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準大手監査法人の特徴と魅力|公認会計士としての成長を考える

準大手監査法人の特徴と魅力|公認会計士としての成長を考える

公認会計士試験の論文式に合格した多くの方が監査法人に就職します。令和5年3月末時点で、2,382の監査事務所が存在していますが、その業務内容や業態は多様であるため、自分に合った監査事務所はどこなのか迷ってしまう就活生も多いかと思います。

監査事務所は大きく以下の3つに分類されます。

  • 大手監査法人
  • 準大手監査法人
  • 中小規模監査事務所

本記事では、就職を考える方に向けて、準大手監査法人に焦点を当てて詳しく解説していきます。情報収集としてお役立ちできれば嬉しいです。

監査事務所の分類

冒頭でも説明しましたが、令和5年3月末において 2,382 の監査事務所、すなわち、監査証明業務を行う公認会計士事務所が存在していますが、その業務内容や態様は多様です。

監査事務所には、監査法人、共同事務所及び個人事務所があります。監査法人とは、監査証明業務を組織的に行うことを目的として、法に基づき設立される法人をいいます。昭和 41 年に監査法人制度が創設された当時、企業規模の拡大や経営の多角化に伴い、監査証明業務が増大・複雑化し、加えて、特に当時は多くの不正会計事件が発生していたため、公認会計士監査の存在意義が問われている状況にありました。そこで、監査品質の向上を図るため、監査法人制度を導入し組織的監査を推進することになったためです。

審査会では、監査事務所をその規模に基づき、大手監査法人、準大手監査法人及び中小規模監査事務所の3つに分類しています。それらを規模及び監査業務で整理すると以下のように分類されます。この分類において、審査会のモニタリングの対象となるのは、主に、金商法監査のうち上場国内会社の監査を行う監査事務所です。

監査事務所事務所数法定監査任意監査
金商法監査(注4)会社法監査その他
大手監査法人4
準大手監査法人5(注2)
中小規模監査事務所2,373◯(注5)
 中小監査法人(271)
 共同事務所(注1)(51)
 個人事務所(注1)(2,051)

(注1)協会に提出された、監査概要書(写)及び監査実施報告書に記載されている令和4年度(決算日:令和4年4月1日~令和5年3月31日)の監査事務所数
(注2)令和5年12月1日付で準大手監査法人のPwC京都監査法人が大手監査法人のPwCあらた有限責任監査法人と合併しているが、上記は合併前の事務所数となる。
(注3)上図表では、表中の「○」は当該業務が実施できることを示す。
(注4)上場国内会社を監査するには登録上場会社等監査人として登録が必要である。
(注5)個人事務所が上場会社の監査証明を行う場合には、法及び各取引所の有価証券上場規程により、他の公認会計士等と共同で行う必要がある。

引用:令和6年版 モニタリングレポート(公認会計士・監査審査会)

準大手監査法人とは

まずは、準大手監査法人とは何かを理解するために、前段でお伝えした分類別での用語の定義を確認してみましょう。

監査事務所の用語の定義

大手監査法人

上場国内会社を概ね100 社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査実施者が1,000 名以上いる監査法人。有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、EY 新日本有限責任監査法人及びPwC Japan 有限責任監査法人の4法人を指します。

準大手監査法人

大手監査法人に準ずる規模の監査法人。三優監査法人、仰星監査法人、太陽有限責任監査法人及び東陽監査法人の4法人を指します。

中小規模監査事務所

大手監査法人及び準大手監査法人以外の監査事務所。

中小監査法人

大手監査法人及び準大手監査法人以外の監査法人

準大手監査法人の特徴とは?

