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新卒で中小監査法人を選ぶメリットは?年収・ワークライフバランス・大手との違いまで徹底比較!

新卒で中小監査法人を選ぶメリットは?年収・ワークライフバランス・大手との違いまで徹底比較!

新卒生の就職先といえば大手監査法人が注目されがちですが、中小監査法人には大手監査法人にはないメリットがあります。

今回の記事では、新卒生にこそ知ってほしい、中小監査法人の魅力について紹介していきます。

中小監査法人とは

中小監査法人に明確な定義はありませんが、一般的に大手・準大手監査法人以外の監査法人のことを指しています。大手から独立した公認会計士が設立しているケースが多いです。

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中小監査法人は規模も様々で、従業員数百名程度のところもあれば、数名で業務を行っているところもあります。

大手との違い

中小監査法人と大手監査法人の違いについて、被監査会社・法人の従業員数・売上の3つの観点から比較してみます。

  中小監査法人 大手監査法人
被監査会社 中小企業が中心。特定の業界に強みを持つ場合がある。 大手企業中心。
従業員数 数百名以下 1,000名以上
監査証明業務収入(令和3年度) 48,553(百万円) 387,850(百万円)

 出典:金融庁「令和5年版モニタリングレポート

中小監査法人は新卒採用している?

実は、多くの中小監査法人でも新卒採用を行っています。特に近年は、会計士試験合格者の獲得競争が激化しており、新卒枠での積極的な採用活動を行っている中小監査法人も増えてきました。

中小監査法人の新卒採用は、大手監査法人ほど大量採用ではないため、1人ひとりに合わせた選考・フォローが丁寧な傾向にあります。そのため、選考を通して法人の雰囲気や風土が見えやすく、「人との相性」を重視した就職活動がしやすいというメリットがあります。

中小監査法人の求人情報は、以下のような場所で見つけることができます。

  • 各監査法人の公式Webサイト(採用情報ページ)
  • 会計士専門の就職エージェント
  • 日本公認会計士協会(JICPA)の求人情報

中小監査法人の就職先を検討している新卒生は、採用スケジュールが法人ごとに異なる点に注意が必要です。大手のように一括採用ではなく、通年で募集している法人もあるため、早めの情報収集とエントリー準備がカギとなります。

次のセクションでは、中小監査法人の中でも特に配属先や業務内容が大手とどのように違うのかを見ていきましょう。

中小監査法人の特徴:大手との違いは?

中小監査法人に就職した場合の、年収・働き方などについて、大手監査法人と比較しながら説明していきます。

年収

一般的には、法人規模の大きい大手監査法人のほうが中小監査法人よりも年収は高いと言われています。

一方、厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、公認会計士・税理士の全国平均年収は747万円です。(調査では、公認会計士と税理士が同じ職業区分となっています)

さらに同調査の賃金構造基本統計に照らすと、中小監査法人の従業員規模にあたる10~99人の平均年収は約576万円。それに対し、大手監査法人にあたる従業員規模1,000人以上の平均年収は約837万円となることがわかりました。

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これらの結果をまとめると、中小監査法人の年収は大手監査法人より低いものの、同じ従業員規模の他業種よりは約171万円ほど高い傾向にあります。

働き方

中小監査法人は少人数でチームを組み業務を行うため、若手の頃から多岐に渡る業務を経験できます。

中小監査法人はより幅広い業務を経験することで早期のキャリアアップが期待できるという特徴があります。

配属先・業務の幅の違い

中小監査法人では、配属先や業務の内容において、大手監査法人とは大きく異なる特徴があります。

まず、大手監査法人の場合、監査対象の企業が業種別・規模別に分かれており、配属部署も細分化されています。新人は、例えば「金融業監査部」や「製造業監査部」といった特定業界専門のチームに配属されるケースが一般的です。そのため、業務は比較的限定され、初年度は基礎的な作業が中心になることも。

一方で中小監査法人では、1人あたりの業務領域が広く、業種も幅広いのが特徴です。以下のようなポイントがあります。

  • 一つのチームで複数の業種・規模の会社を担当する
  • 監査業務だけでなく、税務やコンサルティングも担当することがある
  • 少人数体制のため、早い段階から全体像を掴む力が身につく

このように、中小監査法人では業務の多様さ・配属の柔軟さが魅力です。新卒から様々な経験を積みたい方にとっては、成長スピードを加速させる環境と言えるでしょう。

新卒が中小監査法人を選ぶメリット

ほかにも、新卒生だからこそ就職先に中小監査法人を選ぶメリットがあります。

若手でも仕事の幅が広い

中小監査法人は少人数で業務を行うことが多いため、1人が担当する勘定科目の種類が大手監査法人よりもより幅広いものとなります。
大変なこともあるかも知れませんが、若手のうちに多くの勘定科目を経験できるというのは中小監査法人のメリットです。

