監査法人の就活において気になるのが、勤務地ではないでしょうか。
今住んでいる地域で就職できるのか、希望する勤務地での勤務は可能なのかなどは、就活において多くの方が重視しているポイントだと思います。
そこで今回の記事では、監査法人の勤務地について、以下の点を解説します。
- 監査法人の勤務地はどこがあるのか
- 大手監査法人の勤務地
- 監査法人の就活で勤務地はいつ決まるのか
- 監査法人で東京以外の勤務地を選ぶメリット
- 監査法人に勤務地の変更はあるのか
- 監査法人の勤務地ごとの年収
監査法人に就職した後に転勤があるのかなど、就活において確認しておきたい点も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
監査法人の勤務地はどこがある?
監査法人の主な業務は、上場企業の監査を行うことです。
上場企業の本社は、半数以上が東京にあり、次に多い大阪の5倍近くになります。
このようなことから、公認会計士試験に合格した方の半数以上が東京で勤務しています。
監査法人を設立する場合には、日本公認会計士協会に入会しなければなりませんが、日本公認会計士協会の「会員数等調」によると、やはり監査法人の会員数が最も多いのは東京です。
2023年10月末時点の監査法人の会員数は286で、この内、60%以上にあたる180の監査法人が東京にあります。
その他を含めた各地域の会員数は、以下の通りです。
会員数(監査法人) | |
北海道 | 6 |
東北 | 3 |
埼玉 | 0 |
千葉 | 1 |
東京 | 180 |
神奈川 | 3 |
東海 | 16 |
北陸 | 1 |
京滋 | 10 |
近畿 | 41 |
兵庫 | 3 |
中国 | 5 |
四国 | 5 |
北部九州 | 8 |
南九州 | 3 |
沖縄 | 1 |
合計 | 286 |
引用:会員数等調(日本公認会計士協会)
https://jicpa.or.jp/about/0-0-0-0-20231031.pdf
東京や近畿に集中しているものの、日本全国にまんべんなく監査法人があることが分かります。
今住んでいる地域で働きたい場合や、東京以外で働きたい場合でも、その希望を叶えることは可能といえます。
大手監査法人の勤務地
各大手監査法人の事務所がある都道府県は、以下の通りです。
同じ都道府県に複数の事務所がある場合もあります。
有限責任あずさ監査法人 | EY新日本有限責任監査法人 | 有限責任監査法人トーマツ | PwC Japan有限責任監査法人 | |
北海道・東北 | 北海道・宮城・岩手 | 北海道・宮城・山形・福島 | 北海道・宮城・岩手 | ― |
関東 | 東京・埼玉・神奈川・群馬 | 東京 | 東京・埼玉・神奈川・群馬 | 東京 |
中部 | 新潟・富山・石川・静岡・愛知・福井・岐阜 | 新潟・長野・富山・石川・静岡・愛知 | 新潟・長野・富山・石川・静岡・愛知 | 愛知 |
近畿 | 大阪・京都・兵庫・三重 | 大阪 | 大阪・京都・兵庫 | 大阪・京都 |
中国・四国 | 岡山・広島・山口・愛媛 | 広島・香川 | 岡山・広島・香川・愛媛 | ― |
九州・沖縄 | 福岡 | 福岡・沖縄 | 福岡・大分・熊本・鹿児島・沖縄 | 福岡 |
合計 | 23ヶ所 | 16ヶ所 | 25ヶ所 | 5ヶ所 |
引用:事務所一覧(KPMGジャパン)
https://kpmg.com/jp/ja/home/about/office-list.html
引用:事務所所在地(EY新日本有限責任監査法人)
https://www.ey.com/ja_jp/people/ey-shinnihon-llc
引用:オフィス紹介(有限責任監査法人トーマツ)
https://recruit.tohmatsu.co.jp/offices
引用:法人概要(PwC Japan有限責任監査法人)
https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/assurance.html
事務所がある都道府県の数に違いはありますが、どの監査法人も全国に事務所があることが分かります。
ただ、PwC Japan有限責任監査法人だけが圧倒的に少なく、有限責任あずさ監査法人と有限責任監査法人トーマツは全国各地にたくさん事務所があります。
このようなことから、これらの都道府県が勤務地となる可能性があるといえるでしょう。
勤務地の希望がある場合には、事前にどこに事務所があるのかを確認してエントリーするようにしましょう。
