公認会計士を目指す人にとって、年間休日をはじめ監査法人の休暇制度は重要な関心事でしょう。
監査法人は激務で、
「長時間労働が当たり前」
「休暇取得は難しい」
といったイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
本記事では、監査法人の働き方について、年間休日を中心に下記3つを中心に解説します。
- 働き方改革と年間休日
働き方改革が進む中で、監査法人の年間休日数はどのように変化しているのか?
- 繁忙期と閑散期
繁忙期と閑散期における休暇取得の状況は?
- 職種・職位による違い
職種や職位によって、休暇取得にどのような違いがあるのか?
さらに、現代の監査法人におけるワークライフバランスの取り方についても掘り下げていきます。
長時間労働というイメージが強い監査法人ですが、近年は働き方改革が進み、年間休日120日以上整備している法人も増えてきました。
本記事では、監査法人のワーク・ライフ・バランスをテーマに、キャリアプランの参考となる情報を紹介しますので、最後までご一読ください。
目次
監査法人は激務で休暇が取りづらいのは本当か?
監査法人は長時間労働で休暇が取りづらいというイメージが強いです。そのため、公認会計士に合格後、監査法人に就職する際、ワーク・ライフ・バランスを心配する声をよく耳にします。
ただし「監査法人=休暇取得が困難」というのは必ずしも実態を表した言葉ではありません。
確かに、繁忙期(4月~5月、1月~2月)は企業の決算期が集中するため、監査業務が集中し長時間労働になる場合があります。監査品質を維持し、法的な義務を果たすためには必要だと言えます。
一方で、閑散期(8月~9月、11月~12月)は比較的業務が落ち着き、休暇を取りやすい環境です。
近年では、監査法人も優秀な人材を採用するため、そして働き方改革の影響もあり休暇取得など労働環境の改善に力を入れています。年間休日120日以上確保している法人も増えており、計画的な休暇取得を積極的に推奨する法人も増えています。
例えば、フレックスタイム制度や短時間勤務制度、在宅勤務など個々のニーズにマッチする勤務制度の導入で、プライベートとのバランスを重視する流れも広がっています。
しかし、職種や役職によっては、休暇取得の状況に差がある場合もあります。例えば、マネージャーやシニアマネージャーは部下の指導や育成、被監査会社との折衝など責任が重く、思うような休暇取得が難しいケースがあります。
監査法人と一口に言っても業務量や休暇取得のしやすさなどは法人の規模や文化、携わる監査業務によっても左右されるため、実情は様々だと言えます。
監査法人を選ぶ際には、働き方改革の取り組みや年間休日数、職種や役職による休暇取得の状況などの情報を収集し、比較検討する取り組みが重要です。
監査法人の年間休日制度
監査法人の年間休日は、一般的に120日~140日程度とされていますが、これは法定休暇105日と有給休暇15~20日を合わせた数字です。
下記で、法定休暇と有給休暇の違いに触れた上で、監査法人の年間休日の状況を紹介します。
法定休暇と有給休暇の違い
法定休暇(法定休日)は労働基準法によって定められ、労働者が会社から与えられる休暇です。会社は労働者に法定休暇を与える義務があり、労働者は法定休暇を取得する権利を持っています。
一方、有給休暇は、会社が一定の要件を満たした労働者に与える休暇制度です。法定外休日とも呼ばれます。例えば、勤務年数0.5年で年間10日、6.5年以上で年間20日与えられます。有給休暇の取得には勤務先の承認は不要ですが、事前の申し出が一般的です。
法定休暇(法定休日) | 有給休暇(法定外休日) | |
法的根拠 | 労働基準法 | 労働基準法 |
取得義務 | 会社に義務あり | 会社に義務あり |
取得権 | 労働者に権利あり | 勤務先の承認は不要だが申請が必要 |
日数 | 週休1日原則 | 勤続年数により異なる(原則年間10日以上) |
給与 | 100%支給 | 60%~100%支給 |
監査法人の年間休日数
監査法人の年間休日数は、法定休暇105日と有給休暇15~20日程度を合わせた、120日~140日程度が一般的です。しかし、あくまでも目安であり、法人の規模や業務内容など、勤務先の休暇制度により差があります。
例えば、大手監査法人や準大手監査法人など法人規模が大きなところほど120日以上が大半で、130日から140日程度確保しているケースも多いです。特に準大手監査法人は、大手監査法人に次いで充実した休暇制度を導入しているところも多く、ワークライフバランスを実現しやすい環境と言えます。
