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監査法人の繁忙期はいつ?年間スケジュールや1日の流れもご紹介

監査法人は激務といわれることもありますが、その中でも最も忙しくなる繁忙期はいつなのでしょうか。

繁忙期はどれぐらい続くのか、どの程度忙しいのか、閑散期はどのぐらい業務が落ち着くのかは、監査法人で働くにあたってとても気になるところです。

そこで今回の記事では、監査法人の繁忙期について、以下の点を解説します。

  • 監査法人の繁忙期について
  • 監査法人の年間スケジュール
  • 繁忙期とそうでない時期の1日の流れ
  • 繁忙期の忙しさについて
  • 繁忙期を乗り越えるためのポイント
  • 長期休暇を取りやすい時期
  • 監査法人の繁忙期の今後について

監査法人の繁忙期はいつ?

日本では3月決算の会社が多いため、監査業界全体としては4月~5月が繁忙期となります。
他にも、外資系企業では12月決算の会社が多いので、1月~2月も繁忙期です。

1月~2月と4月~5月以外の月は繁忙期ではありませんが、自身が何月決算の会社を担当するかによって忙しい時期は大きく変わります。
この理由は、期末監査と呼ばれる決算後の作業がある月が最も忙しくなるためです。

では、大手監査法人と準大手監査法人~中小監査法人ではどう違うのでしょうか。

大手監査法人では規模の大きな会社を中心に、準大手監査法人や中小監査法人はミドルクラス以下の会社を中心に監査業務を担っています。

そのため、大手監査法人では3月決算に関する業務が中心となり、準大手監査法人~中小監査法人では一般的な決算月(12月、3月)もあるものの、それ以外の決算月(12月、3月以外)に関する業務も比較的多くあります。

従って、大手監査法人は1月~2月と4月~5月に忙しさが集中し、準大手監査法人~中小監査法人は1年間を通して忙しさが平準化されるイメージです。

ただし、これらはあくまでも監査法人の規模で比較したときのイメージであり、やはり一番は、自身が何月決算の会社を担当しているかが大きく影響します。

主な業務は、年度末に行う「計算書類等」、「四半期報告書」、「有価証券報告書」及び「内部統制報告書」に対する意見表明です。

これらの報告書は、株主や投資家に公表する企業の業績や財務状況を記載したもので、それぞれ期限内に提出しなければなりません。

各報告書の提出期限と、それに伴って忙しくなる時期は以下の通りです。

提出期限忙しくなる時期
(3月決算の場合)
有価証券報告書事業年度終了後から3か月以内4月~6月
四半期報告書四半期終了後から45日以内四半期決算月(6月、9月、12月)の
翌月から1か月半

監査法人の年間スケジュール

3月決算の被監査会社を担当する場合における、監査チームの主な年間スケジュールは以下の通りです。

3月決算の場合、1年間の監査スケジュールが始まるのは7月頃で、終わりは6月末となります。

スケジュール詳細
7月頃監査計画・キックオフミーティングの開催被監査会社の情報を取得・共有し、
監査計画を立てる。
7月半ば~
8月初め
第1四半期レビュー四半期のレビュー報告書とは、
経営者の作成した四半期財務諸表について、
一般に公正妥当と認められる
四半期財務諸表の作成基準に準拠して、
企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を
適正に表示していないと信じさせる事項が
すべての重要な点において認められなかったかどうかについて
監査人の結論を述べた報告書です。
8月末~期中監査年度末の監査の準備において重要な業務で、
内部統制の検証をしたり
支社などへ赴いて監査したりする。
9月経営者とのディスカッション監査人が、企業の事業内容等に関する情報や、
企業側のリスク評価をするために必要な情報を得るために
経営者等と協議する。
10月半ば~
11月初め
第2四半期レビュー
11月半ば~
12月末
期中監査
1月半ば~
2月初め
第3四半期レビュー
2月末期中監査
3月末日頃実査や棚卸立会資産の現物を実際に確かめたり、
実地棚卸の現場に同席したりして、
必要な監査作業を行う。
4月半ば~
5月初め
期末監査決算期末日時点の資産・負債の残高、
1年間の収益・費用の計上額が
正しいかどうか監査手続を実施し、
計算書類が適正に作成されているかも検討して
監査結果を取りまとめる。
5月半ば監査結果を監査役会へ報告期末監査の結果や実施した監査手続、
リスクが高いとして重点的に監査を実施した点などを
監査役会で説明し、監査報告書を提出する。
5月末~
6月初め
有価証券報告書のチェック作業被監査会社が作成した
有価証券報告書のドラフトをチェックする。
6月末定時株主総会被監査会社が株主に対して
計算書類の報告などを行う際に、
被監査会社からの要望によっては、
監査責任者もしくは主査が控える。

