様なクライアントの監査を通じて、新人も幅広い経験を得やすいからです。

例えば、準大手や中小監査法人の中には、多業種の中小企業やベンチャー企業に対する監査業務等を通じて良好な関係を築いています。このような環境の下で経験を積むと、公認会計士としての多様なスキルや人脈を通じて異業種の企業への転職や独立開業など、より豊かなキャリアパスの機会をつかめます。

監査法人でのキャリア形成

監査法人でのキャリア形成は、特に新人にとって重要なステップです。

環境が整い、実績ある監査法人に所属しながら専門知識と経験を深め、プロフェッショナルとしての能力を磨く充実した日々を送れます。例えば、大手監査法人では多様な業界の大企業との関わりがあり、監査やコンサルタント業務においてもグローバルな視野を持ったサービスが重要です。

一方、準大手や中小監査法人も、さまざまな業種や規模のクライアントとの関係構築に注力しています。特にベンチャー企業や業界固有の課題に対する理解を深めやすい環境です。こうした監査法人により異なる経験を通じ、公認会計士として厳格な監査基準に基づきながらも各企業の独自性を考慮した監査実務のスキル向上に繋がります。

また、個々で配属される部門や担当案件の規模や特徴によっても、さまざまな経験を積む機会が広がっています。大手の場合、大企業の監査業務や国際的な業務に関わる経験を通じ、より高度な専門性と広い視野を身につけられます。

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準大手や中小監査法人ではカバーする業務範囲が広く多様な業務を担当する傾向があり、将来のキャリアを広げるさまざまな経験により実践的なスキルと幅広い知識が身につく特徴を持っています。

このように、公認会計士としてのキャリアパスを形成する上で、監査法人での経験は非常に価値が高いと言えるでしょう。したがって、公認会計士試験論文式試験合格後に監査法人に就職する際は、公認会計士として5年ないし10年単位のキャリアプランを描き、将来のキャリアイメージに近いスキルや経験が習得できる法人選びをおすすめします。

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公認会計士から選ばれているおすすめの監査法人は?大手・準大手・中小を徹底比較 – 会計士キャリアナビ

参照:三優監査法人 – BDO

公認会計士の主なキャリア

公認会計士は就職先により多様なキャリアパスが考えられます。

下記で、それぞれの職場が持つ独自のキャリアの可能性を見ていきましょう。

監査法人

監査法人におけるキャリアは、公認会計士の資格を通じて習得したスキルや経験をダイレクトに活かせる最適な場所です。公認会計士試験論文式試験合格後、大半の人が最初に監査法人に就職し、キャリアをスタートします。

Big4などの大手監査法人での監査業務では、規模の大きい企業の監査を担当することもあります。一方、準大手や中小監査法人は大手と比べ多業種の監査業務に関わることが多いため、より幅広い経験を積むことが可能です。

監査法人でのキャリアの王道は共同経営者であるパートナを目指すことです。監査法人の場合、公認会計士が共同出資する法人であり、パートナーは出資者と経営者が同じであるという性格を持っています。パートナーは監査において監査報告書にサインをする重責を担う一方で、経営をリードするやりがいあふれる職位です。

コンサルティング系(金融系含む)

財務諸表に精通した公認会計士は、コンサルティングファームにおいて会計、財務、事業再生の各分野のアドバイザリー業務に能力を発揮し、クライアントの多様な課題を解決します。

例として、財務デューデリジェンス(財務DD)、企業価値評価など監査法人で培ったスキルを活かせる業務が多くあります。企業全体の方向性の策定やM&Aに関する業務を広く担当するため、財務会計に関する多様な専門知識を身につけられます。

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「財務デューデリジェンス(財務DD)」とは、企業間の買収・売却・合併などM&A取引において売り手(買収される側)企業の財務状況や経営リスクを調査・評価する業務です。

「アップ・オア・アウト(昇進するか、辞めるか)」と呼ばれるコンサルティングファームですが、経営コンサルタントとして自身の実力で勝負する魅力的な業界と言えます。

事業会社(組織内会計士)

さまざまな業界・業種の企業に所属し、経理や財務部門で公認会計士の専門性を活かせるキャリアです。

具体的な業務として、経理部において財務諸表等を会計基準等に従って作成することがあります。また、自社の経営分析や経営計画の立案・実行を担う経営企画部では、マネジメントやM&Aなどの知識や経験で貢献でき、組織内会計士の活躍の場が広がっています。