準大手監査法人は、大手や中小の監査法人とは異なる独自のポジションを持っています。その特徴は、大手と中小の良いところを併せ持ち、幅広い業務と業種に対応できる柔軟性にあります。

大手とは異なる準大手監査法人のポジショニング

準大手監査法人は、大手ほどの規模や知名度はありませんが、監査業務の品質や対応力においては高い評価を受けています。大手監査法人が上場企業や大規模なクライアントを中心にサービスを提供するのに対し、準大手監査法人は中堅企業や成長段階にある企業にも積極的に関わります。これにより、幅広い業界やビジネスモデルをカバーできる点が、準大手の強みです。

また、準大手監査法人は、大手ほどの組織的な縦割り構造がないため、よりフラットで柔軟な組織運営が可能です。これにより、社員一人ひとりが多様な業務に関わるチャンスが増え、専門知識を深めながら、幅広い経験を積むことができます。

準大手監査法人が提供する監査品質の高さ

準大手監査法人は、規模こそ大手に劣るものの、監査の品質においては国際水準に匹敵するものを提供しています。多くの準大手監査法人は、グローバルなネットワークに属しており、そのネットワークを通じて国際的な監査基準に基づくメソドロジーやツールを使用しています。これにより、準大手監査法人は、国内外のクライアントに対して高品質な監査サービスを提供できるのです。

さらに、準大手監査法人では、特定の業種や業務に特化したチームを設けることで、クライアントのニーズに応じた柔軟な対応が可能です。こうした体制は、大手監査法人にはない個別対応の柔軟さを生み出し、クライアントとの信頼関係を築く上でも大きな強みとなっています。

多様な業務と業種に対応できる柔軟性

準大手監査法人のもう一つの大きな特徴は、その柔軟性です。大手監査法人のように、特定の業務や業種に特化してしまうことが少ないため、幅広い業務経験を積むことができます。これは特に、独立を目指す公認会計士にとって大きなメリットとなります。準大手監査法人では、IPO業務や国際監査、ベンチャー企業の支援など、様々な業務に関わる機会が多く、これにより多面的なスキルを身につけることができます。

また、幅広いクライアント層に対してサービスを提供するため、業界特有の知識や経験を積むことができるのも魅力です。

この柔軟性こそが、準大手監査法人が公認会計士にとって成長の場であり続ける理由の一つです。

準大手監査法人は、大手とは異なる独自の強みを持ち、幅広い業務と高品質な監査サービスを提供することで、クライアントと公認会計士双方にとって魅力的な選択肢となっています。

準大手監査法人で働くメリット

準大手監査法人での勤務は、公認会計士として多様な成長機会を提供し、バランスの取れた働き方が可能です。その環境とサポート体制は、大手や中小とは一線を画するものがあります。

公認会計士としての成長機会の広さ

準大手監査法人は、多様なクライアント層と業務を通じて、公認会計士としてのスキルを幅広く磨ける環境が整っています。準大手では、業務の範囲が広いため、監査に限らず、IPO支援や内部統制の整備、税務相談、コンサルティングなど、多岐にわたる経験を積むことができます。特に、IPO業務は、企業の成長に直接寄与する重要な業務であり、この経験を積むことで、公認会計士としての専門性が高まり、今後のキャリアに大きなプラスとなります。

準大手監査法人では、こうした多様な業務を通じて、会計士としての成長を実感できる機会が豊富に提供されています。

国際業務に対応できる環境とサポート体制

準大手監査法人の多くは、国際的なネットワークに属しており、国際業務にも対応できる環境が整っています。これにより、国内業務だけでなく、海外子会社の監査や国際基準に基づく業務にも関わることができるため、公認会計士としてのキャリアの幅を広げることが可能です。さらに、準大手監査法人は、国際業務に携わる社員を支援するためのサポート体制も充実しています。例えば、海外研修や語学研修など、国際業務に必要なスキルを習得できる機会が提供されており、これにより、より高度な業務に挑戦できる土壌が整っています。

このような国際的な業務経験は、将来、グローバルな舞台で活躍する公認会計士としてのキャリア形成に大いに役立つでしょう。

仕事とプライベートのバランスを取りやすい働き方

準大手監査法人で働くもう一つの大きなメリットは、仕事とプライベートのバランスが取りやすい点です。大手監査法人に比べて、組織の規模が適度であるため、業務の進行管理がしやすく、過度な残業や業務負荷を避けることができます。