監査法人の繁忙期とそうでない時期の1日の流れ

監査法人の繁忙期とそうでない時期の1日の流れを見てみましょう。

監査法人では繁忙期とそうでない時期の差が大きく、生活にもメリハリをつけることが必要です。

繁忙期

以下は、監査法人の繁忙期における1日の流れの一例です。

9時半始業
9時半~10時メール等の確認
10時~10時半チームミーティング
10時半~12時確認状のコントロール
12時~13時昼食・休憩
13時~16時証憑突合などの実施
16時~17時被監査会社の経理の方に質問
17時~18時チームミーティング(進捗確認)
18時~21時分析的手続などの実施
21時終業

被監査会社が遠方の場合には、いつもより早めに家を出なければならないこともあります。

日中に被監査会社で業務を行う場合、被監査会社で夜遅くまで業務を行えない場合もあります。

この場合は、夕食のタイミングで被監査会社から事務所や自宅へ移動することもありますが、その移動の間に夕食を済ませてしまうこともあります。

夕食を食べた後も引き続き業務を行い、21時といった夜遅くまで業務を行います。

仕事が終わった後は、また翌日に備えなければならないため、繁忙期は趣味などに時間を使うことは難しいでしょう。

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繁忙期は、定時で帰れることがなかなかなく、休日出勤も珍しくありません。

繁忙期でない時期

以下は、監査法人の繁忙期でない時期における1日の流れの一例です。

9時半始業
9時半~10時メール等の確認
10時~10時半チームミーティング
10時半~12時期中取引の証憑突合の実施
12時~13時昼食・休憩
13時~16時分析的手続の実施
16時~17時被監査会社の経理の方に質問
17時~17時半チームミーティング(進捗確認)
17時半終業

9時半頃に業務を開始し、定時の17時半に業務を終了します。

この時期はほとんど残業がないので、仕事が終わった後は資格取得のための勉強をしたり、趣味の時間に当てたりするなど、ゆっくりと過ごすことができます。

監査法人の繁忙期は激務なのか

監査法人の繁忙期では、夜遅い時間まで働くことも珍しくありません。

繁忙期だけとはいえ、1日のうちの12時間近く業務を行うとなると、ある程度の忍耐が必要です。

ただ、残業をした分はきちんと給与に反映されるので、その点をモチベーションにしたり、納得感を持って働いていたりする人もいます。

なお、近年ではテレワークの普及により、仕事から離れづらくなり、ついつい働きすぎてしまうこともあるので、この点の管理をしっかり行う必要があります。

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近年では、さまざまな業種でAIによる業務改善が進んでいますが、監査業務は性質上、人の手に頼らざるを得えない事も多く、AIの恩恵を受けづらい業務です。

監査法人の繁忙期を乗り越えるためのポイント

監査法人の繁忙期は、とにかく業務時間が長いのが特徴です。

長い時間、集中して業務を行うと、たとえデスクワークであってもかなりの体力を消耗します。

加えて、被監査会社に出向くなど、出張や移動もあるので、肉体的な疲労も伴います。

年齢が若い方が有利といえますが、年齢に関係なく日頃から運動をするなどして体力をつけておくと繁忙期も乗り越えやすいかもしれません。

また、監査法人の繁忙期では体力面だけでなく精神面も重要です。

怒号が飛び交うようなことはありませんが、細かい作業を長時間行うため、精神的にも疲れが出やすくなります。

忙しさの中でも一定の精神を保つことが、繁忙期を乗り越えるための一つのポイントといえるでしょう。

そのためにも、業務が終わってから寝るまでの間や休日は、仕事のことを忘れてリフレッシュできるよう心がけることが大切です。

閑散期の間に長期休暇を取って、思いっきり好きなことをするなど、生活にメリハリをつけることをおすすめします。

業務面においても、タスク管理を徹底して今すべきことを明確化し、後でよい業務は閑散期にずらすなど、できるだけ業務量を減らす努力も必要です。

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すべてを自分一人で抱え込もうとせず、ときにはチームのメンバーや上司に助けを求めることも必要です。