準大手監査法人の一例として、三優監査法人の場合、130日間の年間休日と、計画的な休暇取得を推奨する積極的な姿勢で、ワークライフバランスの向上に力を入れています。
一方で、中小監査法人によっては年間休日数が110日から120日程度の法人も見られます。
このように、監査法人を選ぶ際に気になる年間休日数は、大手監査法人、準大手監査法人、中小監査法人といった法人規模による休暇取得の状況などの情報を収集する視点も大切です。
繁忙期は激務が基本
多くの業種と同様、監査法人の繁忙期は特に激務が基本となります。年次決算監査や四半期報告書(四半期レビュー)などの重要業務が集中する時期になると、監査スタッフや管理職にかかるプレッシャーは非常に高まるためです。
繁忙期は一般的に4〜5月にかけて最もピークを迎えます。監査法人において、精密な作業が求められる監査業務の性質上、繁忙期の激務は避けられない側面があります。高度な専門性を要する監査業務は、厳密な期限内での提出が求められるため、長時間労働が常態化するケースが少なくありません。また、被監査会社の業績や会計処理の複雑さによっては、予定していた作業量が増加する可能性も考えられます。
監査法人の休暇取得の実情
監査法人の休暇取得の実情はどうなっているのでしょうか? 閑散期と繁忙期、職位といった視点から紹介します。
閑散期の場合
企業決算が集中しない8月から9月、11月から12月の閑散期は、業務が比較的落ち着く時期です。スタッフは有給休暇や特別休暇などを活用した長期休暇を計画しやすく、多くの監査法人も夏季休暇や年末年始の休暇をこの時期に設けています。
監査法人側も個人のワーク・ライフ・バランスを重視し、休暇希望に柔軟に応じる体制を整え、日々の業務で疲れた心身のリフレッシュの機会を積極的にバックアップします。
繁忙期の場合
一方で、4月から5月、1月から2月にかけて、監査法人の繁忙期には企業決算が集中するため業務が急増します。そのため、残業も多く、休暇取得が難しくなる場合があります。
もし、まとまった休暇を取得したい場合は監査チーム内で相談しながら計画的な休暇申請が必要となり、メンバーは仕事とプライベートのバランスを上手く取りながら厳しい時期を乗り越えるための努力が必要です。
職種・職位による違い
職種や職位によっても、監査法人に勤務する場合の休暇取得の状況は異なります。
下記で、具体的なスタッフ、シニアスタッフ、マネージャーの3タイプを例に挙げながら、一つずつ説明します。
1.スタッフ
スタッフは比較的業務量が少ないため、計画的に休暇を取得しやすい傾向があります。ただ、特に1年目は会計士試験で身につけた会計基準と監査基準の知識を実務に応用するため、一人前の公認会計士になる勉強の方が大変でしょう。また、2年目以降は監査チームの主要メンバーとなり、業務が増える傾向があります。
2.シニアスタッフ
スタッフからシニアスタッフに昇格すると、監査チームを支える人材として監査業務の指揮や指導を担当するため、責任が重くなります。
スタッフに比べて業務量が多いため、特に繁忙期の休暇取得が難しい場合があります。
3.マネージャー
マネージャーは、被監査会社との折衝や監査業務全体の管理など、さらに責任が重くなります。シニアスタッフに比べてより一段と業務量が多いため、繁忙期はもちろん閑散期でも計画的な休暇取得が重要です。
例えば、被監査会社を複数担当するマネージャーの場合、繁忙期は被監査会社との折衝や監査報告書の作成など多くの業務を抱え、残業や休日出勤もあります。
そこで、多くの監査法人では業務分担や効率化ツールなどを導入し、メンバーが休みやすい環境整備に力を入れています。
年間休日・休暇制度のチェックポイント
監査法人の就職活動の際は、気になる法人の採用情報をチェックし、ワーク・ライフ・バランスを比較検討してみましょう。特に就職活動の企業研究では下記3つの視点で年間休日や休暇制度をチェックするのがポイントです。
【年間休日・休暇制度のチェックポイント3つ】
- 計画的な休暇取得ができそうか
- 効率的な仕事の進め方に取り組めるか
- 職場環境の整備に力を入れているか
大手監査法人の年間休日や休暇制度については、下記の記事で詳しく紹介していますので、ご一読ください。
関連記事はこちら▼
監査法人で働く公認会計士の年間休日事情とは?大手監査法人の比較も
【チェックポイントの活用例】三優監査法人の場合
下記で、準大手監査法人の三優監査法人を例にチェックポイントの活用例を一つずつ紹介します。
1.計画的な休暇取得ができそうか