また、柔軟な働き方を支援する制度も充実しており、リモートワークやフレックス勤務など、個々のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。これにより、仕事のパフォーマンスを高めつつ、プライベートな時間も充実させることができ、ワークライフバランスを重視する公認会計士にとっては理想的な環境が整っています。

さらに、社員同士の距離感が近く、アットホームな職場環境が整っているため、ストレスを感じることなく業務に取り組むことができます。

準大手監査法人での勤務は、幅広い業務経験を積み、国際的な視野を広げながら、バランスの取れた働き方を実現できる貴重な機会を提供してくれます。これらのメリットを最大限に活用し、公認会計士としてのキャリアを一層充実させましょう。

準大手監査法人を覗いてみよう!

金融庁の「公認会計士・監査審査会」より公表されている「令和6年版 モニタリングレポート」で、準大手監査法人として指定されている法人は以下の4つです。

  • 三優監査法人
  • 仰星監査法人
  • 太陽有限責任監査法人
  • 東陽監査法人

ここでは、簡単な会社概要と経営する上で大切にしていることを見ていきましょう。

各法人の詳しい情報を見たい方は、それぞれの採用サイトをチェックしてみてください。

三優監査法人

法人概要

設立1986年10月
年間売上高(千円)4,409,128(前期比 117.6%)
被監査会社数218社
公認会計士数35名
事務所数5

経営理念/VISION等

VISION -ありたい姿-

成長を続け、信頼を築く監査法人。

私たち、三優監査法人は、一人一人が弛まぬ努力を続けることで、組織の持続的な成長を実現し、会社・資本市場・法人構成員からの信頼を常に追求します。

CORE VALUE -私たちの提供価値-

公正かつ情熱のある監査

会社・資本市場・法人構成員から真に信頼される監査とは、「どのような局面にあっても、常に公正な視点と情熱を持って、物事の本質をみる監査を全うすること」だと、私たちは考えます。

VALUE -大切にする価値観-

Communication -対話-
Cooperation -協働-
Challenge -挑戦-

[ 対話 ]を通して互いを尊重し、仲間とともに[ 協働 ]し、常に前を向いて[ 挑戦 ]していく。

NAMAGEMENT PHILOSOPHY -経営理念-

私たちは、独立性を維持し、卓越した会計・監査その他の専門的サービスの提供を通じて、公正な経済社会の実現と健全な発展に貢献することを使命とします。

私たちは、多様性を尊重するとともに常に品位を保持し、自己啓発、自己実現できる組織を目指します。

引用:https://www.bdo.or.jp/ja-jp/home

仰星監査法人

法人概要

設立1990年9月
年間売上高(千円)4,535,608(前期比 109.5%)
被監査会社数281社
公認会計士数55名
事務所数4

Vision、Mission、Our Action

Vision

我々仰星グループは、監査・会計・税務に関連するプロフェッショナル集団として独自の組織文化とアカウンティング・ファームを形成し、高品質なサービス提供を通じて、日本経済や地域社会の発展に貢献します。

Mission

我々仰星グループは、次のような使命を持っています。

  • 公正と誠実を貫く
  • 最大ではなく、最強を目指す
  • 高度な人格と専門的能力・実務経験を備えたProfessionalを育成する
  • 常に高品質なサービスを提供する

Our Action

我々仰星グループの構成員は、Vision及びMissionを実行するために、次のように行動します。

  • 「独立不羈」の精神を堅持し、コンプライアンスを実践する
  • 絶えず組織内外からの「信頼」を得る
  • Positiveな考え方に裏付けられた「情熱」を保持する
  • 常に「人間性の向上」に努め、魅力ある人間となる
  • 社会やクライアントへの「貢献意欲」を保持する
  • 幅広い知識と能力の研鑽に励み、「高度な品質」を維持する
  • 開放的で自由闊達な「コミュニケーション風土」を維持する
  • 「後進の育成」に注力し、仰星DNAの維持向上を図る

Corporate Slogan

Be professional for…!