エントリー時に勤務したい地域だけでなく、今後キャリアを重ねていく中で、勤務したい地域がある場合には、それらの地域に事務所があるのかも確認しておくのがおすすめです。
例えば、エントリー時は東京での勤務を希望しているものの、いずれは実家のある地元に帰るかもしれない場合などです。
その時に、希望通りの地域へ異動できるかは分かりませんが、その地域に勤務する監査法人の事務所がなければ異動すること自体ができません。
先の可能性を見越しておくことで、ライフスタイルの変化にも対応しやすくなります。
なお、各大手監査法人の本部は東京にあり、EY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwC Japan有限責任監査法人は同じ千代田区にあります。
EY新日本有限責任監査法人と有限責任監査法人トーマツは最も近く、徒歩10分の距離です。
有限責任あずさ監査法人の本部だけが少し離れた新宿区にあり、有限責任あずさ監査法人の本部とEY新日本有限責任監査法人の本部が最も離れています。
徒歩だと5km弱離れていて、1時間ほどかかる距離です。
近畿も東京に次いで監査法人が多い地域で、すべての大手監査法人が事務所をおいているのが大阪です。
EY新日本有限責任監査法人とPwC Japan有限責任監査法人は大阪市北区、有限責任あずさ監査法人と有限責任監査法人トーマツは大阪市中央区に事務所があります。
同じ区内の監査法人同士は、お互いに徒歩10分圏内の距離です。
大阪市北区と大阪市中央区もそれほど離れておらず、徒歩だと約1.5km、20分ほどの距離です。
監査法人の就活で勤務地はいつ決まるのか
監査法人は、就職後に勤務地が決まるわけではなく、希望の勤務地でエントリーをする形になります。
合格したら、そのままエントリー時に選んだ勤務地で働くことになるので、配属が決まるまで勤務地が確定しない、ということがありません。
どの地域で働くのかは、多くの人にとって重要なポイントなので、エントリー時に自分で勤務地を選べるのはとても良い点です。
ただし、地方の事務所は募集をしていなかったり、募集している人数が少なかったりすることがあります。
場合によっては、東京や大阪などの規模の大きな事務所よりも、内定するのが難しいこともあるかもしれません。
特に監査法人は勤務地ごとの採用となるので、エントリー時に、なぜその地域で勤務したいと思ったのかも明確にしておくようにしましょう。
また、東京よりも地方の方が早く選考が行われるなど、選考のスケジュールにも違いがあるので、早めに情報収集を始めることをおすすめします。
地方にある事務所の採用活動を、東京や大阪の事務所で行う場合もあります。
監査法人で東京以外の勤務地を選ぶメリット
東京以外の勤務地を選ぶメリットとして、住み慣れた場所や地元で働ける、という点があります。
地元や住んでいる場所が、東京や東京に近い場合は、東京で勤務することにそれほど問題はないかもしれません。
しかし、東京から離れた地域で生活している場合だと生活ががらりと変わるほか、地元の場所によっては頻繁に帰れなくなることもあります。
このようなことから、地元や住んでいる場所が東京から離れている場合には、生活スタイルを変えることなく住み慣れた場所で生活できる点は、大きなメリットだといえます。
地元や住んでいる場所が東京から近い方でも、地方の環境の方が自分には合うという方もいるでしょう。
また、住みやすさだけでなく、中には幅広い経験を積みたいという理由から、東京以外の勤務地を選ぶ方もいるようです。
東京の事務所に比べて、多くのクライアントに関わることができたり、難易度の高い科目などを幅広く経験できたりするためです。
この特徴を利用して、最初に地方で幅広い経験を積み、その上で今後のキャリアを選択する、という方法をとる方もいます。
事務所内の人数も東京に比べて少ないことから、人と人との距離が近く、コミュニケーションがとりやすいのも魅力です。
東京の事務所では、同じフロアで働いている人の中にも知らない人がいる、ということがあります。
しかし、地方の事務所では、同じ事務所で働く人同士が全員お互いを知っていて、気さくに話も聞ける、といったような環境です。
中には、管理職などの立場の人とも、同じように話ができる場合もあるようです。
一緒に働く人達と、十分なコミュニケーションを取りながら働きたい、という人には向いています。
このような風通しの良さは、実際に体験してみないと分かりにくいこともあるので、就活の中で実際に働く人と話をしてみるのも良いかもしれません。
監査法人に勤務地の変更はある?