近年は、働き方改革の影響により計画的な休暇取得を推奨する監査法人が増えています。
三優監査法人の正職員の募集要項によると、基本的な休日・休暇は下記の通りです。
◆休日・休暇の一例(三優監査法人)
種類 | 内容 |
休日 | 土曜日・日曜日・祝日・年末年始 |
主な休暇制度 | 有給休暇・夏季休暇・試験休暇・育児・介護休暇ほか |
出産・育児支援制度 | 産前産後休業: 産前6週間前から取得可能、産後は8週間を経過するまで就業させることはない 育児休業: 1歳の誕生日前日まで取得可能、状況に応じ2歳まで延長可能 育児短時間勤務: 最大2時間勤務時間の短縮が可能 子の看護休暇: 子が1名の場合は1年間につき最大5日、2人以上の場合は1年間につき最大10日取得可能 所定外労働の免除: 事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定外労働時間を超えて労働をさせることはない 母性健康管理のための休暇: 母子健康法による健康診査等のために勤務時間内に通院する必要がある場合には通院を認める 母性健康管理のための通勤緩和: 出社、退社時各々30分の遅出、早退を認める 母性健康管理のための休憩: 業務を長時間継続することが身体に負担になる場合、所定の休憩以外に適宜休憩を認める |
ワークライフバランス支援制度 | 有給休暇: 年間最大22日付与、1時間単位で取得可能 夏季休暇: 年間3日付与、6月~10月取得可能 リフレッシュ休暇: 10年勤務につき5日、20年勤務につき10日付与 介護休暇: 1年間につき5~10日間取得可能 |
参照:定期採用 – 募集要項|新卒・キャリア採用情報 – 三優監査法人
参照:制度|新卒・キャリア採用情報 – 三優監査法人
「計画的な休暇取得ができそうか」といった視点で注目すべきところは「ワークライフバランス支援制度」です。
具体的には、「有給休暇」は年間最大22日付与され1時間単位での取得が可能です。そして、「夏季休暇」は年間3日付与され、6月から10月の間に取得可能であり、「リフレッシュ休暇」が勤続年数に応じて付与されるなど、休暇を計画的に取得しやすくするポイントと言えます。上手に活用すれば、長期の連休取得やプライベートや家族のための休暇が計画しやすくなるでしょう。
2.効率的に仕事に取り組めるか
計画的な休暇取得には、業務の効率化が欠かせません。なぜなら、業務量が多いと休暇取得を躊躇してしまう可能性があるからです。
三優監査法人では研修を通して仕事の効率化を高めるスキルアップができます。
例えば、小規模チームで動くため先輩メンバーとの距離が近く、OJTできめ細やかな指導を受けられます。経験豊富なパートナーから直接フィードバックを受けることで、効率的な仕事の進め方を学べます。また、新人研修の第3クールでは、守秘義務を遵守した上で、先輩メンバーと実際に作成した調書を題材に研修を行います。理論と実践を複合させることで、知識の定着を圧倒的に早め、実務ですぐに役立つスキル習得に繋がります。
三優監査法人のように、必要な知識とスキルを効率的に習得し、業務をスムーズに進めるフィードバックを繰り返し受ける経験により計画的な休暇取得が実現しやすくなります。
3.職場環境の整備に力を入れているか
フレックスタイム制やリモートワークなど、ワークライフバランスを実現しやすい制度を導入する監査法人が増えています。
例えば、三優監査法人もキャリア支援と働きやすい制度を積極的に導入しています。事務所や被監査会社先への出勤を必要とせず、在宅勤務が可能なリモートワーク制度や、在宅勤務をサポートするため、IT機材購入を補助する自宅IT環境支援制度があり、職員が働きやすい環境整備に力を入れています。
まとめ
近年、働き方改革の影響により、激務とされる監査法人における休暇取得の環境も大きく改善してきました。就活生のニーズに応え、年間休日数を確保するのはもちろん、積極的に休暇取得を推奨し、より心身をリフレッシュしながらワーク・ライフ・バランスを実現しやすい環境整備が進んでいます。
中でも、準大手監査法人の三優監査法人は、
- 年間最大22日間の有給休暇
- 1時間単位での柔軟な休暇取得
- 育児・介護休暇制度
- ワークライフバランス支援制度
など、充実した休暇制度をいち早く導入しています。
さらに、
- ベテランが寄り添うOJT
- 理論と実践を組み合わせた新人研修
など、業務効率化を高めるための研修制度も充実しています。
監査法人で、仕事とプライベートを充実させながら、公認会計士のキャリアをスタートしませんか?