従業員全員と顔見知りになれる

中小監査法人では従業員が100名以下のところも多く、全員と挨拶ができる、一緒に業務ができるなどのメリットもあります。

社内風土やコミュニケーションのしやすさを重視して就職先を選びたいなら、大手監査法人よりも中小監査法人のほうがおすすめです。

柔軟な働き方や副業可能な法人も存在

中小監査法人の中には、柔軟な働き方や副業を認めている法人もあります。これは、大手監査法人に比べて組織がコンパクトで意思決定が早いため、各人のライフスタイルや価値観に合わせた制度が導入しやすいという背景があります。

以下のような働き方が、実際に一部の中小監査法人で採用されています。

  • フレックスタイム制リモートワークの導入
  • 週4勤務や短時間勤務の制度
  • 副業申請が通りやすい(教育系・IT系・コンサル等)

副業を通して得た知見を業務に活かすことができたり、自身のキャリアを多角的に育てたりといったメリットもあるため、「一つの法人で働く」だけに留まらない選択肢が広がります。ただし、副業の可否や柔軟勤務の範囲は法人ごとに大きく異なります。入社前の説明会や面談での確認が非常に重要です。

このように、柔軟な働き方が可能な環境は、ワークライフバランスを重視する新卒生にとっても大きな魅力といえるでしょう。

中小監査法人のデメリット

ここでは、中小監査法人のデメリットをお伝えしていきます。

メリットだけではなくデメリットまで理解して、自分にあった就職先を選んでください。

海外勤務の経験がしづらい

中小監査法人はグローバルネットワークファームと提携していない監査法人があり、海外勤務を経験できるチャンスが限られてしまう可能性があります。

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語学堪能で海外勤務をしたい場合には、中小監査法人では希望通りのキャリア形成が難しいかも知れません。

人間関係の悩みに左右されやすい

中小監査法人では、従業員同士の距離がより親密なものとなります。

メリットもある一方で、人間関係がこじれてしまうと業務のしやすさに直結する問題になってしまうこともあるのです。

教育制度・研修体制の差に注意

中小監査法人を選ぶ上で注意したいのが、教育制度や研修体制の整備状況です。大手監査法人では、毎年多くの新卒が入社するため、体系的な研修プログラムやOJT体制が整っています。

一方、中小監査法人では以下のような点が懸念されることもあります。

  • 新卒採用が少人数のため、研修が個別対応となるケースが多い
  • 先輩社員の手厚い指導が期待できる反面、体系化されていないことも
  • 忙しい時期は教育より実務優先になる場合もある

そのため、新卒で入社する場合は「誰に教えてもらえるか」「どんな研修があるか」を事前に確認し、教育環境の質をしっかり見極める必要があります。中には、新人向けの研修資料や、実務のシミュレーション制度を独自に設けている中小監査法人もあります。採用面接時に具体的な内容を質問しておくと安心です。

次のセクションでは、こうした違いを踏まえたうえで、自分に合った中小監査法人をどう選ぶべきかを解説します。

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仕事に人間関係を極力持ち込みたくない場合、中小監査法人の特徴である人との距離の近さがデメリットに感じることもあるでしょう。

新卒生におすすめな中小監査法人の選び方ポイント

中小監査法人といっても、以下のように様々な就職先があります。

  • アーク有限責任監査法人
  • ひびき監査法人
  • 監査法人A&Aパートナーズ
  • RSM清和監査法人
  • 監査法人アヴァンティア
  • 八重洲監査法人
  • 清陽監査法人
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ここからは、これらの中小監査法人の中から自分に合う就職先を選ぶ方法をご紹介します。

相性の良さそうな人たちと働けるか

就職活動を通して、各監査法人のリクルーターと対面する機会があると思います。

その際、「ここで仕事をしたら円滑なコミュニケーションが取れそうか」や「困った時に相談しやすい雰囲気になっているか」など、自分との相性を考えてみましょう。

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中小監査法人は大手監査法人よりも従業員同士の関わりがより密になりますから、社内風土が働きやすさにより強く影響を与えることになります。

キャリア形成を思い描けるか

中小監査法人では、早期に昇進・昇格している人がいます。

具体的には、以下のように役職がわかれており下へいくほど責任あるポジションとなります。

  • スタッフ
  • シニアスタッフ
  • マネージャー
  • シニアマネージャー(※中小監査法人にはない場合もあります)
  • パートナー
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各監査法人ごとに、どんな基準が昇進・昇格につながるのか、おおよそ何年目から昇進しているかを知ることができれば、新卒からより現実的なキャリア形成を思い描くことができます。

まとめ:就職後に積める経験や働き方なども考え総合的な判断を

今回の記事では、新卒が中小監査法人を選ぶメリットについて解説しました。

記事の内容をまとめてご紹介します。

  • 中小監査法人には、大手監査法人にはない特徴やメリットがある
  • 被監査会社は、中小企業が中心であり、特定の業界に特化している場合もある
  • 年収は、同じ従業員規模の他業種よりは高め
  • 新卒が中小監査法人を選ぶメリットは、業務の幅広さと人間関係の親密さ
  • 中小監査法人から就職先を選ぶなら、社内風土や仕事内容を事前にリサーチ

年収や規模感だけにとどまらず、長く務めることを想定して「どんな経験が積めるか」や「働きやすい環境か」なども考えながら、就職先として自分に合った中小監査法人を選びましょう。