監査法人では、基本的に転勤による勤務地の変更はほどんどありません。
大きな銀行や商社のような、急な辞令による転勤もないと考えて良いでしょう。
ただし、全くないわけではなく、地方の事務所を強化するなどの理由から、転勤の辞令が出る可能性もゼロではありません。
監査法人は、地方事務所の方が人員が不足していることが多く、マネージャーやシニアマネージャー以上の管理職になると、このような辞令が出ることがあります。
理由としては、地方事務所で幅広い経験を積むことで、すでにいろいろな経験を積んでいるマネージャーやシニアマネージャーの、さらなるステップアップを図るためです。
とはいえ、本人の意に反して転勤させられることはないようなので、過敏になる必要はないでしょう。
マネージャーやシニアマネージャーへの昇格を条件に、地方事務所への転勤を提案されることもあるようで、パートナーともなると辞令に従うことが多いようです。
その他、東京と地方の事務所間で人員を交換することもあるようです。
ただ、この場合、数年後には元の事務所に戻ることが多いようなので、やはり最初にどこを勤務地として選ぶかは重要になってきます。
異動があったとしても、最終的に一番働き続けたい地域で就活を行うのがおすすめです。
さまざまな場所に事務所のある監査法人への就職を考えている場合には、この点も念頭に置いておくようにしましょう。
とはいえ、中にはさまざまな地域で働いてみたい、という方もいると思います。
監査法人は、必ずその地域で勤務し続けなければならないわけではなく、比較的異動の希望が通りやすい業種でもあります。
中には、自身の希望で異動ができる制度がある監査法人もあるほどです。
東京で勤務していて、家庭の事情などで実家の近くに戻りたい場合や、地方で勤務していて、東京で経験を積みたい場合など、そのときどきの状況に応じた対応ができます。
監査法人の勤務地ごとの年収
同じ業種でも、会社や勤務地ごとに年収が違うのは当たり前で、監査法人も例外ではありません。
地方に比べると、東京の方が年収が高いことが多いですが、そうでない場合もあるでしょう。
では、特に大手監査法人など、さまざまな場所に事務所がある場合、同じ監査法人内でも勤務地ごとで年収は変わるのでしょうか。
大手監査法人の採用情報によると、その点について特に何も記載がない場合もあれば、「首都圏」と「地区」で給与が分けて記載されている場合もあります。
また、「首都圏手当」として記載されているものもありました。
ただ、大手監査法人の募集要項を見ると、数万円以上違うということはなく、数千円~1万円程度の違いとなっています。
首都圏と地方の監査法人ごとの年収の違いも、月額数万円程度であることが多いようです。
首都圏の方が物価が高いことを考えると、その分が上乗せされているだけであって、首都圏だから年収が高いというわけではないでしょう。
さらに、地域で差が出やすく、金額も大きいのが住居費ですが、多くの監査法人では住宅手当がありません。
この点から見ても、地方にある監査法人や事務所の方が、生活に余裕ができやすいといえます。
まとめ
最後に、今回の記事の内容をまとめてご紹介します。
- 監査法人は日本全国にあるが、その中の半数以上が東京にあり、次に多いのが近畿である
- 大手監査法人は、日本全国に事務所があり、規模の大きな東京と大阪の事務所は、各監査法人の事務所が比較的近くにある
- 監査法人は、希望する勤務地ごとにエントリーする形なので、エントリー時には、なぜその勤務地を選んだかも明確にしておく必要がある
- 東京以外の勤務地を選ぶメリットは、自分に合った環境で働けること、早期に幅広い経験が積めること、コミュニケーションがとりやすいことなどがある
- 監査法人では基本的に転勤はほとんどないが、自ら希望して勤務地を異動することは可能で、そのような制度のある監査法人もある
- 監査法人では、首都圏と地方で給与が若干違ったり、首都圏手当が出たりすることはあるものの、勤務地による年収の違いはあまりない
監査法人は、日本全国に事務所があり、比較的自分で勤務地を選択しやすい業種です。
また、選択した勤務地から転勤しなければならないような辞令が出ることはほとんどなく、逆に希望すれば勤務地の変更も通りやすいといわれています。
勤務地によって、経験できる業務や事務所の雰囲気も変わってくるため、その点をふまえた上で勤務地を選択すると良いでしょう。