大切にしたいもののために、プロとしての自覚をもち、努力を継続しよう!

引用:https://www.gyosei-grp.or.jp/

太陽有限責任監査法人

法人概要

設立1971年9月
年間売上高(千円)16,830,986(前期比 118.3%)
被監査会社数1,120社
公認会計士数89名
事務所数9

特色 | 価値観

「監査」を通じて日本経済の発展に貢献する。世界の中で、私たちの価値観を活かす。

  • 経験の中で蓄積されたナレッジ
  • 組織的対応から生み出されるクオリティ
  • グローバル人材を育てる環境
  • 信頼を育むコミュニケーション
  • 自律した会計プロフェッショナル
  • 総合力を兼ね備えたアカウンティング・ファーム

文化と価値観

私たちは、監査品質の持続的な向上を確かな方向性として位置付けるため、以下の「3つの価値観」を大切にしています。

  • 公共財の提供者であること
  • 監査の結果に責任をもつこと
  • 社会性・国際性を発揮すること

引用:https://www.grantthornton.jp/aboutus/audit/

東陽監査法人

法人概要

設立1971年1月
年間売上高(千円)4,800,957(前期比 103.2%)
被監査会社数241社
公認会計士数67名
事務所数3

経営理念 -Philosophy-

監査法人の社会的使命と存在意義

財務情報の信頼性を確保するという社会的使命を全うし、組織としての持続的な成長と価値の向上に努める

Core Purpose

  • 財務情報の信頼性を確保し、社会的使命を遂行することを通じて、市場の公正性・透明性を確保するとともに、投資家・債権者を保護する
  • 被監査会社等とのコミュニケーションを大切にし、ケアを怠らないことで、円滑なコミュニケーションを実現し、相互の価値観の共有を醸成する
  • 監査法人の唯一無二の財産である人財を、単なる会計・監査の知識だけでなく、情熱に溢れる人財に育て、社会的使命を果たすことによって広く社会に貢献する

Core Values

Care

被監査会社等・構成員とのコミュニケーションを常にケアし、高い品質を確保する

Share

被監査会社等・構成員と常に高い価値観を共有し、高い品質を確保する

Invest

被監査会社等・構成員に常にアップデートした情報を提供できるよう自己投資を行い、高い品質を確保する

Grow

被監査会社等とともに構成員も成長し、高い品質を確保する

引用:https://toyo-audit.jp/

※三優監査法人:業務及び財産の状況に関する説明書類(2023年6月期)
※仰星監査法人:業務及び財産の状況に関する説明書類(2023年6月期)
※太陽有限責任監査法人:業務及び財産の状況に関する説明書類(2023年6月期)
※東陽監査法人:業務及び財産の状況に関する説明書類(2023年6月期)

以上が準大手監査法人のご紹介となります。

ランキング別で並べて見てみたい方はこちらの記事もぜひ読んでみてください。

まとめ

この記事を読んで、準大手監査法人で働くことのメリットを十分に理解していただけましたでしょうか?準大手監査法人は、大手監査法人と中小規模監査法人の両方の良い点を併せ持ち、柔軟かつ多様な働き方ができることが特徴です。これにより、公認会計士としての成長機会が広がり、国際的な業務にも対応できる環境が整っています。さらに、ワークライフバランスを重視し、柔軟な働き方ができる点も大きな魅力です。

準大手監査法人で働くことで、多様なクライアントや業務に関わりながら、国際的な経験を積むことができます。また、働きやすい環境とサポート体制が整っているため、キャリアを長期的に見据えた成長が可能です。この記事を通じて、準大手監査法人で働くことがあなたのキャリアにとって良い選択肢であると感じていただけたのではないでしょうか。

ぜひ、この記事を参考に、自分に最適な監査法人を見つけ、理想のキャリアを実現してください。準大手監査法人での勤務が、あなたの公認会計士としての未来を一層充実させる第一歩となることを願っています。