公認会計士にとって監査法人のパートナーはキャリアの頂点の一つです。
特に、中小監査法人ではパートナーとして共同経営者になることで、高年収とやりがい、充実したワークライフバランスを手に入れる可能性があります。
そこでこの記事では、中小監査法人のパートナーの年収の相場や、入所後パートナーになるまでのキャリアパスについて紹介します。
目次
監査法人のパートナーとは
監査法人のパートナーとは、組織を牽引し、高い専門性と豊富な経験で企業と法人の成長を支える重要な職位です。
単に監査業務の責任者にとどまらず、経営者として組織運営や戦略立案にも携わる役割を担っており、中小監査法人においても監査法人の屋台骨を支える存在と言えます。
下記で監査法人のパートナーの具体的な役割と特徴を紹介します。
監査法人の共同経営者
監査法人のパートナーは、出資者、経営者、責任者の役割を担う、監査法人における最高位の役職です。
被監査会社の財務諸表の適正表示を保証する監査業務の責任者として、高い専門性と豊富な経験に裏打ちされた正確な業務が求められるケースが求められます。
具体的な業務としては、
- 監査チームを編成し、監査計画の作成から実施まで責任を持つ
- 被監査会社との交渉や意見交換を通じて、課題解決を支援
- 監査結果に基づき、経営層への報告書作成
- 法人の経営戦略の立案や実行に携わり、組織の成長を牽引
といった内容があります。
監査法人のパートナーとは、まさに監査法人の運営と企業の成長を支える、責任とやりがいにあふれるポジションです。
高い専門性と豊富な経験を持つ
パートナーは、高度な専門知識と豊富な経験を兼ね備え、被監査会社と法人の成長を支える重要な職位です。したがって、一般的に下記のような条件が揃っている必要があります。
- 公認会計士の経験・スキルが必要
監査法人のパートナーは、監査法人を統括する立場として会計・監査に関する深い知識が不可欠です。そのため、多くの場合、公認会計士試験に合格後、専門的な知識とスキルを習得しながら多様な業界経験を経て昇格するケースが大半です。
公認会計士試験は、合格率約10%と難関資格であり、高い会計知識と論理的思考能力が必要です。監査法人の研修制度を皮切りに豊富な実務経験を通じて、監査手続や財務諸表分析に関する専門知識を身につけなければなりません。
- 監査業務の経験
パートナーは、被監査会社の財務諸表を監査した豊富な実務経験が一般的に求められます。監査手続の理解はもちろん、問題解決能力や、信頼関係を築き円滑な業務を遂行するコミュニケーション能力も必要となります。
一般的に、パートナーは監査法人に入所後、監査チームの一員として多様な業種・規模の企業の監査業務に携わります。被監査会社に対する監査手続を完遂することで、財務諸表の適正性を検証します。
- マネジメント経験
監査チームを編成し、監査業務の品質を保ったうえで期限内に完了させるリーダーシップもパートナーに必要です。チームメンバーの育成や指導、監査業務の完了に向けたマネジメントスキルも求められます。
具体的には、業務執行社員として監査チームを編成し、監査業務を統括します。特に、チームメンバーの指導・育成を通じ、能力向上の支援が重要です。また、監査業務のスケジュール管理や予算管理を行います。
- リーダーシップ
被監査会社との交渉や監査手続の遂行など、様々な場面でリーダーシップを発揮する必要があります。状況判断力や決断力、周囲を巻き込む力などが重要です。
例として、被監査会社との交渉において合理的な判断をしたうえで被監査会社へ指導し、適正な内容になるよう修正を求めることがあります。一方で、監査法人の経営戦略立案に参画し、組織の成長に貢献する、チームメンバーのモチベーションを高め、目標達成に向けて士気を鼓舞するといった要素も求められます。
中小監査法人のパートナーの年収
中小監査法人のパートナーの年収は、一般的に1,500万円〜数千万円と言われています。
しかし、これはあくまで平均相場であり、個々の能力や経験、法人の規模などによって大きく異なります。
職位別の年収
中小監査法人の職位別の年収相場は、以下の通りです。
- スタッフ:450万~600万円
- シニアスタッフ:600万~800万円
- マネージャー:800万~1,200万円
- シニアマネージャー:1,200万円〜1,500万円
- パートナー:1,500万円~数千万円
パートナーは、法人の経営にも携わるため、業績に応じて年収が大きく変動します。また、クライアント獲得能力も重要な要素となります。一般的にパートナーの年収は1,500万円前後からスタートし、豊富な経験と人脈を持つパートナーになると数千万円以上の年収を得ているケースも少なくありません。
また、一般的に、法人規模や事業規模が大きくなるにつれて、年収は高くなる傾向が見られます。そのため、大手監査法人に比べると中小監査法人のパートナーの年収はやや低くなるケースが多いとされています。
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年収に影響を与える要因とは?
