監査法人への就職を検討する中で、どこが良いのかをどのように比較するべきか、悩んでいませんか?
監査法人は、どこに就職するかで得られるスキルが変わってくるため、将来のキャリアビジョンにも大きく影響してきます。
そこで今回の記事では、監査法人へ就職するならどこが良いのかについて、以下の点を解説します。
- 監査法人の3つの分類
- 大手監査法人はどこが良いのか
- 準大手・中小監査法人はどこが良いのか
- 監査法人の中でどこが良いかは何で比較するべきか
- 監査法人の中でどこが良いか検討する際の注意点
この記事では、金融庁の「公認会計士・監査審査会」より公表されている「令和5年版 モニタリングレポート」に基づいて、監査法人を大手監査法人、準大手監査法人、中小監査法人の3つに分類して解説します。
引用:令和5年版 モニタリングレポート(公認会計士・監査審査会)
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/shinsakensa/kouhyou/20230714/2023_monitoring_report.pdf
目次
監査法人は大きく3つに分類される
監査法人は、大手監査法人、準大手監査法人、中小監査法人の大きく3つに分類されます。
今回は、まずこの3つの分類について、それぞれにどのような特徴があるのかを解説します。
大手監査法人
大手監査法人は、「上場国内会社を概ね100 社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査実施者が1,000名以上いる監査法人」とされています。
これに該当する法人として指定されているのは、有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、EY新日本有限責任監査法人、PwC Japan有限責任監査法人の4法人です。
クライアントは大手企業が中心で、複数人のチームで一つの企業を担当し、その中で業務を分担します。
準大手監査法人
準大手監査法人は、「大手監査法人に準ずる規模の監査法人」とされています。
これに該当する法人として指定されているのは、仰星監査法人、三優監査法人、太陽有限責任監査法人、東陽監査法人、PwC京都監査法人の5法人ですが、PwC京都監査法人は2023年12月1日付でPwCあらた有限責任監査法人と合併し、PwC Japan有限責任監査法人となっています。
準大手監査法人は、ミドルクラスの企業を中心に担当しているため、一人で幅広い業務を行うのが特徴です。
中小監査法人
中小監査法人は、「大手監査法人及び準大手監査法人以外の監査法人」とされています。
準大手監査法人と同じように、規模の小さい企業を担当するため、一人で幅広い業務を行います。
大手監査法人のどこが良いのか
大手監査法人で働くメリットについて解説します。
教育や研修制度が整っている
大手監査法人は、教育や研修制度が整っているので、最初にしっかりと基礎から学びたい人にはおすすめです。
公認会計士試験論文式試験合格後の最初の就職先としても、とても良い環境でしょう。
すでに公認会計士として働いている場合でも、監査法人ではなく一般事業会社で働いている場合は、監査を一からしっかりと学び直せます。
中小監査法人でも教育や研修制度が整っているところはありますが、実務を通して学んでいく場合も多々あります。
大手企業との仕事を経験できる
大手監査法人のクライアントは、大手企業が中心であり、若手のうちから大手企業との仕事を経験できます。
準大手・中小監査法人のクライアントは中小企業が中心のため、大手監査法人だからこそ経験できる部分です。
最新の監査や専門性の高い監査を経験しやすい
大手監査法人は、担当する企業の規模が大きいため、監査で高い専門性が求められることが多々あります。
このようなことから、専門性の高い監査を経験しやすく、監査についてより深い知識を蓄積しやすいのです。
また、とくに中小監査法人と比べると、最新のシステムやツールの利用も進んでいます。
グローバルに活躍できる
大手監査法人では、海外へ研修に行ったり海外に赴任したりするなど、グローバルな活躍が期待できます。