監査法人で長期休暇を取りやすい時期

監査のスケジュールは、大体が四半期ごとのサイクルで1年単位で構成され、繁忙期が過ぎれば閑散期が訪れます。

具体的には、8月半ば~9月半ばが閑散期になりやすく、この時期であれば長期休暇の取得も可能です。

被監査会社が3月決算の場合、1年間の監査スケジュールの始まりは7月頃で、キックオフミーティングに参加したり監査計画を立てたりし、7月半ば~8月初めに第1四半期のレビューを行います。

第1四半期のレビュー後は、10月に次の四半期レビューが始まるまで比較的業務は落ち着くので、8月半ば~9月半ばに長期休暇を取る人も多くいます。

この時期は、世間的にも夏季休暇の時期なので、そういった面でも長期休暇を取りやすい時期といえるかもしれません。

とはいえ、結局のところは自身が担当する被監査会社が何月決算なのかによって、長期休暇を取りやすい時期は変わってきます。

ただ、監査法人の被監査会社のほとんどは上場している日本企業のため、長期休暇を取りやすい時期は、おおむね8月半ば~9月半ばと考えてよいでしょう。

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閑散期に2週間~3週間の長期休暇を取得する人もおり、この時期に海外旅行などを楽しんだり、ゆっくり帰省したりすることもできます。

今後、監査法人の繁忙期の状況は変化していく可能性も

近年、働き方改革や法改正によって働き方が見直されています。

一昔前は、1か月に200時間を超えるような異常な残業もありましたが、現在ではこのような残業は違法です。

このような時代の流れから、今後はさらに繁忙期の忙しさが緩和されていく可能性があります。

しかし、忙しさを緩和するには人材の補充が必要ですが、監査法人は離職率が高く、人材不足が深刻な問題です。

さらに、年々監査手続も厳しくなっており、その分、業務量も増えているので、繁忙期の労働時間を減らすのはそう簡単ではありません。

とはいえ、「過度な長時間労働は避けたい」という人も増えており、このような理由で離職してしまう人を減らすのも監査法人の課題です。

そこで、トレーニー制度の導入や補助スタッフの活用をして、1人当たりの業務量を調整する工夫をしている監査法人もあります。

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単純な監査手続であれば、補助スタッフに任せることができます。

まとめ

最後に、今回の記事の内容をまとめてご紹介します。

  • 一般的に監査法人の繁忙期は1月~2月と4月~5月であるものの、自身が何月決算の被監査会社を担当するかによって忙しい時期は変わる
  • 3月決算の場合、1年間の監査スケジュールは7月頃に始まって6月末に終わる
  • 監査法人の繁忙期は、9時半始業、21時終業などで残業が多くなるものの、閑散期は9時半始業、17時半終業と定時で帰れることが多い
  • 繁忙期は1日12時間近く業務を行うこともあり、体力や精神力が必要となる
  • 繁忙期を乗り越えるためには、休日や閑散期にしっかりとリフレッシュするなど、メリハリをつけた生活をすることが大切
  • 一般的に長期休暇を取りやすい時期は8月半ば~9月半ばであるものの、自身が何月決算の被監査会社を担当するかによって長期休暇を取りやすい時期は変わる
  • 働き方改革や法改正によって、監査法人でも繁忙期の働き方が見直されているものの、人材不足が深刻な問題となっている

監査法人の繁忙期は、残業が多くとても忙しいものの、閑散期になると長期休暇も取りやすいので、メリハリをつけた働き方をしたい人にはおすすめです。

忙しい時期は、体力や精神力が必要となってくるので、自分に合ったリフレッシュ方法を見つけられると、繁忙期も上手く乗り越えられるでしょう。

また、働き方改革や法改正によって、繁忙期の働き方も見直されているので、今後は繁忙期でも働きやすい環境に変わっていくかもしれません。