中小監査法人のパートナーの年収は、下記のような要因により影響を受けます。
- 個々の能力
例えば、監査スキル、コミュニケーション能力、マネジメント能力など個々の能力が高いほど、高い年収を得られる可能性が高いです。
- 経験
監査法人の勤務年数、被監査会社の規模や業種など業界での経験が豊富なほど、高年収に繋がります。
長い勤続年数で大手企業を中心に豊富な監査経験を持っている場合、パートナーの年収も高くなります。
- 法人の規模
中小監査法人より準大手監査法人、準大手監査法人より大手監査法人といったように、規模が大きい法人ほど、パートナーの年収も高くなる傾向があります。理由として、扱っている案件の規模や複雑性、法人の収益性などが異なる点が挙げられます。
- 業績
法人の業績が好調であれば、パートナーの年収も高くなりやすいです。業績に貢献したパートナーは、ボーナスやインセンティブが基本給に上乗せされるためです。
中小監査法人のパートナーになるためのキャリアパス
中小監査法人のパートナーになるための一般的なキャリアパスは下記の通りです。
- 公認会計士試験論文式試験に合格する
中小監査法人のパートナーを目指すにはまず、公認会計士試験論文式試験への合格が重要です。合格率は約10%の難関資格なので、受験勉強を通じて会計・監査に関する深い知識と論理的思考能力を養いましょう。
試験対策としては、
- 資格スクールの講座に通う
- 独学でテキストや問題集を学習する
- 過去問を繰り返し解く
などがあります。
合格後は、準会員登録を行いつつ、履歴書や職務経歴書を作成するなど就職活動に集中しましょう。
- 監査法人に就職する
公認会計士試験論文式試験に合格後は、監査法人に就職します。
就職活動では、監査法人の説明会や面接に参加し積極的に自己PRを行います。
監査法人の主な選考基準は、
- 公認会計士試験論文式試験の合格状況
- コミュニケーション能力
- 積極性
などが挙げられます。
- スタッフとして監査業務に携わる
監査法人に就職後は、まずスタッフとして監査業務に携わります。
監査基準に関する知識、分析力、コミュニケーション能力、責任感など現場で求められる個々の能力を発揮し業務経験を積みながら、修了考査合格を目指します。
- シニアスタッフに昇進し、より複雑な監査業務を担当する
スタッフとして経験を積んだ後は、修了考査合格を経てシニアスタッフに昇進します。シニアスタッフは、スタッフの指導・育成に加え、より複雑な監査業務を担当する職位です。
監査業務においてチームメンバーの指導をしながら、経験とスキルを培います。
- マネージャー・シニアマネージャーとして、監査業務を統括する
シニアスタッフとしてさらに経験を積んだ後は、マネージャー・シニアマネージャーへと昇進します。マネージャー・シニアマネージャーは監査業務の統括、被監査会社との折衝、法人の経営にも携わります。そのため、マネジメント能力や経営視点、コミュニケーション能力がより求められる職位です。
- パートナーになる
マネージャー・シニアマネージャーとして実績を積んだ上で、パートナーに推薦されます。パートナーは、法人の経営者としての立場で被監査会社の獲得、人材育成、法人の運営などに携わる重責です。したがって、より高度な経営能力やリーダーシップ、組織をリードできる人望が求められます。
中小監査法人のパートナーを目指すメリット
ここでは、中小監査法人のパートナーを目指す3つのメリットについて一つずつ紹介します。
高い年収を得られるチャンスがある
中小監査法人のパートナーの年収は、一般的に1,500万円~数千万円と言われています。
例として、国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、資本金5,000万円以上並びに1億円以上の企業における役員報酬が平均約1,200万円、資本金10億円以上で約1,800万円でした。
一般企業の役員報酬と比べてもまとまった収入が見込め、高い専門性と経験に見合った報酬を得られる可能性があります。
共同経営者として監査法人のマネジメントができる