語学が得意な方やグローバル志向の強い方には、このようなチャンスの多い大手監査法人が向いているでしょう。
準大手・中小監査法人ではグローバルに活躍できない、というわけではありませんが、やはり大手監査法人に比べると機会は少なくなります。
ただし、準大手監査法人では大手監査法人よりもライバルが減ると考えると、チャンスが多いといえるかもしれません。
年収が高い
大手監査法人は、基本的に準大手・中小監査法人よりも年収が高い傾向にあります。
ただし、定期採用では大きな差はなく、また、経験を積むごとに差がなくなってくる場合もあります。
経験を積むごとに差がなくなる理由としては、準大手・中小監査法人の方が昇進のスピードが早いほか、準大手・中小監査法人の方が人手不足なので、経験者の採用時に年収を高く提示することがあるためです。
知名度がある
大手監査法人には、準大手・中小監査法人にはない圧倒的な知名度があります。
社会的な評価を重視している場合や、将来、独立や転職を考えている場合には、大手監査法人で経験を積むのも一つの方法です。
転職時にインパクトを与えられるのはもちろんのこと、独立する場合も、大手監査法人での経験が信頼へと繋がり、それを理由に仕事を依頼してくれるクライアントもいるはずです。
準大手・中小監査法人のどこが良いのか
準大手・中小監査法人で働くメリットについて解説します。
作業を効率化しやすい
監査法人の規模によらず、監査は一つの案件を複数人で担当します。
準大手・中小監査法人は会社の規模が大きくなく、1つの手続に要する時間が比較的少なくなるため、一人が多様な業務を行います。
このため、おのずと全体像が把握しやすくなり、作業効率を上げる工夫もしやすくなるのです。
一方で、大手監査法人では全体の中の一部の業務を行うことが多く、全体像の把握が難しくなります。
自分のしている業務が、その後どのように活用されるのかや、なぜその業務が必要なのかなどが分からなければ、効率化のためにどのようなフロー変更が必要かも判断できません。
このようなことから、ただ与えられた業務をこなす形となってしまい、効率化を図ることが難しくなるのです。
作業効率を上げることで業務に余裕ができるので、残業の削減や休暇取得が可能となり、ワークライフバランスも整えられます。
昇進のスピードが早い
大手監査法人では、ある程度までは順調に昇進できますが、一定以上のポジションになると昇進が難しくなります。
優秀な人でも昇進が難しいほどで、理由は、限られたポジションに対する競争率が高いためです。
それに比べると、準大手・中小監査法人は競争率が大手監査法人ほどではなく、その分昇進のスピードも早くなります。
年収も昇進するほど高くなるため、上のポジションを狙えるような人では、大手監査法人よりも高いポジションと年収を得られるかもしれません。
人脈をつくりやすい
大手監査法人では、管理職にならない限り、担当している企業の経営陣と深い話をする機会はありません。
しかし、準大手・中小監査法人では、規模の小さい企業を担当することが多いため、経営陣との距離が自然と近くなります。
経営陣とコミュニケーションを多くとるため、そこから人脈をつくることが可能です。
また、職場内の人との距離感も大手監査法人より近く、管理職の人と話せる機会も多々あります。
将来、独立を考えているなど、多くの人脈をつくっておきたいと考えている人には、とても良い環境です。
監査法人の中でどこが良いかは何で比較するべきか
監査法人を比較する際は、ホームページや口コミなどを活用する方が多いでしょう。
しかし、それ以外にも、大手監査法人などの規模の大きな法人で公開されている「業務及び財産の状況に関する説明書類」も活用できます。
この中では、業務内容や経営状況、担当している企業や売上高、在籍している公認会計士の数などが公開されています。
どれも就活において参考になる項目ばかりなので、複数の法人を比較したり、同じ法人で年度ごとに比較したりするのがおすすめです。
監査法人の中でどこが良いか検討する際の注意点
監査法人を選ぶ際には、メリットだけでなくデメリットも知っておかなければなりません。