将来的にCFO(最高財務責任者)をはじめ経営陣へのステップアップの途も期待できます。

会計事務所・税理士法人

公認会計士が会計事務所や税理士法人で働く場合は、主に税務関連の業務を担います。具体的には、決算業務や税務申告、巡回監査、経営コンサルティングなどが含まれます。監査法人での経験を活かして、税務の領域で専門性を磨く機会の多い職場です。

外資系金融企業

外資系金融企業では、一例としてPEファンド(非上場企業に株式投資するファンド)や投資銀行の分野で活躍できます。財務諸表の分析能力が重視されるケースが多いですが、投資判断や経営判断に関する追加のスキルも必要です。

IT・ベンチャー企業

特にCFOとしての役割が期待されています。具体的には、資金調達、財務戦略の策定、内部統制など、会社の財務面全般を管理する重要なポジションとして公認会計士の手腕が求められる現場です。

ベンチャー企業の場合、組織内会計士からCFOへと昇進し、経営戦略や事業計画の立案や実行など会社を動かす立場での活躍が期待されます。CFOとして経験を積めば、IPO企業をはじめ自身のキャリアイメージに合った企業への転職もしやすくなるでしょう。

教育業界

資格取得を目的とする専門学校や大学での講師、セミナーや研修の講師など、公認会計士としての知識を活かして次世代の会計士を育成する役割を担います。

独立開業

独立開業は多くの公認会計士が目指すキャリアパスの一つです。会計事務所の設立やコンサルティング業務を展開するためには、幅広い専門知識とビジネス運営のスキルが求められます。

特に、中小企業の経営者の良き理解者として、経営や財務アドバイザリー業務、内部統制から税務業務などクライアントの抱える幅広い課題を解決します。独立開業の場合、新規顧客の獲得や既存顧客のフォローなど、営業スキルも重要です。

そのため、多くの場合、監査法人や会計事務所での経験を積んだ後に独立するケースが多いです。

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公認会計士のキャリアパスやプランを大公開!監査法人以外のキャリアもある?必要な資格やスキルも徹底解説

参照:財務・税務デューデリジェンス(バイサイド)|サービス:M&A|デロイト トーマツ グループ|Deloitte
参照:「わが国におけるプライベート・エクイティ・ファンドの可能性」|日本銀行

キャリアパスの選択肢が広がるスキルや資格

公認会計士としてキャリアパスの選択肢を広げるために身につけるべきスキルや資格は、下記4つ挙げられます。

ビジネス英語力

グローバル化が進むビジネス環境において、公認会計士にとって会計・財務分野でも英語力は不可欠なスキルです。国際的なクライアントとのコミュニケーション、海外でのビジネスチャンスの拡大、国際的な会計基準の理解など、英語力を身につけておけばさまざまなシーンで業務に活用できます。

国際会計・国際税務・国際法務

国際的な会計基準(IFRS)や国際税務に関する知識をグローバル企業の監査や税務コンサルティングに活かせます。また、多国籍企業の法的コンプライアンスやリスク管理において国際法務の知識も重要な役割を果たします。

USCPA(米国公認会計士)

米国公認会計士の資格であるUSCPAは、グローバルな視野でキャリアを形成したい場合に効果的です。USCPAの資格を持つ公認会計士は国際基準に則った監査業務や海外展開支援のアドバイザリー業務を担当する機会が多く、特にグローバルファームに所属する大手や準大手、一部の中小監査法人においてキャリア形成において有利となるケースがあります。

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英語力や国際的な視野を活かした業務に携わる機会が増えるため、年収アップやキャリアアップにも繋がります。

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USCPAを取得して中小監査法人へ就職!有資格者として働く利点や年収の傾向について – 会計士キャリアナビ 解説

ITスキル

現代の会計業界においても、より一段とITスキルの重要性が高まっています。特に、データ分析、会計システムの運用、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進などのフォローアップが重要です。所属先の法人内はもちろんのことクライアント企業においてもIT技術を活用した業務が増えているため、基本的なITスキルやデータ分析の能力は公認会計士にとって重要な資質となっています。

具体的には、監査業務では内部統制の状況確認で、事業会社では内部統制の構築において役立つスキルです。

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まとめ

公認会計士は、国家資格として優位な専門性を生かし多彩なキャリアパスの選択肢が広がっています。本記事では、監査法人や事業会社、コンサルティング業務、税務アドバイザリーなど、公認会計士が活躍できる分野を紹介しました。また、ビジネス英語力、国際会計・税務の知識、USCPA(米国公認会計士)の資格など、キャリアの選択肢を広げるために有効なスキルや資格についても触れました。

このように、公認会計士としてのキャリアを考える際には、自身の興味や目標に合わせ、キャリアイメージを意識した監査法人選びや就職後の業務経験が重要です。