経営者として法人の運営に積極的に参画できる点もパートナーのメリットです。経営戦略の策定や人材育成など、様々な意思決定に携わることで、自身のリーダーシップを発揮し、法人の成長に貢献できます。
具体的には、パートナーは、経営会議に参加して経営戦略の策定に参画する、スタッフの指導・育成や採用活動を通じて法人の人材育成をするなどです。
幅広い経験を積むことができる
中小監査法人のパートナーを目指す過程で、公認会計士として様々な業種の企業の監査を担当します。そのため、幅広い知識と経験を積み、自身のスキルアップに繋げることができます。
監査業務を通じて会計や税務に関する専門知識を身につけることができ、幅広い知識と経験は転職市場でも高く評価されます。
パートナーを目標にスキルアップした経験は、他の監査法人への転職はもちろん、コンサルティングファームや独立などへの挑戦でも役立ちます。
中小監査法人のパートナーを目指すデメリット
中小監査法人のパートナーを目指すデメリットは、下記4つが挙げられます。
責任が重い
中小監査法人のパートナーは、会計監査の最終責任者かつ法人の経営者として、被監査会社の財務諸表に対する意見表明について責任を負います。監査結果が企業の経営に重大な影響を与えることもあるため、常に高い緊張感と責任感を持って仕事に取り組む姿勢が必要となります。
業務執行役員として監査報告書に署名するなど監査業務の責任を持つ、品質管理や人事・総務の責任者として組織を統轄する場合もあるなど、大変な重責です。
労働時間が長い
決算シーズン後、法定監査の時期を迎える4〜5月の繁忙期には長時間労働になる場合があります。被監査会社の決算に合わせて監査業務が集中するため、残業や休日出勤が避けられない場合も少なくありません。
そのため、日常的に時間管理の徹底や業務の効率化、スタッフの指導・育成の手腕が問われます。
出世競争が激しい
限られた人数しか中小監査法人のパートナーは存在しないため、出世競争が激しいと言えます。パートナーになるためには高い能力と経験に加え、人脈やコミュニケーション能力なども必要です。
専門性の高い知識やスキルが必要
中小監査法人のパートナーには、会計・監査に関する専門性の高い知識やスキルが必要です。最新の情報をアップデートするのはもちろん、積極的に研修やセミナーに参加する、書籍で自己学習を続けるといった努力が求められます。
また、経営に関する知識やリーダーシップなども必要となります。特に、経営戦略やマーケティング、人事管理やリスク管理のほか、企業のコンプライアンスに関する知識を身につけましょう。加えて、ビジョン・目標設定やチームビルディング、コミュニケーション能力のスキルアップといったリーダーシップ能力の開発も欠かせません。
参照:ダブルライセンスでいく~「法律」と「会計」で広がる世界~|資格の学校TAC[タック]
参照:【インタビュー】“会計士×弁護士”。すべての人が個性を発揮して社会貢献できる社会を目指して _ ページ 2 _ 会計士の履歴書
参照:「弁護士&公認会計士、ダブルライセンスのススメ」…四国分会インタビュー実施報告 – 日本公認会計士協会準会員会
まとめ
中小監査法人に入所後、最高位のパートナーを目指すキャリアプランは公認会計士にとって大きな目標となります。
高い年収などを実現したい方にとって、中小監査法人のパートナーの職位は魅力的なキャリアと言えるでしょう。
しかし、パートナーになるための道は容易ではありません。高い専門性と豊富な経験、そして強い責任感とリーダーシップが求められます。そのため、就職活動では準大手監査法人の一つである三優監査法人のように、
- 充実した年収・研修制度
- 多様なキャリアパス
- 風通しの良い社風
など、パートナーを目指す公認会計士を積極的に支援しているところがおすすめです。
一例として、三優監査法人は男性の育児休業取得も積極的に推進する監査法人で、パートナーの中には仕事とプライベートの両面でさまざまなイベントがあった時期に合わせて育児休業を取得したケースもあります。また、海外での業務経験がパートナーで活躍する際にプラスになったケースもあります。
三優監査法人で、パートナーという理想のキャリアを叶えてみませんか?