ここでは、監査法人の中でどこが良いか検討する際の注意点について解説します。
大手監査法人では最初は雑務ばかりになることもある
大手監査法人では、最初の数年は簡単な業務や雑務を多く行うことがあります。
想像よりも簡単で単調な業務の連続に、ギャップを感じる人もいるようなので、最初の数年は仕方がないと最初から割り切っておくことが大切です。
中小監査法人では人間関係で問題を抱えやすい
大手監査法人は社員数が多く、案件ごとにチームが変わります。
しかし、特に中小監査法人ではそもそもの社員数が少ないため、一緒に業務を行うメンバーはほとんど変わりません。
案件ごとにチームが変わるのであれば、相性が合わないメンバーがいても、しばらくすればメンバーが変更されますが、中小監査法人ではそうはいきません。
相性が合わないメンバーがいても、ずっと我慢し続けなければならず、その状況を解決したい場合には転職するしかないこともあります。
また、中小監査法人は社員数が少ないので、人と人との距離感が近く、そのような環境が苦手な人にはあまり向かないでしょう。
準大手・中小監査法人は各法人で特色や方針が異なる
大手監査法人は、どこも比較的、特色や方針が似ています。
一方で、準大手・中小監査法人は、各法人で規模や業務内容、方針が大きく異なります。
したがって、事前にそれらをリサーチし、自分に合った法人を選ぶことが大切です。
監査法人は規模によって忙しさのパターンが違う
監査法人は、大手監査法人や準大手・中小監査法人などの規模を問わず、繁忙期は激務です。
特に、大手監査法人は、規模の大きな企業を中心に監査業務を担っており、そういった大企業は3月決算である事が多く、3月に忙しさが集中する傾向にあります。
準大手・中小監査法人は、ミドルクラス以下の会社を中心に監査業務を担っていますが、このような会社の決算月は会社によってバラバラなため、大手監査法人に比べると忙しい時期は重なりづらいです。
準大手・中小監査法人の中には、繁忙期でない時期には残業がほとんどない、といった法人もあります。
とはいえ、自身が何月決算の会社を担当するかによっても、忙しい時期は大きく変わってくることに注意しましょう。
監査法人は離職率が高い
監査法人は、大手監査法人や準大手・中小監査法人などの規模を問わず、離職率が高いといわれています。
業務量が多すぎることや独立のためなど、離職の理由は人によって様々ですが、長く続けていくというよりは、次のステップへ進んでいく人が多いのです。
そのため、あらかじめ長い目で見たキャリアプランを考えておくと良いでしょう。
また、事前に志望する法人の離職率や離職理由について調べておくことも大切です。
まとめ
最後に、今回の記事の内容をまとめてご紹介します。
- 金融庁「公認会計士・監査審査会」の「令和5年版 モニタリングレポート」によると、監査法人はその規模によって大手監査法人、準大手監査法人、中小監査法人の3つに分類される
- 大手監査法人の良い点は、教育や研修制度が整っていること、大手企業との仕事を経験できること、最新の監査や専門性の高い監査を経験しやすいこと、グローバルに活躍できること、年収が高いこと、知名度があること、などがある
- 準大手・中小監査法人の良い点は、早くから様々な経験が積めること、作業を効率化しやすいこと、昇進のスピードが早いこと、人脈をつくりやすいこと、などがある
- 監査法人の中でどこが良いかは、ホームページや口コミだけでなく、各法人が公開している「業務及び財産の状況に関する説明書類」で、担当している企業や在籍している公認会計士の数なども確認すると良い
- 大手監査法人では最初は雑務中心になりやすい、中小監査法人では人間関係の問題を抱えやすく各法人で特色や方針も異なる、監査法人は規模によって忙しさのパターンが違っていて離職率も高い、などのデメリットも知っておく
どの監査法人が良いのかは、各々の描くキャリアビジョンによって異なります。
そのため、自身の描くキャリアビジョンに合った経験の積める監査法人を選ぶことが大切です。
監査法人の規模によるメリットとデメリットを理解し、志望する監査法人の特徴についてもしっかりとリサーチしておくようにしましょう。